ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ブッカー賞

Alan Garner の “Treacle Walker”(3)

おとといレビューをアップした "Oh William!" で、今年のブッカー賞最終候補作を読んだのは4冊め。そこで暫定ランキングもつぎのように変更した。1.2. Small Things Like These(☆☆☆★★★)3. The Trees(☆☆☆★)4. 5. Treacle Walker(☆☆☆★)6. Oh William!(…

Elizabeth Strout の “Oh William!”(1)

二兎を追う者は一兎をも得ず。2冊同時に読んでいると、わかりきった話だが、どちらもふだん以上にスローペース。それでもなんとか、きのう今年のブッカー賞最終候補作、Elizabeth Strout の "Oh William!" のほうをまず読みおえた。女流作家 Lucy Barton シ…

Alan Garner の “Treacle Walker”(2)

Isabel Allende の "The House of the Spirits" をボチボチ読んでいたら、Elizabeth Strout の "Oh William!" が到着予定日よりずっと早く届いてしまった。試読したところ、どうもイマイチ。Allende のほうは相変わらずおもしろい。印象が希薄になるのがいや…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(2)

このところ、ペルーの著名な作家 Isabel Allende の "The House of the Spirits"(1982, 英訳1985)をボチボチ読んでいる。未読の今年のブッカー賞候補作を入手するまでの場つなぎに(途中で乗り換える可能性あり)、と思って取りかかった。 開幕から物語性…

Percival Everett の “The Trees”(1)

今年のブッカー賞候補作、Percival Everett の "The Trees"(2021)を読了。Everett (1956–)は1983年に "Suder" でデビュー(未読)。短編集もふくめ20冊以上の作品を発表しているヴェテラン作家で、南カリフォルニア大学の教授でもあるそうだ。さっそくレ…

Audrey Magee の “The Colony”(4)

今年のブッカー賞ショートリストの発表が迫ってきた(ロンドン時間今月6日)。現地ファンの下馬評では、相変わらず "The Colony"(☆☆☆☆)が1番人気。ロングリスト発表前からの勢いがずっとつづいている。 ほかの候補作のうち、ぼくがこれまで読んだのは、"…

Audrey Magee の “The Colony”(3)

何回か前にも書いたが、この半年、ほとんどなにを読んでもウクライナ侵攻問題が頭にちらついてくる。とりわけ最近の作品がそうで、たとえば、おとといレビューをアップした "Treacle Walker"(2021) の世界は「謎と矛盾、パラドックスに満ちたカオスそのも…

Alan Garner の “Treacle Walker”(1)

きのう Alan Garner の "Treacle Walker"(2021)を読了。Garner は周知のとおりイギリスのファンタジー・児童文学作家で、代表作は "The Weirdstone of Brisingamen"『ブリジンガメンの魔法の宝石』(1960)や、"The Owl Service"『ふくろう模様の皿』(196…

Audrey Magee の “The Colony”(2)

きょうから20日ぶりにジム通い。思ったより走れ、筋トレもいつものメニューをこなせた。 それはいいのだけど、この1週間は長旅の疲れのせいか、ふだん以上にぐうたら生活。身体だけでなく、頭のほうもそろそろ動かさないと。 そのぼんやりした頭で読んでい…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(1)

きのう "Season of Migration to the North" のレビューをアップしたあと、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)を寝床のなかで読んでいたら、三軒先のドラ息子の家に本が届いたという知らせ。アマゾンUKに速…

Audrey Magee の “The Colony”(1)

きのう、Audrey Magee の "The Colony"(2022)を読了。既報のとおり今年の George Orwell Prize の最終候補作だが、いまチェックすると、もっかイギリス現地ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト入選が最有力視されている。Audrey Magee はア…

Sarah Waters の “Affinity”(2)と既読作品一覧

ついにコロナか、それともふつうの風邪か、とにかく発熱。おまけに喉がやけに痛く、調べるとオミクロン株の症状にそっくり。実際何度あるのかはコワくて測っていない。きょうは何日かぶりに起きていられる状態なので(たぶん発症4日目)、この記事を書いて…

Sarah Waters の “Fingersmith”(2)

年明けから諸般の事情で冬眠中だったが、そろそろ頭を働かさないとボケがひどくなってしまう。数日前から Saraha Waters の "Affinity"(1999)をボチボチ読んでいる。なかなか面白い。 これは周知のとおり既訳もあり、版元はあの推理文庫。だからたぶんミス…

2021年ぼくのベスト小説

今年ももう大晦日。いつもぼんやり過ごしているうちに、いつのまにか年間ベスト小説を選ぶ日が来てしまった。 家の大掃除がおわったところでEXCELの読書記録をながめると、昔の大作を片づける、という新年の目標は春ごろに早くも挫折。以後、ピューリツァー…

Nadifa Mohamed の “The Fortune Men”(2)

今月初め、本ブログを更新しようと思ったところで急用が入り、その後なにかとバタバタしてしまい、ほとんど読書から遠のいてしまった。師走とはよく言ったものですな、べつに師でもなんでもないけれど。 それでも先ほど年賀状を出しおわり、やっと一段落つい…

Sarah Waters の “Fingersmith”(1)

きのう、2002年のブッカー賞およびオレンジ賞(現女性小説賞)最終候補作、Sarah Waters のご存じ "Fingersmith" をやっと読了。途中、諸般の事情で何日も中断したため、いつにもまして、まともなレビューが書けそうもない。さてどうなりますか。 Fingersmit…

2021年ブッカー賞発表とぼくのランキング

ニュースを知って思わず拍手した。Damon Galgut の "The Promise" が今年のブッカー賞を獲得! まずは順当な結果だろう。 Galgut 自身としては、先月の記事でも紹介したとおり、2003年に "The Good Doctor"(未読)、2010年に "In a Strange Room"(☆☆☆☆)が…

Richard Powers の “Bewilderment”(2)と今年のブッカー賞予想

今週から、ほぼ1年半ぶりにジムでワークアウトを再開。休会中、目・腰・胃・肩とつぎづぎに不調をきたし、いまは胃がいちばん気になる。またしても逆流性食道炎の再発らしい。運動だけで改善すればいいのだけど。 さて、久しぶりにブッカー賞最終候補作の現…

Nadifa Mohamed の “The Fortune Men”(1)

きのう、今年のブッカー賞最終候補作、Nadifa Mohamed の "The Fortune Men"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Fortune Men: Shortlisted for the Booker Prize 2021 作者:Mohamed, Nadifa Viking Amazon [☆☆☆★] 神の裁きに間違いはあり…

Damon Galgut の “The Promise”(2)

Damon Galgut、どこかで目にしたことのある名前だなと思って過去記事を検索すると、2010年のブッカー賞最終候補作、"In a Strange Room" の作者だった。 拙文を読みかえすうちにやっと思い出したのだけど、これはなかなかの秀作である(☆☆☆☆)。この年の受賞…

Richard Powers の “Bewilderment”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Richard Powers の "Bewilderment"(2021)を読了。これは今年の全米図書賞一次候補作でもあったが、そちらは二次で落選。さっそくレビューを書いておこう。 Bewilderment: A Novel 作者:Powers, Richard Norton & Company Amaz…

Anuk Arudpragasam の “A Passage North”(2)

Anuk Arudpragasam はスリランカ出身の若い作家で、表題作(2021)の前のデビュー作 "The Story of a Brief Marriage"(2016)は、毎年優秀な新人作家に与えられる Dylan Thomas Prize の最終候補に選ばれた。 などと知ったかぶりで書いたけど、もちろん読後…

Rachel Cusk の “Second Place”(2)

Rachel Cusk の作品を初めて読んだのは、読書メモによると14年前のことだ。当時すでに、彼女は Sarah Waters や David Mitchell などとならんで、すぐれた若手作家としての地位を確立していた。https://granta.com/products/granta-81-best-of-young-british…

2021年ブッカー賞ショートリスト予想

ブッカー賞ショートリストの発表日が迫ってきた(ロンドン時間9月14日)。一次候補作全13冊のうち、ぼくがいままで読んだのはたった4冊だけだが、いちおう現地ファンのまねをして、4冊のランキングがてら最終候補作を予想しておこう。1. The Promise(☆☆☆…

Damon Galgut の “The Promise”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Damon Galgut の "The Promise"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Promise 作者:Galgut, Damon Chatto & Windus Amazon [☆☆☆★★★] 国家間の条約はやぶるためにある、と俗にいわれるが、個人同士の場…

Anuk Arudpragasam の “A Passage North”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Anuk Arudpragasam の "A Passage North"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 A Passage North 作者:Arudpragasam, Anuk Granta Books Amazon [☆☆☆★★] 人生にはかならず、それまでの人生をふり返る瞬間が…

Rachel Cusk の “Second Place”(1)

今年のブッカー賞一次候補作、Rachel Cusk の "Second Place"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Second Place: Longlisted for the Booker Prize 2021 (English Edition) 作者:Cusk, Rachel Faber & Faber Amazon [☆☆☆★★] ふつう小説では、…

Leone Ross の “Popisho”(1)

今年のブッカー賞ロングリスト発表が迫ってきた(ロンドン時間7月27日)。ぼくは体調その他、諸般の事情でしばらく読書そのものからほとんど遠ざかっていたので、いま久しぶりに現地ファンの入選作予想をチェックしたところ、きのう読了した Leone Ross の …

Natasha Brown の “Assembly”(1)

きのう、Natasha Brown の "Assembly"(2021)を読了。Natasha Brown は既報のとおり、ガーディアン紙で紹介された今年の有望新人作家のひとりで、本書は彼女の処女作。イギリスの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞ロングリストに入選しそうな作品として評…

Patricia Lockwood の “No One Is Talking About This”(2)

これは今年の女性小説賞最終候補作だけど、じつは女性小説賞というのにはあまり興味がない。もう十年以上も昔の記事で紹介したことだが、当時のガーディアン紙に載った女流作家 A. S. Byatt のコメントを読んで、わが意を得たりと思ったものだ。The British …