ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

全米図書賞

Tess Gunty の “The Rabbit Hutch”(2)

少しのことにも、先達はあらまほしき事なり。今年の全米図書賞の発表前、ひさしぶりに最終候補作をあらかじめ読んでおこうと、The Mookse and the Gripes の関連スレッドをながめていたら、表題作を高く買っているコメントが目にとまった。当たるも八卦当た…

2022年全米図書賞発表

本日、全米図書賞の発表があり、小説部門で Tess Gunty の "The Rabbit Hutch"(2022)が栄冠に輝いた。あちらのファンの情報をもとに、たった1冊だけ読んでいた最終候補作が受賞とあって、なんだか、ひとのフンドシで相撲を取ったような気分だけど、とりあ…

Tess Gunty の “The Rabbit Hutch”(1)

今年の全米図書賞最終候補作、Tess Gunty の "The Rabbit Hutch"(2022)を読了。Tess Gunty はロス在住の新人女流作家で、デビュー作の本書は今年創設された Waterstones Debut Fiction Prize を受賞。さっそくレビューを書いておこう。 [☆☆☆★★] インディア…

Laird Hunt の “Zorrie”(2)

きのうは思いのほか時間が取れ、Sarah Waters の "Affinity"(1999)を100ページほど進むことができた。おかげで4部構成の第3部まで到達(後記:この記事を書いた翌日、5部構成と判明)。やっと目鼻がついてきた。 この邦訳はいま調べると、2003年と2004…

Laird Hunt の “Zorrie”(1)

きのう、今年の全米図書賞最終候補作、Laird Hunt の "Zorrie" を読了。発表(ニューヨーク時間17日)直前の下馬評では1番人気の作品である。さっそくレビューを書いておこう。 Zorrie 作者:Hunt, Laird Bloomsbury Publishing Amazon [☆☆☆★★] この世には、…

Richard Powers の “Bewilderment”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Richard Powers の "Bewilderment"(2021)を読了。これは今年の全米図書賞一次候補作でもあったが、そちらは二次で落選。さっそくレビューを書いておこう。 Bewilderment: A Novel 作者:Powers, Richard Norton & Company Amaz…

Lydia Millet の “A Children's Bible”(1)

Lydia Millet の "A Children's Bible"(2020)を読了。周知のとおり昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙選年間ベスト5小説のひとつでもある。また P Prize. com の予想では、今年のピューリツァー賞「候補作」第3位にランクイン。さ…

Marilynne Robinson の “Lila”(2)

これは2014年の全米批評家協会賞受賞作で、全米図書賞最終候補作およびブッカー賞一次候補作。そのころたいへん話題になっていたことは、あとで知った。ぼくは同年春から翌年の秋まで本ブログを休止。いまもそうだが、文学を通じて人間の本質がどうのこうの…

Marilynne Robinson の “Lila”(1)とギリアド四部作

相変わらず体調がパッとせず、今回もずいぶん予定より遅れてしまったが、なんとか Marilynne Robinson の "Lila"(2014)を読了。"Gilead"(2004)に始まり、おそらく "Jack"(2020)で最後と思われるギリアド四部作の第三作である。刊行年に全米批評家協会…

Jonathan Franzen の “The Corrections”(2)

ついに風邪をひいてしまった! たぶんコロナではなく(そう思いたい)、どうも孫からもらったものらしい。孫のほうはもうケロっとしているのだけど、ぼくはまだ頭が痛い。血圧のせいかもしれない。 おかげで、"Middlesex" は足踏み状態。しかも振り返ってみ…

Jonathan Franzen の “The Corrections”(1)

2001年の全米図書賞受賞作、Jonathan Franzen の "The Corrections" を読了。本書はまた2002年のピューリツァー賞最終候補作でもある。さっそくレビューを書いておこう。 The Corrections (English Edition) 作者:Franzen, Jonathan 発売日: 2010/09/21 メデ…

Charles Yu の “Interior Chinatown”(2)

きょうは仕事始め、ならぬ読書始め。ほんとうはぜひ、若いころ途中まで読んだ George Orwell の "Homage to Catalonia" を、と思っていたのだけど、年末にちょっとかじった Joseph Boyden の "The Orenda"(2013)が気になり、ボチボチまた読みはじめたとこ…

Charles Yu の “Interior Chinatown”(1)

きのう今年の全米図書賞受賞作、Charles Yu の "Interior Chinatown"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Interior Chinatown: WINNER OF THE NATIONAL BOOK AWARDS 2020 作者:Yu, Charles 発売日: 2020/11/05 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★…

Susan Choi の “Trust Exercise”(2)

きのう鶴岡八幡宮へ、2番目の孫ユマちゃんの初宮参り。10年ほど前に倒れた有名な大銀杏の隣りに植えられた若木の葉がみごとに色づいていた。 このところ寝床のなかで読んでいる『キラキラ共和国』にもあるとおり、「週末の鎌倉では身動きが取れない」のがふ…

Susan Choi の “Trust Exercise”(1)

イギリスに発注した "Real Life" が手元に届くまで、場つなぎに Susan Choi の "Trust Exercise" を読んでいた。その後しばらく中断していたがボチボチまた読みはじめ、数日前にやっと読了。ご存じ2019年の全米図書賞受賞作である。なかなかレビューを書く気…

Douglas Stuart の “Shuggie Bain”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞ならびに全米図書賞の最終候補作、Douglas Stuart の "Shuggie Bain"(2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Shuggie Bain: A Novel 作者:Stuart, Douglas 発売日: 2020/12/15 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★★★] 裏切ら…

Adam Johnson の “Fortune Smiles”(2)

数日前、David Constantine の "Tea at the Midland and Other Stories"(2012)を読んでいたら、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)がやっと届いた。さっそく乗り換えようと思ったが、"Tea at the Midland ... " が…

Adam Johnson の “Fortune Smiles”(1)

ゆうべ、Adam Johnson の "Fortune Smiles" を読了。2015年の全米図書賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 Fortune Smiles: Stories 作者:Johnson, Adam 発売日: 2016/11/17 メディア: ペーパーバック [☆☆☆★★] 全六話の短編集で、評価は平均点…

"Burnt Sugar" と "Fortune Smiles" 雑感

きのう Adam Johnson の "Fortune Smiles"(2015)を読んでいたら、今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、Avni Doshi の "Burnt Sugar"(2019) がやっと届いた。さっそく乗り換えて読みはじめると、なかなか面白い。I would be lying if I said my mother's…

Peter Matthiessen の “Shadow Country”(2)

先日ご存じのとおり、今年のブッカー賞ロングリストが発表された。例によって現地ファンは、各自の予想やお気にいりの作品などをめぐって大いに盛り上がっている。これほどファンが熱くなる文学賞も、世界広しといえどもほかにはまずないだろう。 が、全13冊…

Peter Matthiessen の “Shadow Country”(1)

2008年の全米図書賞受賞作、Peter Matthiessen の "Shadow Country" をやっと読了。The Watson Trilogy の合冊リメイク版で、合冊前の旧題は、第1部 "Killing Mister Watson"(1990)、第2部 "Last Man's River"(1997)、第3部 "Bone by Bone"(1999)。…

"Shadow Country" 雑感(2)

ブッカー賞ロングリストの発表が迫ってきた(ロンドン時間28日)。例によって現地ファンのヒートアップぶりは相当なものだが、ぼくは今年は1冊しか〈ロングリスト候補作〉を読んだことがないので("The Mirror & the Light" ☆☆☆★★)、個人的にはまったく盛…

"Shadow Country" 雑感

けさ弟からの電話で知ったのだが、ぼくのふるさと愛媛県宇和島市でも初めて新型コロナウィルス感染者が出たらしい。京都から帰ってきた大学生という話だが、なにしろ商店街でも昼間からシャッターを下ろしている店が目だつ、元からみんな外出自粛しているよ…

William Faulkner の “A Fable”(1)

ゆうべ、William Faulkner の "A Fable"(1954)を読了。1955年のピューリツァー賞および全米図書賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 A Fable (Vintage International) (English Edition) 作者:Faulkner, William 発売日: 2011/05/18 メディ…

Don Delillo の “Underworld”(3)

世間はきのうで仕事納めという人も多いだろう。ぼくもいちおう休暇中なのだけど、自分で企画した仕事をかかえている。このところ午前中にノルマをこなし、それから家の大掃除という毎日だ。おかげで、Loius-Ferdinand Céline の "Journey to the End of the …

Don Delillo の “Underworld”(2)

仕事が一段落ついたので、先週末、愛媛の田舎に帰省していた。ぼくのふるさと宇和島市にある中町(なかのちょう)教会の前を通りかかると、たまたまクリスマスを祝う会のまっ最中。教会付属の鶴城(かくじょう)幼稚園の園児たちの歌声が聞こえてきた。 もう…

Don Delillo の “Underworld”(1)

きのうの記事を書いたあと、多忙につき遅れに遅れていた Don Delillo の "Underworld" をやっと読了。1997年の全米図書賞、および全米批評家協会賞の最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 Underworld 作者:Don DeLillo 出版社/メーカー: Scri…

Kali Fajardo-Anstine の “Sabrina & Corina”(2)

その昔、「短編小説は閃光の人生」という秀逸なキャッチコピーがあった、と本書のレビューに書いたけれど、それは懐かしい〈フィーリング小説集〉のコピー。同シリーズの代表作はたぶん『ゲイルズバーグの春を愛す』だろう。いまでも単行本は現役なのかな。 …

Julia Phillips の “Disappearing Earth”(2)

いつ読みはじめたのかも憶えていない Don Delillo の "Underworld"(1997)は、やっと中盤を過ぎたところ。Eisenstein 監督作品 "Unterwelt" が話題になり(p.424)、そのテーマがどうやら the contradictions of being .... the mutilated yearning, the in…

Kali Fajardo-Anstine の “Sabrina & Corina”(1)

きのう今年の全米図書賞最終候補作、Kali Fajardo-Anstine の "Sabrina & Corina"(2019)を読了。Fajardo-Anstine はデンヴァー在住の新人作家で、本書は彼女の第一短編集である。さっそくレビューを書いておこう。 SABRINA & CORINA 作者:KALI FAJARDO-ANS…