ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2017-01-01から1年間の記事一覧

2017年ぼくのベスト小説

田舎から帰ってわが家の大掃除。気分はいいが腰が痛い。そんなこんなで Joyce Carol Oates の "Them" はいくらも進んでいない。そこできょうは1年をふりかえり、マイベスト小説を選ぶことにした。 といっても、今年はと言うべきか、今年もと言うべきか、と…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(3)

宇和島に帰省3日目。ホームで母の話を聞いたり、買い物や、誰もいない実家の掃除や、墓掃除をしたり、けっこう忙しい毎日だ きょうはうれしい出来事があった。その昔ぼくもお世話になった鶴城幼稚園の写真を撮っていたら、たまたま先生がいらっしゃったので…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(2)

きょうから愛媛の田舎に帰省。途中、松山に寄り、ひさしぶりに「瓢月」で熱いうどんを食べた。おいしかった! 夕刻、宇和島着。母の入所している老人ホームを訪れたあと、実家でコンビニ弁当を食べながらこれを書いている。 初めてタブレットを使用。キー操…

Joyce Carol Oates の “Expensive People”(1)

1969年の全米図書賞候補作、Joyce Carol Oates の "Expensive People"(1968)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Expensive People (The Wonderland Quartet)作者:Oates, Joyce CarolModern LibraryAmazon[☆☆☆☆] 世間一般に信じられている「真実」と…

George Saunders の “Lincoln in the Bardo”(2)

これだけがんばってるんだもの、★をひとつオマケしなくちゃ。というのが点数評価の根拠である。 本書の前にたまたま、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing" を読んでいたのだが、驚いたことに両書ともテーマは家族の死。英米の代表…

George Saunders の “Lincoln in the Bardo”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞受賞作 George Saunders の "Lincoln in the Bardo" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Lincoln in the Bardo: WINNER OF THE MAN BOOKER PRIZE 2017 (High/Low)作者:Saunders, GeorgeBloomsbury UKAmazon[☆☆☆★★★] 実験的な…

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(2)と、ニューヨーク・タイムズ紙選2017年ベスト5小説

まず表題作の続きから。前々回ふれたように、ぼくは Jesmyn Ward の旧作 "Salvage the Bones" が2011年の全米図書賞受賞作であることも、自分がそのレビューを書いたこともすっかり忘れていた。そこで、一体どんな作品だったのだろうと、当のレビューを読み…

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(1)

きのう、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(2017)を読了。Ward としては、"Salvage the Bones"(2011 ☆☆☆★)以来、2度目の同賞受賞である。ひと晩寝かせたところで、はて、どんなレビューになりますやら。Sing, Unburied, Si…

Victoria Connelly の “Love in an English Garden”(2)

いま読んでいるのは、今年の全米図書賞受賞作 Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(2017)。彼女としては、2011年の "Salvage the Bones"(☆☆☆★)以来、2度目の受賞である。 などとエラソーなことを言ってはいけない。じつは、"Salvage the Bones" のレ…

LJ Ross の “Holy Island”(2)

エクセルに打ち込んでいる読書記録によると、この "Holy Island" は、2000年の夏に Brian Forbes の "The Endless Game"(1986)というスパイ小説を読んで以来、なんと17年ぶりに、読む前からミステリだと認識して読んだミステリである。 この17年間に読んだ…

Victoria Connelly の “Love in an English Garden”(1)

きょうは LJ Ross の "Holy Island" について若干補足しようと思っていたが、先ほど、Victoria Connelly の "Love in an English Garden"(2017)を読了。印象が薄れないうちに、早いところレビューを書いておこう。Love in an English Garden作者:Connelly,…

L.J. Ross の “Holy Island”(1)

イギリスのベストセラー作家 L.J. Ross の Ryan 警部シリーズ第1作、"Holy Island"(2015)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Holy Island: A DCI Ryan Mystery (The DCI Ryan Mysteries Book 1) (English Edition)作者:Ross, LJAmazon[☆☆☆] クリス…

Anita Brookner の “A Start in Life”(2)

英文学ファンなら先刻承知のことだが、本書(1981)は米版タイトル "The Debut" どおり Anita Brookner のデビュー作。彼女はこれで作家としての「人生のスタート」を切ったわけである。 そんな昔の本を今ごろ読みたくなったのは、ひとつには、アメリカ人作…

Anita Brookner の “A Start in Life”(1)

ブッカー賞作家 Anita Brookner のデビュー作 "A Start in Life"(1981)を読了。さっそくレビューを書いておこう。A Start in Life作者:Brookner, AnitaPenguinAmazon[☆☆☆★★] 「文学のせいで人生が破滅した」と嘆く中年の文学博士ルース・ワイス。いったい…

Paul Auster の “4321”(2)

前回レビューらしきものを書いたあと、本書に関する周辺情報をネットで斜め読みしたが、ソースはどれもメジャーなものばかり。こんなマイナーなブログで改めて紹介するまでもない。 そこで何より「書をして語らしめよ」。というのはキザなセリフですな。実際…

Paul Auster の “4321”(1)

数日前、Paul Auster の "4321"(2017)をやっと読了。866ページもある分厚いハードカバーで、腕力のない通勤読書派のぼくは持ち運びにかなり苦労した。ペイパーバックの分冊版が欲しいところだ。きょうは日曜日。〈自宅残業〉の合間にレビューらしきものを…

"4321" 雑感(3)

いやはや、これは重い本だ! といっても中身の話ではない。なにしろ分厚いハードカバーなので、通勤読書派のぼくは持ち運ぶだけで腕が疲れる。とりわけ、帰りがつらい。 例によってカタツムリくんのペースだが、それでもなんとか終盤に差しかかってきた。評…

"4321" 雑感(2)

通勤読書につき鈍速ながら、ようやく中盤に差しかかってきた。相変わらず、とてもおもしろい。 が、Paul Auster の作品としては最上の出来ではないように思う。うまいことはうまいのだが、熱気やアイデアの斬新さという点で、従来の代表作、たとえば "The Ne…

2017年ブッカー賞発表(the Man Booker Prize 2017)

ロンドン時間で10月17日、今年のブッカー賞が発表され、下馬評どおり George Saunders の "Lincoln in the Bardo" が栄冠に輝いた。2年連続のアメリカ人作家受賞である。 ぼくは未読だが(追記:その後読了)、同書はロングリストの発表以前から、有名なレ…

"4321" 雑感(1)

ブッカー賞の発表が迫ってきた(ロンドン時間で10月17日)。今年は夏から超多忙で、最終候補作はまだ2作しか読んでいない。Ali Smith の "Autumn" [☆☆☆★★] にいたっては、去年の12月に読んだので内容もうろ憶え。 というわけで、賞レースを占う資格はまった…

Naomi Alderman の “The Power”

ずいぶん前に今年のベイリーズ賞(Baileys Women's Prize for Fiction:旧オレンジ賞)受賞作、Naomi Alderman の "The Power"(2016)を読み終えていたのだが、その後なかなかレビューを書く時間が取れなかった。おかげで、かなり印象がぼやけてしまった。 …

2017年ブッカー賞ショートリスト発表(The Man Booker Prize 2017 short list)

今年のブッカー賞ショートリストが発表された。ぼくの予想は大はずれ。お気に入りの "Days without End" と "The Ministry of Utmost Happiness" が落選したのはとても残念だ。 今年は夏から超多忙で、未読の候補作をカバーする時間がなかった。以下の6作品…

"The Power" 雑感

地獄の夏が終わったと思ったら、地獄の秋が待っていた。きのうなど文字どおり目が回り、血圧を測ってもらったところ、下が88。「これはよくない」と即座に言われた。原因はたぶん蓄積疲労だろう。 おかげで今年の Baileys Women's Prize for Fiction(旧オレ…

ヴェルレーヌの「秋の歌」

いやはや、地獄の夏だった。今年は超多忙の夏になりそうだと、ある程度覚悟はしていたものの、まさかこれほどとは思わなかった。 おかげで帰省も断念。7月の20日ごろだったか、それまで快調に読み進んでいた Naomi Alderman の "The Power" も完全にストッ…

2017年ブッカー賞ロングリスト発表(The Man Booker Prize 2017 long list)

今年のブッカー賞ロングリストが発表された。このうち、"The Underground Railroad" はご存じのとおり、今年のピューリッツァー賞、および昨年の全米図書賞の受賞作でもある。また、"Days without End" は今年のコスタ賞大賞受賞作。両作品をふくめ、ぼくが…

Carys Davies の “The Redemption of Galen Pike”(2)

フランク・オコナー国際短編賞(Frank O'Connor International Short Story Award)が2015年で廃止されていたとは、去年まで知らなかった。え、と驚いたものだ。 ぼくのような素人ファンの場合、ニューヨーカー誌でも購読しないかぎり、いわゆる短編作家の作…

David Grossman の “A Horse Walks Into a Bar”(2)

やっと2回目にこぎ着けた。既報のとおり、ブッカー国際賞 (The Man Booker International Prize)の今年の受賞作である。昨年から同賞の対象は作家ではなく作品に変更され、その意味で本書は第2回受賞作。 去年の Han Kang の "The Vegetarian"(☆☆☆★★★)…

Carys Davies の “The Redemption of Galen Pike”(1)

早く David Grossman の "A Horse Walks Into a Bar" の続きを、と思いつつ、きょうも後回し。この1週間、ずっと持ち歩いていた Carys Davies の The Redemption of Galen Pike"(2014)をようやく読みおえたからだ。2005年に創設され、2015年で廃止された…

Elizabeth Strout の "Abide with Me" と "Olive Kitterridge"

ゆうべの記事をかいたあと確認したところ、Elizabeth Strout の旧作 "Abide With Me"(2006)と "Olive Kitteridge"(2008)の昔のレビューを公開していないことがわかった(追記:後日、すでに公開ずみであることが判明しましたが、この記事の削除はしてい…

Elizabeth Strout の “Anything Is Possible”(2)

やっと2回目の駄文だが、あまり付け加えることはない。ひと言でいうと、「柳の下に2匹目のドジョウはいなかった」。 ★ひとつの差だが、去年の "My Name Is Lucy Barton" のほうがずっといい。ぼくのように同書で味わった感動をもう一度、と期待に胸をふく…