ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ブッカー賞

2022年ぼくのベスト小説

前回の記事をアップしたあと最寄り駅近くのジムに出かけたら、玄関先に大きな門松が飾ってあった。とうに古稀をすぎたぼくには、門松や冥途の旅の一里塚というわけだが、きょうは大みそか。大みそか冥途の旅の道連れ本となるかどうかはさておき、毎年恒例の…

NoViolet Bulawayo  の “Glory”(4)

案の定、5回目のコロナワクチン接種の副反応がひどかった。当日の夕刻から、さむけと疼痛がはじまり、夜中の2時には8度6分の発熱。平熱に戻ったのは接種後3日目のきのうだった。いまもまだ、ちょっとボンヤリしている。なにも読む気がしないので、リハ…

NoViolet Bulawayo の “Glory”(3)

ほぼ1ヵ月ぶりに Isabel Allende の "The House of the Spirits"(1982)を読んでいる。メモを見て粗筋や人物関係を思い出すのに手間どったけど、やっとまた作品の世界になじんできたところ。 しかし明日は、5回目のコロナワクチン接種を受ける予定。こん…

NoViolet Bulawayo の “Glory”(2)

この作家、初耳かと思ったら、過去記事を検索したところ、2013年のブッカー賞最終候補作 "We Need New Names"(2013 ☆☆☆★★)の作者だった。 拙文を読んで、なんとなく思い出した。いい作品だった。これは Bulawayo(1981– )のデビュー作で、彼女はジンバブ…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(5)

表題作と "Treacle Walker" の比較をつづけよう。前回(4)では、そこにカオスがあるだけという小説よりも、カオスをなんとか収拾しようとする動きのあるほうを高く評価すべきだと述べた。 収拾だけでなく、カオスからの脱出の試みもあればさらにいい。煩悶…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(4)

いつかも紹介した話だが、今年のブッカー賞のロングリストが発表される前、現地ファンのあいだでは、ディストピアを扱った候補作がどれくらい選ばれるだろうか、ということも話題のひとつになっていた。おそらく、ロシアによるウクライナ侵攻が背景にあった…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(3)

この一週間、活字からほとんど離れていた。寝しなに『かがみの孤城』を読んでいたくらい。(一ヵ月以上もかかって、やっと文庫本上巻の半分まで到達。これから面白くなるのかもしれないけれど、相変わらず、つまらない)。 ひと息いれたわけは、ブッカー賞の…

2022年ブッカー賞発表とぼくのランキング

今年のブッカー賞は、スリランカの作家 Shehan Karunatilaka の "The Seven Moons of Maali Almeida"(2022)が受賞。本来なら「受賞!」と書くところだが、ふたつの理由で感嘆符はカットした。 まず、前回の記事で発表した予想どおりだったこと。予想の根拠…

NoViolet Bulawayo の “Glory”(1)と、今年のブッカー賞予想

今年のブッカー賞最終候補作、NoViolet Bulawayo の "Glory"(2022)を読了。Bulawayo(1981– )はジンバブエの作家で、本書は彼女の第2作。デビュー作 "We Need New Names"(2013 ☆☆☆★★)も刊行年にブッカー賞最終候補作に選ばれている。さっそくレビュー…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(2)

Shehan Karunatilaka? 聞いたことのない作家だなと思いながら Wiki をチラ見。一瞬おいて、あ、と叫んだ。なんだ、"Chinaman"(2011)の作者だったのか。同書なら、いまはなき英連邦作品賞(Commonwealth Book Prize)の2012年受賞作ということで、デスク横…

Elizabeth Strout の “Oh William!”(2)と既読作品一覧

novel を「小説」と訳したのは坪内逍遥らしいが、"Moby-Dick" や "War and Peace" など質量ともに雄大な novel を小説と呼ぶのは、よく考えると、おかしい。さりとて、いまやほかに呼びようもなく、習慣的にそう分類している。 一方、なるほど「小説」とは言…

Shehan Karunatilaka の “The Seven Moons of Maali Almeida”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Shehan Karunatilaka の "The Seven Moons of Maali Almeida" (2022)を読了。Karunatilaka(1975– )はスリランカの作家で、2012年の Commonwealth Book Prize 受賞作 "Chinaman"(2011)でデビュー(未読)。ハードカバー裏…

Percival Everett の “The Trees”(2)

いま現地ファンの下馬評をチェックすると、今年のブッカー賞レースで先頭争いを演じているのは相変わらず、表題作と "Small Things Like These"(☆☆☆★★★)、"The Seven Moons of Maali Almeida"。3番めはまだ読んでいる途中だが優勝をうかがう勢いだ。なか…

Alan Garner の “Treacle Walker”(3)

おとといレビューをアップした "Oh William!" で、今年のブッカー賞最終候補作を読んだのは4冊め。そこで暫定ランキングもつぎのように変更した。1.2. Small Things Like These(☆☆☆★★★)3. The Trees(☆☆☆★)4. 5. Treacle Walker(☆☆☆★)6. Oh William!(…

Elizabeth Strout の “Oh William!”(1)

二兎を追う者は一兎をも得ず。2冊同時に読んでいると、わかりきった話だが、どちらもふだん以上にスローペース。それでもなんとか、きのう今年のブッカー賞最終候補作、Elizabeth Strout の "Oh William!" のほうをまず読みおえた。女流作家 Lucy Barton シ…

Alan Garner の “Treacle Walker”(2)

Isabel Allende の "The House of the Spirits" をボチボチ読んでいたら、Elizabeth Strout の "Oh William!" が到着予定日よりずっと早く届いてしまった。試読したところ、どうもイマイチ。Allende のほうは相変わらずおもしろい。印象が希薄になるのがいや…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(2)

このところ、ペルーの著名な作家 Isabel Allende の "The House of the Spirits"(1982, 英訳1985)をボチボチ読んでいる。未読の今年のブッカー賞候補作を入手するまでの場つなぎに(途中で乗り換える可能性あり)、と思って取りかかった。 開幕から物語性…

Percival Everett の “The Trees”(1)

今年のブッカー賞候補作、Percival Everett の "The Trees"(2021)を読了。Everett (1956–)は1983年に "Suder" でデビュー(未読)。短編集もふくめ20冊以上の作品を発表しているヴェテラン作家で、南カリフォルニア大学の教授でもあるそうだ。さっそくレ…

Audrey Magee の “The Colony”(4)

今年のブッカー賞ショートリストの発表が迫ってきた(ロンドン時間今月6日)。現地ファンの下馬評では、相変わらず "The Colony"(☆☆☆☆)が1番人気。ロングリスト発表前からの勢いがずっとつづいている。 ほかの候補作のうち、ぼくがこれまで読んだのは、"…

Audrey Magee の “The Colony”(3)

何回か前にも書いたが、この半年、ほとんどなにを読んでもウクライナ侵攻問題が頭にちらついてくる。とりわけ最近の作品がそうで、たとえば、おとといレビューをアップした "Treacle Walker"(2021) の世界は「謎と矛盾、パラドックスに満ちたカオスそのも…

Alan Garner の “Treacle Walker”(1)

きのう Alan Garner の "Treacle Walker"(2021)を読了。Garner は周知のとおりイギリスのファンタジー・児童文学作家で、代表作は "The Weirdstone of Brisingamen"『ブリジンガメンの魔法の宝石』(1960)や、"The Owl Service"『ふくろう模様の皿』(196…

Audrey Magee の “The Colony”(2)

きょうから20日ぶりにジム通い。思ったより走れ、筋トレもいつものメニューをこなせた。 それはいいのだけど、この1週間は長旅の疲れのせいか、ふだん以上にぐうたら生活。身体だけでなく、頭のほうもそろそろ動かさないと。 そのぼんやりした頭で読んでい…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(1)

きのう "Season of Migration to the North" のレビューをアップしたあと、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)を寝床のなかで読んでいたら、三軒先のドラ息子の家に本が届いたという知らせ。アマゾンUKに速…

Audrey Magee の “The Colony”(1)

きのう、Audrey Magee の "The Colony"(2022)を読了。既報のとおり今年の George Orwell Prize の最終候補作だが、いまチェックすると、もっかイギリス現地ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト入選が最有力視されている。Audrey Magee はア…

Sarah Waters の “Affinity”(2)と既読作品一覧

ついにコロナか、それともふつうの風邪か、とにかく発熱。おまけに喉がやけに痛く、調べるとオミクロン株の症状にそっくり。実際何度あるのかはコワくて測っていない。きょうは何日かぶりに起きていられる状態なので(たぶん発症4日目)、この記事を書いて…

Sarah Waters の “Fingersmith”(2)

年明けから諸般の事情で冬眠中だったが、そろそろ頭を働かさないとボケがひどくなってしまう。数日前から Saraha Waters の "Affinity"(1999)をボチボチ読んでいる。なかなか面白い。 これは周知のとおり既訳もあり、版元はあの推理文庫。だからたぶんミス…

2021年ぼくのベスト小説

今年ももう大晦日。いつもぼんやり過ごしているうちに、いつのまにか年間ベスト小説を選ぶ日が来てしまった。 家の大掃除がおわったところでEXCELの読書記録をながめると、昔の大作を片づける、という新年の目標は春ごろに早くも挫折。以後、ピューリツァー…

Nadifa Mohamed の “The Fortune Men”(2)

今月初め、本ブログを更新しようと思ったところで急用が入り、その後なにかとバタバタしてしまい、ほとんど読書から遠のいてしまった。師走とはよく言ったものですな、べつに師でもなんでもないけれど。 それでも先ほど年賀状を出しおわり、やっと一段落つい…

Sarah Waters の “Fingersmith”(1)

きのう、2002年のブッカー賞およびオレンジ賞(現女性小説賞)最終候補作、Sarah Waters のご存じ "Fingersmith" をやっと読了。途中、諸般の事情で何日も中断したため、いつにもまして、まともなレビューが書けそうもない。さてどうなりますか。 Fingersmit…

2021年ブッカー賞発表とぼくのランキング

ニュースを知って思わず拍手した。Damon Galgut の "The Promise" が今年のブッカー賞を獲得! まずは順当な結果だろう。 Galgut 自身としては、先月の記事でも紹介したとおり、2003年に "The Good Doctor"(未読)、2010年に "In a Strange Room"(☆☆☆☆)が…