ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

南欧文学

イタリア、スペイン、ポルトガルなど南欧の文学作品を扱っています

Nikos Kazantzakis の “Zorba the Greek”(2)

先週、話題のジブリパークに行ってきた。いまは先着申込み順になっているらしいけど、昨年11月だったか、家人が応募したときは抽選。「ジブリの大倉庫」と「青春の丘」を引きあてた。超ラッキー、と知人たちにうらやましがられたものだ。 ぼくはジブリ大ファ…

Nikos Kazantzakis の “Zorba the Greek”(1)

数日前、ギリシャの作家 Nikos Kazantzakis(1883 – 1957) の "Zorba the Greek"(1946, 英訳1952)をやっと読了。が、家内外の清掃その他、なにかと雑用に追われ、レビューをでっち上げる時間がなかなか取れなかった。 本書はギリシャの映画監督マイケル・…

José Saramago の “Blindness”(3)

おとといの夕方、旅行から帰ってきた。伊勢志摩~広島~宇和島をめぐる6泊7日の〈シマつながり〉の旅で、終点だけ観光地ではないがぼくの郷里。広島で乗ったタクシーの運ちゃんが野球ファンで、元メジャーリーガーの岩村が宇和島東出身だということも知っ…

José Saramago の “Blindness”(2)

きょうの午前中、4回目のコロナワクチン接種を受けた。2・3回目のときの副反応からして、今回も8度以上の熱が出そう。なんだかもう頭がボンヤリする。ひどくならないうちに手っとりばやく記事を書いておこう。 表題作は以前から、タイトルどおり、「ある…

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(2)

きょうは近所の夏祭り。盆踊りはなかったけど、夕方、出店の前は長蛇の列だったらしい。けれど三軒先に住むドラ息子がコロナに感染したので、初孫のショウちゃんは濃厚接触者。お祭りに連れていくわけにもいかず、ぼくは家で一杯やりながら Amazon Prime で…

José Saramago の “Blindness”(1)

ポルトガルのノーベル賞作家 José Saramago(1922 – 2010)の "Blindness"(1995, 英訳1997)を読了。実際に使用したテクストは Harvill Press 版。さっそくレビューを書いておこう。 Blindness 作者:Saramago, José Vintage Classics Amazon [☆☆☆☆★] 破滅テ…

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(1)

イタリアの作家 Dino Buzzati(1906 – 1972)の "The Tartar Steppe"(1940, 英訳1952)を読了。ヴァレリオ・ズルリーニ監督の遺作『タタール人の砂漠』(1976)の原作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Tartar Steppe (Canons Book 90) (Englis…

Antonio Tabucchi の “Pereira Maintains”(2)と既読作品一覧

表題作は、4月なかばに取り組んだ Antonio Tabucchi シリーズの4冊目。これで手持ちの彼の作品はぜんぶ片づけたことになる。当面あらたに読み足す予定もないので、以下、ささやかな既読作品一覧をアップしておこう。 1. Indian Nocturne(1984 ☆☆☆★★) 2. …

Antonio Tabucchi の “Requiem: A Hallucination”(2)

うかつだった。落ち穂拾いをしようと思って本書を手に取ったら、なんと Tabucchi 自身による巻頭の Note にこんな一節があった。But this book is, above all, a homage to a country I adopted and which, in turn, adopted me, and to a people who liked …

Antonio Tabucchi の “The Edge of the Horizon”(2)

ぼくはいままで同じ作家の作品をつづけて読むことはなるべく控えてきた。連続して接すると、英語的に読みやすい、その作家の特徴をつかみやすいというメリットはあるものの、反面、新鮮味に欠ける憾みもある。それよりむしろ、未知の作家はもちろん、旧知の…

Antonio Tabucchi の “Indian Nocturne”(2)

『インド夜想曲』。なんと蠱惑的なタイトルだろう! そう思って、ほかに目についた作品ともども、英訳版を買い求めたのはずいぶん昔の話。以来、Tabucchi のことはずっと気になっていた。 その積ん読の4冊をやおら書棚から取り出したのは先月なかば。Faulkn…

Antonio Tabucchi の “Pereira Maintains”(1)

きのう、イタリアの作家 Antonio Tabucchi(1943 - 2012)の "Pereira Maintains"(原作1994, 英訳1995)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Pereira Maintains (Canons) 作者:Tabucchi, Antonio Canongate Canons Amazon [☆☆☆★★★] 1930年代、ポルト…

Antonio Tabucchi の “Requiem: A Hallucination”(1)

きのう、イタリアの作家 Antonio Tabucchi(1943 - 2012)の "Requiem: A Hallucination"(原作1991, 英訳1994)を読了。原語はポルトガル語である。さっそくレビューを書いておこう。 Requiem 作者:Tabucchi, Antonio Feltrinelli Traveller Amazon [☆☆☆★★★]…

Antonio Tabucchi の “The Edge of the Horizon”(1)

イタリアの作家 Antonio Tabucchi(1943 - 2012)の "The Edge of the Horizon"(原作1986, 英訳1990)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Edge of the Horizon (English Edition) 作者:Tabucchi, Antonio New Directions Amazon [☆☆☆★] 目に映る…

Antonio Tabucchi の “Indian Nocturne”(1)

イタリアの作家 Antonio Tabucchi(1943 - 2012)の "Indian Nocturne"(原作1984, 英訳1988)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Indian Nocturne (English Edition) 作者:Tabucchi, Antonio Canongate Books Amazon [☆☆☆★★] まさに「インド夜想曲」…

Umberto Eco の “Numero Zero”(2)

今週初め、Patrick Modiano の "Sundays in August"(1986)に取りかかった。冒頭は、主人公の中年男がニースで旧知の男と再会する場面。二人は昔、同じ一人の女を愛していたが、今では二人とも女と縁が切れている。 と、どうやらそんな話らしいとわかったと…

Umberto Eco の “Numero Zero”(1)

愛媛の田舎から帰ると飛び込みの仕事があり、今週はその処理に追われてしまった。テンプながら宮仕えのつらいところだ。 おかげでブッカー賞ショートリストのチェックも遅れたが、なぜか現地ファンのあいだで有力視されていた Max Porter の "Lanny"(2019)…

Umberto Eco の “Baudolino”(3)

もっか〈自宅残業〉で忙しく、Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)のほうはやっと終盤が見えてきたところ。相変わらず☆☆☆で面白くない。ただでさえ遅読症なのに、ますます読む速度が落ちてきた。 同書は1985,86年の過去編と2015年の現代編が交…

Umberto Eco の “Baudolino”(2)

Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)をダラダラ読んでいる。ご存じのとおり、ニューヨーク・タイムズ紙が去年選んだベスト5小説のひとつだが、いまのところ、☆☆☆。ゲイとエイズ、そして家族愛を扱ったもので、暗いし、なかなか話が先へ進まな…

Umberto Eco の “Baudolino”(1)

Umberto Eco の第四作 "Baudolino"(原作2000、英訳2001)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Baudolino (English Edition) 作者: Umberto Eco 出版社/メーカー: Vintage Digital 発売日: 2014/08/28 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る …

Elena Ferrante の “The Story of the Lost Child” (1)

きのう Elena Ferrante の "The Story of the Lost Child" を読了。一気にレビューを書いてもよかったのだが、ひと晩寝かせることにした。雑感でも紹介したとおり、ニューヨーク・タイムズ紙の10 Best Books of 2015の一冊であり、同紙の書評家 Michiko Kaku…

Italo Calvino の “If on a Winter's Night a Traveler” (1)

Italo Calvino の "If on a Winter's Night a Traveler" (1979) をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。If On A Winter's Night A Traveller作者:Calvino, ItaloVintage ClassicsAmazon[☆☆☆★★★] 小説とはなにか。小説を書くとはどういうこと…

Bernardo Atxaga の “Seven Houses in France” (1)

Bernardo Atxaga の "Seven Houses in France" を読了。パブリシャーズ・ウィークリー誌が選んだ去年の最優秀作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。Seven Houses in France作者:Atxaga, BernardoVintage BooksAmazon[☆☆☆★★] 本書には三つの…

Cesare Pavese の “The Political Prisoner” (2)

まず昨日の続きから。昼間にネットでこのブログを検索すると、昨日は更新されなかったことになっていた。疑心暗鬼かもしれないが、またもや「無かったことにする」動きがあったのでは、と思いたくなる。〈不都合な真実〉は消せ、ということでしょうか。 閑話…

Cesare Pavese の “The Political Prisoner” と “The Beautiful Summer” (1)

杞憂だと思いたいが、9月13日の日記に「〈ブログ炎上もの〉」と書いた心配が現実のものになりつつあるようだ。同日もふくめ、何日か連続して論じた作家についてネットで検索したところ、なんと一連の記事にたどり着けなくなっているのだ。不思議に思い、作…

Alberto Moravia の "Contempt"

Alberto Moravia の "Contempt" を読了。モラヴィアを読むのは3年ぶりだが、期待どおりオモロー! 追記:本書は1963年に映画化され、翌年、日本でも「軽蔑」として公開されました。監督はジャン=リュック・ゴダール。Contempt (New York Review Books Clas…

Carmen Laforet の "Nada"

仏独伊露とつづいた「文学の冬」シリーズもいよいよ大詰めで、年明けに最後に読んだのがスペインのカルメン・ラフォレーだ。Nada: A Novel (Modern Library Classics)作者:Laforet, CarmenModern LibraryAmazon[☆☆☆☆] 文学を学ぶため、田舎からバルセロナに…

Niccolo Ammaniti の "Steal You Away" と Alberto Moravia の "Boredom"

ドイツ文学のつぎに読んだのはイタリア文学の作品。正月休みということで軽めの小説を選んだ。Steal You Away作者: Niccolo Ammaniti出版社/メーカー: Canongate Books発売日: 2007/04/05メディア: ペーパーバック クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) …