ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧

Balzac の “Old Goriot”

トーマス・マンの "Confessions of Felix Krull, Confidence Man" を読んでいるのだが、英語は易しいのにどうも進まない。そこで今日は、昔のレビューでお茶を濁すことにした。 追記:本書は2004年に映画化されました。 Old Goriot (The Human Comedy)作者: …

Dostoyevsky の “The Idiot”(結び)

「完全に近い善人」ムイシュキンが単なるお人好しでないことは明らかだ。彼はたしかに idiot と呼ばれるのだが、実際は鋭い知性の持ち主であり、相手の魂胆や下心をすばやく見抜く。しかしそれを咎めることなく、あとで後悔した人間をすぐに赦す。それゆえム…

Dostoyevsky の “The Idiot”(2)

やっと田舎から帰ってきた。帰省中にトーマス・マンを読もうと思ったのだが、意外に過密スケジュールで完読できなかったので、今日は『白痴』の続きでも。 第1部の第9章で大笑いした箇所がある。飲んだくれの老将軍が絶世の美女ナスターシャ・フィリッポヴ…

Dostoyevsky の “The Idiot”(2)

恥ずかしながら、『白痴』を完読したのは今回が初めてだ。まず学生時代、ドストエフスキーについて調べる必要があったとき、邦訳で途中まで読んだのだが、結局締め切りに間に合わず、ベルジャーエフの『ドストエフスキーの世界観』でごまかしてしまった。そ…

Dostoevsky の “The Idiot”(1)

Dostoyevsky の "The Idiot" を読了。Richard Pevear と Larissa Volokhonsky の夫妻が英訳した Vintage 版で読んだのだが、いやもう、めっちゃくちゃオモロー! おかげで、またまた長いレビューになってしまった。最長記録の更新だ。おしゃべり編は後日にし…

Carlos Fuentes の “A Change of Skin”(2)

ぼくは "A Change of Skin" のレビューの中で、「現実と虚構が入り乱れた猥雑な狂騒劇が繰りひろげられる」終幕を「マジック・リアリズムの真骨頂」と表現したが、この終幕をどうとらえるかによって本書の評価も決まるのではないだろうか。 「狂騒劇」が始ま…

Julio Cortazar の “Hopscotch”(2)

3年前に読んだあと書棚の奥に突っこんでいた "Hopscotch" を引っぱりだしてみると、第三部の冒頭には 'Expendable Chapters' という副題がついている。訳せば「読み捨ての章」。つまり、これから先はもう読まなくてもいいぞ、というわけだが、作者コルタサ…

Julio Cortazar の “Hopscotch”(1)

海外文学にハマってから3年前までは、夏になるとラテンアメリカ文学の作品も英語で読むことにしていた。ラテアメ文学となるとぼくはまったくの門外漢で、六〇年代に国際的なブームが起こったことも以前は知らなかったので、当然リアルタイムでは読んでいな…

Carlos Fuentes の “A Change of Skin”(1)

Carlos Fuentes の "A Change of Skin" を読了。いやはや、フォークナーに劣らぬ難物だった。A Change of Skin作者:Fuentes, CarlosFarrar, Straus and GirouxAmazon[☆☆☆☆★] 春の日曜日、ワーゲンに乗ってメキシコシティーから海辺のリゾート地へと向かう四…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(結び)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" の終幕には、読んでいて思わず「元気が出てくる」箇所がある。この本には、「両者が自分の魂を所有し、ともに自由でありながら交わる」のが「愛の完成」であると説く作家が登場するわけだが、その作家が恋愛論から人間哲学…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(3)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" には、ロレンスの現実認識を代弁する人物も登場する。それが主人公の男で、彼は当初、炭坑で働いていたのだが、やがて妻子を捨て、ロンドンでフルート奏者として生計を立てはじめる。その動機は要するに「愛からの逃避」だ…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(2) 

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" には 'aloness', 'singleness' という単語が何度か出てくる。訳せば「一人であること」「単独」。これが感傷的な「孤独」の意でないことは作中人物も断っているとおりで、ぼくは前々回、これを自分の言葉で「人がそれぞれ唯…

D. H. Lawrence の “The Rainbow”

ロレンスは学生時代の夏、"Lady Chatterley's Lover" を読んで以来、なんとなく夏読書向きのイメージがある。8年前に突然、海外文学に狂いはじめてから、夏になると英文学の古典としては、最初は E. M. フォースターやジョイス、コンラッド http://d.hatena…

D. H. Lawrence の “Aaron's Rod”(1)

D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読了。ロレンス7作目の長編(22)で、彼の恋愛哲学、人間観が色濃く打ちだされた問題作だと思う。Aaron's Rod: Cambridge Lawrence Edition; Revised (Classic, 20th-Century, Penguin)作者: D. H. Lawrence,Mara Kalnin…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(2)

今日から D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読みだしたらすっかりハマってしまい、もはや頭はロレンス・モード。しかし忘れないうちに、フォークナーの感想の続きを書いておこう。 テーマに関しては昨日書いたとおりだが、"Intruder in the Dust" の面白さ…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(1)

William Faulkner の "Intruder in the Dust" をやっと読了。これほどの難物は久しぶりだった。 追記:本書は1949年に映画化されましたが、日本では未公開のようです。Intruder in the Dust (Vintage International)作者:Faulkner, WilliamVintageAmazon[☆☆☆…

“Intruder in the Dust” におけるフォークナー英語の難しさ

フォークナーの "Intruder in the Dust" をようやく半分過ぎまで読みおえたところだが、いやはや「老脳」にはまったくしんどい。その英語の難しさについて気づいたことをいくつか書いておこう。 まずフォークナーに限らず、一般的に言えることだが、最初はど…

William Faulkner の “The Wild Palms”

3年ぶりにフォークナーを読みはじめたところだが、学力不足の上にボケ気味のため、なかなか進まない。まったく歳は取りたくないもんだ、と実感している。そこで今日は、3年前に読んだフォークナーの『野性の棕櫚』のレビュー(アマゾンに投稿して削除した…