ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2007-01-01から1年間の記事一覧

Alain-Fournier の "Le Grand Meaulnes"

世間は三連休だったと思うが、ぼくは土曜出勤の上、昨日おとといの午前中は「自宅残業」。さすがに午後からは仕事をする気になれず、いろいろな理由があってアラン=フルニエの『グラン・モーヌ』を読んでいた。The Lost Estate (Le Grand Meaulnes) (Penguin…

Trezza Azzopardi の "Remember Me"

要するに "Eve Green" の場合、主人公の娘の両親に関する謎が次第に解き明かされるのはいいのだが、回想形式なのでサスペンス味は薄いし、示された真相に深い意味があるとは言えないのが難点だ。それにひきかえ、娘の知りあいの美少女が突然失踪する事件のほ…

Susan Fletcher の "Eve Green" と Margaret Forster の "The Memory Box"

今年のコスタ賞(旧ウィットブレッド賞)のショートリストhttp://www.costabookawards.com/awards/shortlist.aspx を眺めると、旧作をもっているのは Rose Tremain のみで、しかも未読。お恥ずかしいかぎりだが、今から候補作を注文しても発表日までに届きそ…

M. J. Hyland の "Carry Me Down"

Carry Me Down作者: M. J. Hyland出版社/メーカー: Canongate Books Ltd発売日: 2007/01/23メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る[☆☆☆★★] 06年度ブッカー賞の最終候補に残った作家は新人が多かったが、ハイランドもその一人。本書は彼…

Mary Lawson の "The Other Side of the Bridge"

去年のブッカー賞のロングリストに選ばれた Mary Lawson の "The Other Side of the Bridge" を読んでみたら、しばし胃炎の痛みを忘れるほど面白かったが、ショートリストから外れた理由も何となく分かり、その意味でも興味深かった。The Other Side of the …

Silas House の "A Parchment of Leaves"

今週は通勤時だけでなく帰宅後も読書を楽しめるようになり、おかげで職場以外では快調な毎日だった。A Parchment of Leaves (Ballantine Reader's Circle)作者: Silas House出版社/メーカー: Ballantine Books発売日: 2003/08/26メディア: ペーパーバックこ…

Kent Meyers の "The Work of Wolves"

やっと勤務時間内で仕事が片づくようになり、この土日は久しぶりに本をぼちぼち読むことができた。その成果が次のレビューだ。The Work of Wolves作者: Kent Meyers出版社/メーカー: Mariner Books発売日: 2005/07/11メディア: ペーパーバックこの商品を含む…

J.L. Carr の "A Month in the Country"

5つ星の作品にこだわり、Irene Nemirovsky の "Suite Francaise" を採りあげてから、柄にもなくお堅い話が続きすぎてしまった。問題の核心にさっぱり触れない作家よりも、深刻な問題を粗雑に扱うレビュアーのほうが、よほど罪が重いかもしれない。というこ…

Thomas Mann の "Doctor Faustus"

相変わらず「自宅残業」の毎日なので、今日も昔のレビューをだしに日記を書くことにした。Doctor Faustus: The Life of the German Composer Adrian Leverkuhn as Told by a Friend (Vintage International)作者: Thomas Mann,John E. Woods出版社/メーカー:…

Chimamanda Ngozi Adichie の "Half of a Yellow Sun"

前々回からの流れで、Adichie の "Half of a Yellow Sun" に触れざるを得なくなった。以下は、オレンジ賞の発表前に書いたレビューである。Half of a Yellow Sun作者:Ngozi Adichie, ChimamandaHarper Collins Publ. UKAmazon[☆☆☆☆★] 06年度の全米批評家協会…

Joseph Conrad の "Lord Jim"

この三連休、世の読書人は最高の毎日だったろうが、ぼくは土曜出勤の上、今日の午前中まで「家庭内残業」に明け暮れた。おかげで、ただでさえボケている頭が朦朧としている。よって今日は前回の続き。Modern Classics Lord Jim (Penguin Modern Classics)作…

Geraldine Brooks の "March" と Irène Némirovsky の "Suite Française "

仕事の目途はだいぶついたのだが、相変わらず多忙で本が読めない。またまた昔のレビューを引用することになってしまった。March: A Novel作者:Brooks, GeraldinePenguin BooksAmazon[☆☆☆★★] 06年度のピューリッツァー賞受賞作。またもや南北戦争の話かと、大…

Jeffrey Lewis の "Meritocracy: A Love Story"

ぼちぼち読んでいる本はあるのだが、なにしろ多忙を極め、この土日も仕事三昧。そこで今日も昔のレビューの焼き直しだ。Meritocracy作者:Lewis, JeffreyOther PressAmazon[☆☆☆★★★] 「愛とはなにか、ぼくにはわかっていたのだろうか」。こんなセリフも出てく…

Barbara Kingsolver の "Prodigal Summer"

ただでさえ貧乏暇なしなのに、師走が近づいてくると輪をかけて忙しく、ゆっくり本を読む時間がない。そこで今日も昔のレビューでお茶を濁すことにしよう。Prodigal Summer: A Novel作者:Kingsolver, BarbaraHarper PerennialAmazon[☆☆☆☆★] 古来、西欧人にと…

Pamela Carter Joern の "The Floor of the Sky"

朝はノーマン・メイラーのことを書いていたので読了が遅れたが、今年のアレックス賞受賞作の一つ、Pamela Carter Joern の "The Floor of the Sky" を午後になって読みおえた。The Floor of the Sky (Flyover Fiction Series)作者: Pamela Carter Joern出版…

Norman Mailer の "The Castle in the Forest"

今朝の新聞を見たら、ノーマン・メイラーの訃報記事が載っていた。が、ぼくは今年の2月、最新作の "The Castle in the Forest" を「巨匠衰えたり」と題して酷評しただけに、その死を知っても別に驚かなかった。The Castle in the Forest: A Novel作者: Norm…

Herman Melville の "Billy Budd, Sailor"

Ivan Doig の "The Whistling Season" は子供の世界を普遍的に再現した少年小説の秀作だが、その感想を書いているとき、同じく少年が主人公でありながら、とてつもない傑作があることを思い出した。メルヴィルの『船乗りビリー・バッド』である。Billy Budd,…

Ivan Doig の "The Whistling Season"

この連休中も仕事に追われたが、その合間にようやく Ivan Doig の "The Whistling Season" を読みおえた。The Whistling Season作者: Ivan Doig出版社/メーカー: Mariner Books発売日: 2007/05/07メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブロ…

Ron Rash の "One Foot in Eden"

この時期、現代英米小説のファンなら全米図書賞に関心を向け、例えば今年の本命と目される Denis Johnson の "Tree of Smoke" を読むべきかもしれないが、ぼくは何しろ文学ミーハーに過ぎないので、読まず嫌いでいこうと思っている。それより、今年に限らず…

Kent Haruf の "Plainsong" と Tom Bailey の "The Grace That Keeps This World"

ブッカー賞の季節がようやく終わり、これでアメリカの小説もじっくり読めるようになった。さる10月10日には全米図書賞の最終候補作が発表され、http://www.nationalbook.org/nba2007.html どうやら Denis Johnson の "Tree of Smoke" が本命視されているよう…

ブッカー賞その後

すっかり体調を崩し、読書どころではなくなったが、ひさしぶりにアメリカのアマゾンのブログを覗いてみると、10月19日付で Anne Enright の "The Gathering" を賞賛する記事が載っていた。http://www.amazon.com/gp/blog/A287JD9GH3ZKFY/104-0479793-5168747…

Kiran Desai の "The Inheritance of Loss" と John Banville の "The Sea"

いやはや、驚いた。まさか Anne Enright の "The Gathering" がブッカー賞を取るとは!http://www.themanbookerprize.com/news/stories/1004 ぼくは今年も最終候補作をぜんぶ読んだが、その中で一番低く評価していた作品だ。それどころか、9月12日の日記に…

『戦争と平和』の新英訳、Dostoevsky の "The Adolescent" と Tolstoy の "Resurrection"

遅いニュースだが、10月16日に『戦争と平和』の新しい英訳版が日本でも発売されることになった。これは大いに期待していい。訳者がかの Richard Pevear と Larissa Volokhonsky のコンビだからだ。 War and Peace作者:Tolstoy, LeoKnopfAmazon アメリカのア…

Per Petterson の "Out Stealing Horses" と Peter Pouncey の "Rules for Old Men Waiting"

今年のブッカー賞の有力候補作、"Darkmans" の作者 Nicola Barker は経歴を見ると、2000年に "Wide Open" という作品で International IMPAC Dublin Literary Award を受賞している。それが手元にないので、代わりに今年の受賞作の "Out Stealing Horses" を…

Charles Martin の "When Crickets Cry", Justin Cronin の "The Summer Guest" と John McGahern の "By the Lake"

宮仕えの身だと、思うように本を読めないのがつらい。この連休中も結局、家で仕事ばかりしていた。というわけで、これは昔話。かなり旧聞に属するが、さる7月9日、Christian Book Award の本年度受賞作が発表され、Karen Kingsbury の "Ever After" が大賞…

Indra Sinha の "Animal's People"

Indra Sinha の "Animal's People" を読了。これで今年もブッカー賞の最終候補作をぜんぶ読んだことになる。アマゾンへの投稿はもうやめようかと思ったが、習い性でレビューを送ってしまった。(その後、削除)Animal's People作者: Indra Sinha出版社/メー…

Nicola Barker の "Darkmans"

Nicola Barker の "Darkmans" をやっと読みおえた。なにしろ800頁を超える大作で、腕力のないぼくは持ち運びに苦労したが、読んだ甲斐はまずまずあった。Darkmans作者: Nicola Barker出版社/メーカー: Fourth Estate Ltd発売日: 2007/05/01メディア: Perfect…

Mohsin Hamid の "The Reluctant Fundamentalist"

Mohsin Hamid の "The Reluctant Fundamentalist" がノヴェラ程度の長さなので読んでみた。The Reluctant Fundamentalist作者: Mohsin Hamid出版社/メーカー: Houghton Mifflin Harcourt発売日: 2007/04/02メディア: ハードカバー クリック: 1回この商品を含…

Anne Enright の "The Gathering"

ロングリストの発表時から気になっていた Anne Enright の "The Gathering" を読了したので、さっそくアマゾンにレビューを投稿した。(その後、削除)The Gathering作者: Anne Enright出版社/メーカー: Jonathan Cape Ltd発売日: 2007/05/03メディア: ハード…

ブッカー賞のショートリスト

時差の関係で今朝わかったのだが、現地時間で9月6日、ブッカー賞のショートリストが発表された。http://www.themanbookerprize.com/prize/thisyear/shortlist オッズで人気の高い Nicola Barker の "Darkmans" は、向こうのレビューを読むかぎり、当然選ば…