ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

Ayana Mathis の “The Twelve Tribes of Hattie” (2)

雑感にも書いたとおり、たまたま先週、Liza Klaussmann の "Tigers in Red Weather" を読んだばかりだったので、本書の展開はだいたい予想がついた。途中まで「独立性の強いエピソードがつづいていると思われる」けれど、「これまた結局、やっぱり長編という…

2012年コスタ賞発表 / Ayana Mathis の “The Twelve Ttibes of Hattie” (1)

2012年のコスタ賞最優秀作品賞は、Hilary Mantel の "Bring up the Bodies" に決定。'So it's Hilary Mantel, again.' と、あちらの読者がコメントを寄せていた。ブッカー賞とあわせてめでたく二冠達成だが、カナダのブロガー Kevin など釈然としない思いだ…

2013年アレックス賞発表 (2013 Alex Awards)

シアトル時間で28日、ヤング・アダルト向けの作品を対象とするアレックス賞が発表された。ぼくが読んでもいいなと思った3冊と、去年の全米図書賞に輝いた "The Round House " など既読の2冊のほかは、タイトルと作家名のみ掲載しておきます。Girlchild作者…

“The Twelve Tribes of Hattie” 雑感

Ayana Mathis の "The Twelve Tribes of Hattie" をボチボチ読んでいる。Michiko Kakutani の 10 Favorite Books of 2012 の一冊で、今月、英米アマゾンでも優秀作品に選ばれ、はたまた Oprah's Book Club では2012年の作品としてリストアップ。アメリカ版が…

Liza Klaussmann の “Tigers in Red Weather” (2)

これはもし再読したら、きっと★を一つ追加したくなるのではないか。「ゆるやかに進む序盤」のあちこちに張りめぐらされた伏線を発見し、それを読み落としていた不明を恥じると同時に、その巧みさに舌を巻くことになりそうだ。 そうとは知らず、「最初、かっ…

Liza Klaussmann の “Tigers in Red Weather” (1)

Liza Klaussmann の "Tigers in Red Weather" を読了。アマゾンUKが選んだ去年の優秀作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。Tigers in Red Weather作者:Klaussmann, LizaPicadorAmazon[☆☆☆★★] ゆるやかに進む序盤がやや退屈だが、じつはこれ…

“Tigers in Red Weather” 雑感

アマゾンUKが選んだ去年の優秀作品のひとつ、Liza Klaussmann の "Tigers in Red Weather" に取りかかった。まずタイトルが奇抜だし、黄色い水着姿の女性をえがいた表紙も大いによろしい。そしてなにより、早くもペイパーバック化されている。未知の作家の未…

Jonas Jonasson の “The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” (2)

これはもうタイトルからしておかしくて、知り合いのオーストラリア人に、こんな本があるよと教えてあげたら、表紙をひと目見たとたん、プッとふきだしてしまった。それを見て、紹介したぼくも思わずニッコリ。これはつかのま、人生が楽しく思える作品である…

Jonas Jonasson の “The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” (1)

たいへん遅まきながら、Jonas Jonasson の "The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared" を読了。いまや世界的なベストセラーで、去年のアマゾンUKの年間ベスト作品にも選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。(後記:その…

“The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” 雑感 (2)

この本を「電車やバスの中で読むときは、人に変な目で見られないよう気をつけないといけません」ときのう書いたばかりだが、ぼく自身、きょう仕事帰りに歩きながら読んでいる(ぼくの特技です)うちにクスクス笑ってしまい、通りかかったオバサンにじろっと…

“The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” 雑感 (1)

たいへん遅まきながら、いまや世界的なベストセラー、Jonas Jonasson の "The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared" をボチボチ読んでいる。ぼくが本書のことを知ったのは去年の12月、アマゾンUKの年間ベスト作品を検索したときだ…

Zadie Smith の “NW” (3)

今回、裏表紙の見返しにある紹介記事を読んで初めて知ったのだが、作者の Zadie Smith 自身、ロンドンの北西部生まれなのだそうだ。してみると、本書の舞台は彼女にとってまさに勝手知ったるテリトリー。そこで起きる事件も大なり小なり、実際にあった出来事…

Zadie Smith の “NW” (2)

Zadie Smith を読むのは本書で2冊目。恥ずかしながら "On Beauty" は未読だが、デビュー作の "White Teeth" なら読んだことがある。大昔の話で中身はすっかり失念してしまったが、エクセルに記録している読書メモによると、「カオスの街ロンドンの大河ドラ…

Zadie Smith の “NW” (1)

Zadie Smith の最新作 "NW" を読了。2012年の全米批評家協会賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙、ガーディアン紙、タイム誌などでも年間ベスト作品に選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。NW作者:Smith, ZadieHamish HamiltonAmazon[☆☆☆★★]…

“NW” 雑感 (2)

きのうはもっぱら語学的な観点から本書が難物だという意味のことを書いたが、かんじんのテーマも最初はなかなかつかみにくい。どんな小説でも、おおむね序盤はベールがかかっているものだが、本書の場合、物語の方向さえさっぱりわからなかった。 NWとは、ロ…

“NW” 雑感 (1) / 2012年全米批評家協会賞最終候補作 (2012 National Book Critics Circle Awards Finalists)

ほんとうは、Ian McEwan の "Sweet Tooth" についてもっと書きたかったのだが、レビューを読みかえしてみるとネタバレ気味ですな。ヒロインは女スパイだが、ふつうのスパイ小説ではないし、彼女の単純な恋物語でもなく、「愛のスパイ小説、陰謀小説」としか…

Ian McEwan の “Sweet Tooth” (2)

まず評価のことから補足しよう。読みおえた直後は、☆☆☆★★★くらいかなと思ったのだが、レビューを書いているうちに、いやいや、これほどみごとにダマされたのだから、★を一つオマケしようと考えなおし、結局、☆☆☆☆にした。(☆は20点、★は5点)。 佳作ではあ…

Ian McEwan の “Sweet Tooth” (1)

Ian McEwan の最新作、"Sweet Tooth" を読了。ガーディアン紙や米アマゾンなどが選んだ昨年のベスト作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。Sweet Tooth作者:McEwan, IanJonathan CapeAmazon[☆☆☆☆] うまい、じつにうまい。まさかこんなトリッ…

“Sweet Tooth” 雑感 (2)

どうやらスパイの話らしいという記事を見かけて入手した本書だが、これは今のところ、いわゆるスパイ小説ではない。たしかに主人公はイギリス情報部員(情報局保安部員)の女だが、地位的には下っ端で、任務もスパイ活動と言えるかどうか怪しい。主な事件も…

“Sweet Tooth” 雑感 (1)

Ian McEwan の "Sweet Tooth" をボチボチ読んでいる。ガーディアン紙や米アマゾンなどが選んだ去年のベスト作品だが、McEwan (日本では「マキューアン」と表記されているが、実際は「マッキュアン」が原音に近いらしい) を読むのは、2007年のブッカー賞候…

Bernardo Atxaga の “Seven Houses in France” (2)

いささか旧聞に属するが、帰省中にコスタ賞部門賞の発表があり、最優秀長編賞は Hilary Mantel の "Bring up the Bodies" が受賞。ブッカー賞とのダブル受賞は、コスタ賞がまだウィットブレッド賞だった当時、2003年の "Vernon God Little" 以来ではないか。…

Bernardo Atxaga の “Seven Houses in France” (1)

Bernardo Atxaga の "Seven Houses in France" を読了。パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ去年の最優秀作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。Seven Houses in France作者:Atxaga, BernardoVintage BooksAmazon[☆☆☆★★] 本書には三つの…

“Seven Houses in France” 雑感

きょうで帰省はおしまい。故郷の宇和島から松山に引き返し、飛行機に乗るまでの時間を利用して、ネットカフェでこれを打ちこんでいる。 ほんとうは坂の上の雲ミュージアムを見学したかったのだが、あいにく月曜日は休館とのこと。春に父の一回忌でまた帰省す…

Andre Maurois の “Climates” (2)

帰省3日目。きょうは友人の車で高知の大堂海岸付近まで足をのばしたが、残念ながら通行止めのため、断崖絶壁で有名な当地の景勝は見物できず、帰りに宿毛の感陽島や空手海岸、須の川などを久しぶりに見てまわった。天気がよかったので、暗い冬の海というイ…

Andre Maurois の “Climates” (1)

帰省2日目。きのう飛行機の中で読みはじめた Andre Maurois の “Climates”を読了。米アマゾンが選んだ去年12月の優秀作品だが、原書が刊行されたのは1928年で、フランス語からの新訳である。さっそくレビューを書いておこう。Climates: A Novel作者:Maurois…

Alice Munro の “Dear Life” (2)

きょうは仕事始めのところが多かったはずだが、ぼくは愛媛の宇和島という田舎町に帰省。途中、松山に寄り、前から気になっていた〈踊るうどん永木〉で醤油うどんを食べた。評判どおり、とてもおいしかった。 そのあと、ほんとうに久しぶりに子規堂を拝観。子…

Alice Munro の “Dear Life” (1)

Alice Munro の最新短編集 "Dear Life" を読了。ガーディアン紙、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アマゾン・カナダでそれぞれ去年のベスト作品に選ばれたものである。さっそくレビューを書いておこう。Dear Life: Stories作者:Munro, AliceKnopfAmazon[☆☆☆…

“Dear Life” 雑感

Alice Munro の最新短編集 "Dear Life" をボチボチ読んでいる。ガーディアン紙、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アマゾン・カナダでそれぞれ去年のベスト作品に選ばれたものだが、恥ずかしながら、この高名な作家の旧作はすべて未読。積ん読の山を切り崩す…

Tessa Hadley の “Married Love and Other Stories” (2)

「ぼくは何も言わん!」少年は生意気な口をきいた。 毎年、元日の朝におせちを食べるとき、彼の家では全員何かひとこと、新年の抱負を述べるのが習わしだった。まず父が、ついで、そのころまだ働いていた母も、それぞれ仕事にかける意気ごみを語ったあと、長…