ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

"The Door" 雑感 (2)

この週末も仕事ざんまいだった。土曜日は夕方まで職場で残業、きのうは〈自宅残業〉。まったくもって宮仕えの男はつらいよだが、すでに年金生活を始めている友人や知人もいるのでゼイタクは言えない。 さて、Magda Szabo の "The Door" だが、ようやく内容を…

"The Door" 雑感(1)

きょうは寒かった。ぼくの住んでいるところは、タクシーの運ちゃんによると「……のチベット」と呼ばれる高台にあり、朝から降りはじめた雪が何センチか積もった。それが坂下では積もらなかったという話だから、さすがチベットだと実感。 読書のほうもお寒いか…

Andrew Michael Hurley の “The Loney” (2)

この週末、法事で福井に出かけた。集まった遺族を見わたしたところ、次にお呼びがかかりそうなのは、なんとこのぼく。実際そうなったとき、みんな、こんな顔をしているんだろうな、と思わず感慨にふけってしまった。 さて、この "The Loney" だが、本ブログ…

Andrew Michael Hurley の “The Loney” (1)

きょうはまず全米図書賞の話題から。受賞作の "The Underground Railroad" はガーディアン紙で本命扱いされていたし、The Mookse and the Gripes のディスカッションでも一番人気。というわけで実際、フタをあけると大方の予想どおりだった。 が、ぼくはレビ…

2016年全米図書賞発表(2016 National Book Award Winner, Fiction)

つい先ほど(アメリカ東部時間11月16日)、今年の全米図書賞の受賞作が発表された。小説部門で栄冠に輝いたのは、大方の予想どおり Colson Whitehead の "The Underground Railroad"。米アマゾンやパブリシャーズ・ウィーク誌などでも、今年のベストテン小説…

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(5)

本書がらみの与太話をもうひとつだけ。今回、いつにもまして駄文を綴っているわけは、レビューでバラした以上にネタを割りたくないからだ! いや、割れないからだ! それほどまでに本書は、巧妙かつ繊細な作りになっている。大げさに言えば、全編これ布石だ…

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(4)

本題に入るのがすっかり遅れてしまった。宮仕えの男はつらいよ、というやつで、このところ思うように本を読んだり、駄文を綴ったりする時間がなかなか取れない。 そこで今までの記事をふりかえってみた。ゴンクール賞?ノーベル賞?何をいまさら周回遅れの記…

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(3)

Modiano がゴンクール賞作家と知って気になり、同賞の過去の受賞作を調べてみた。するとなんと、1903年から始まる長い歴史の中でぼくが英訳で読んだことがあるのは、Margurite Duras の "The Lover" (1984) と、Andrei Makine の "Dreams of Russian Summers…

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(2)

先月の中ごろ、ガーディアン紙の連載記事 'Tips, links and suggestions: what are you reading this week?' をながめていたら、背表紙の写真だけだったが、なんとなく気になる本が載っていた。"Paris Nocturne"。蠱惑的なタイトルである。 さっそくネットで…

Patrick Modiano の “Paris Nocturne”(1)

2014年にノーベル文学賞を受賞したフランスの作家、Patrick Modiano の "Paris Nocturne" (2003) を読了。さっそくレビューを書いておこう。Paris Nocturne: A Novel (The Margellos World Republic of Letters)作者:Modiano, PatrickYale University PressA…

Colson Whitehead の “The Underground Railroad” (3)

本書における現実描写でぼくがいちばん疑問に思うのは、人間の描き方である。簡単に言うと、ここには善玉と悪玉しかいない。善人でも悪人でもない、善人であると同時に悪人でもある、そういう人間がまったく存在しないのだ。 具体的には、まず奴隷の中に善人…

Colson Whitehead の “The Underground Railroad” (2)

小川洋子の『海』もなんとか読みおえたが、読了後、あれ、「海」なんて短編あったっけ、と目次を見返したら第1話だった。もう一度ぱらぱら読んでいるうちに内容を思い出した。そうか、この話だったか。 ぼくの記憶力はそんな程度なので、いちおう分析的に本…

Colson Whitehead の “The Underground Railroad” (1)

今年の全米図書賞最終候補作、Colson Whitehead の "The Underground Railroad" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Underground Railroad: Winner of the Pulitzer Prize for Fiction 2017作者:Whitehead, ColsonFleetAmazon[☆☆☆★★] アメリカの奴…

"The Underground Railroad" 雑感

寝床の中で小川洋子の『海』、電車とバスの中では Colson Whitehead の "The Underground Railroad" を読んでいる。どちらもなかなか進まない。 就眠儀式として読む本は、どんな名作でも10分間が限度。おかげで『博士の愛した数式』など3回も挫折。いまだに…