ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

アカデミー賞および映画化作品

Jane Austen の “Pride and Prejudice”(2)

十九世紀英文学の古典探訪第二回。これでやっと『高慢と偏見』も "Pride and Prejudice" となった。 ただし、中学生のころだったか読んだ邦訳版では、たしか『自負と偏見』だったような気がする。未見のジョー・ライト監督作品は『プライドと偏見』(2005) …

Charlotte Brontë の “Jane Eyre”(2)

ああ、やっと『ジェイン・エア』が "Jane Eyre" になった! 高1のときだったか邦訳で読んだきりの『ジェイン・エア』。これもいつだったか一度観たきりのフランコ・ゼッフィレリ監督作品『ジェイン・エア』(1996)。 なかなかゴキゲンな映画だったけど、い…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(2)

先週末、甥の結婚式に出席のため松山に行ってきた。帰りの日に市内見物。といっても、訪れたのは子規堂、坂の上の雲ミュージアム、萬翠荘の三ヵ所だけで、いずれも再訪ないし再々訪だったが、駆け足で明治・大正・昭和初期のことを勉強するにはいいコースで…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(1)

Muriel Spark(1918 - 2006)の "The Driver's Seat"(1970)を読了。使用したテクスト、Penguin Books(初版)の表紙にエリザベス・テイラーの顔写真があり、調べてみると、本書は1974年、イタリアのジュゼッペ・パトリーニ・グリッフィ監督によって映画化…

Elizabeth Taylor の “Angel”(2)

J.G. Farrell(1935 - 1979)の "Troubles"(1970)を読みはじめた。じつはこれ、今年こそ片づけようと年始に決めていた本の一冊。ご存じ Lost Man Booker Prize の受賞作である。 Booker Prize が創設されたのは1969年で、翌70年まで対象は前年刊行の作品だ…

Elizabeth Taylor の “Angel”(1)

ゆうべ、Elizabeth Taylor(1912 - 1975)の "Angel"(1957)を読了。この Elizabeth Taylor は同名の女優とは別人物。本書は2007年、フランソワ・オゾン監督により映画化され、同年日本でも公開されている。邦題は『エンジェル』。さっそくレビューを書いて…

Nikos Kazantzakis の “Zorba the Greek”(1)

数日前、ギリシャの作家 Nikos Kazantzakis(1883 – 1957) の "Zorba the Greek"(1946, 英訳1952)をやっと読了。が、家内外の清掃その他、なにかと雑用に追われ、レビューをでっち上げる時間がなかなか取れなかった。 本書はギリシャの映画監督マイケル・…

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(1)

イタリアの作家 Dino Buzzati(1906 – 1972)の "The Tartar Steppe"(1940, 英訳1952)を読了。ヴァレリオ・ズルリーニ監督の遺作『タタール人の砂漠』(1976)の原作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Tartar Steppe (Canons Book 90) (Englis…

Khaled Hosseini の “The Kite Runner”(1)

Khaled Hosseini の大ベストセラー "The Kite Runner"(2003)を読了。周知のとおり、これは2007年に映画化され日本でも公開されている。邦題は『君のためなら千回でも』。さっそくレビューを書いておこう。 The Kite Runner (English Edition) 作者:Hossein…

Donna Tartt の “The Goldfinch”(1)

2014年のピューリツァー賞受賞作、Donna Tartt の "The Goldfinch"(2013)を読了。周知のとおり、これは2019年に映画化されたが日本では未公開。ただし Amazon Prime Video では鑑賞できるようだ。邦題は『ザ・ゴールドフィンチ』。さっそくレビューを書い…

William Faulkner の “The Reivers”(2)

いまでこそ、「なにから読むか、フォークナー」などと気どったタイトルの記事を本ブログに載せているが、じつは Faulkner を英語で読むようになったのは2000年の夏から。そう遠い昔ではない。 高校時代には翻訳で『八月の光』その他を読んでいたものの、大学…

William Faulkner の “The Reivers”(1)

William Faulkner の最後の長編 "The Reivers"(1962)を読了。Faulkner は本書の刊行後に他界したが、翌1963年、本書で "A Fable"(1954 ☆☆☆★★★)以来二度目のピューリツァー賞受賞。1969年には、"The Reivers" はスティーヴ・マックィーン主演で映画化され…

Pascal Mercier の “Night Train to Lisbon”(2)

この英訳版は2008年に刊行されたものだが、いつ、どんなきっかけで手に入れたのかも憶えていない。"Night Train to Lisbon" って、いいタイトルだなと思ったのか、それとも、ロマンティックなカバー写真に惹かれたのか。どちらにしても、ぼくはいつも内容を…

Pascal Mercier の “Night Train to Lisbon”(1)

スイスの作家で哲学者 Pascal Mercier の世界的なベストセラー、"Night Train to Lisbon"(原作2004、英訳2008)を読了。本書は2013年、ビレ・アウグスト監督によって映画化。日本でも2014年、『リスボンに誘われて』という邦題で公開されている。さっそくレ…

William Faulkner の “The Hamlet”(1)

ああ、やっぱりヤマカンどおり、今年の全米図書賞は Sigrid Nunez の "The Friend" に決まりましたね! しかし当面、読書予定はけっこう詰まっている。とりあえず、来年2月に出るというペイパーバック版を待つことにしよう。 さて、このところ体調不良につ…

Philip Roth の “The Human Stain”

相変わらず過去記事の整理中。きょうも前回同様、本ブログでは未発表のレビューでお茶を濁しておこう。 なんだ、それならコピペすればいいだけじゃん、と思われるかもしれないが、昔のレビューほど〈拙文度〉が激しい。しかも、点数評価をしていない場合が多…

Lawrence Durrell の "Justine(Alexandria Quartet 1)"(1)

きのう Lawrence Durrell の "Justine"(1957)を読了。周知のとおり、これは The Alexandria Quartet の第1部であり、本来なら著者の意図どおり、4部作を a single work として読み、レビューを書くべきところだが、いつになったら完読できるのかわからな…

Andrew Sean Greer の “Less”(2)とゲイ小説名作選

本書のピューリッツァー賞受賞は意外と思った人が多いかもしれない。P Prize. com の直前予想では泡沫候補扱いだったからだ。 本命視されていたのは、昨年の全米図書賞受賞作、Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(☆☆☆★★)。ついで、今年(対象は昨年)…

L. P. Hartley の "The Go-Between" (1)

ゆうべ、L. P. Hartley の "The Go-Between" を読了。Hartley は、創元推理文庫『怪奇小説傑作集2』の第1話「ポドロ島」の作者である。さて、ひと晩寝かせたところで、どんなレビューになるでしょうか。 追記:その後、映画化されていることを発見しました…

Magda Szabo の “The Door” (1)

しばらく前に読了していたのだが、レビューらしきものを書く時間がなかなか取れなかった。おかげで印象が多少薄くなった感は否めない。 反面、いまだに心に強く残っているところもある。それがこの作品の本質にかかわっていることを願いつつ、やっと駄文を綴…

Graham Swift の “Mothering Sunday” (1)

Graham Swift の最新作、"Mothering Sunday" を読了。あちらのファンのあいだでは、今年のブッカー賞の有資格候補作と目されている。わりと好評のようだ。(追記:本書は2021年、エバ・ユッソン監督によって映画化され、日本でも2022年に公開されました。邦…

Thomas Mann の “Death in Venice”

Thomas Mann の短編は高校生のとき、途中で挫折したり、最後まで読んでも読んだ気がしなかったり。以来、長らく宿題となってしまったが、昨年末、Vintage 版で悪戦苦闘しながら読了。それからさらに雑感を書きつづけ、今日やっと、以下のレビューらしきもの…

Stendhal の "The Red and the Black"

えんえん19回も雑感を書き綴ったおかげで、ようやくレビューらしきものにたどり着けた。われながら浮世ばなれした話だ。またおそらく、現代文学の趨勢とも関係ないだろう(仏語原作は1830年刊)。だが、ぼくにとっては青春時代以来の再々読であり、自分なり…

Maria Semple の “Where'd You Go, Bernadette” (1)

オレンジ賞改め、Women's Prize for Fiction の最終候補作、Maria Semple の "Where'd You Go, Bernadette" を読了。これは今年のアレックス賞受賞作でもあり、昨年のタイム誌の年間ベスト10小説や、Janet Maslin の10 Favorite Books にも選ばれている。さ…

Dave Eggers の “A Hologram for the King” (1)

Dave Eggers の "A Hologram for the King" を読了。昨年の全米図書賞最終候補作で、ニューヨーク・タイムズ紙や、パブリシャーズ・ウィークリー誌、アメリカおよびカナダのアマゾンの年間ベスト、Michiko Kakutani の Favorite Books にも選ばれている。さ…

Jonas Jonasson の “The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared” (1)

たいへん遅まきながら、Jonas Jonasson の "The 100-Year-Old Man Who Climbed Out the Window and Disappeared" を読了。いまや世界的なベストセラーで、去年のアマゾンUKの年間ベスト作品にも選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。(後記:その…

Ben Fountain の “Billy Lynn's Long Halftime Walk” (1)

これを書いている時点ではまだ、今年の全米図書賞は発表されていないようだが、私見によれば「大本命」かも、と思われる Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2016年、ア…

Kevin Powers の “The Yellow Birds” (1)

今年の全米図書賞候補作、Kevin Powers の "The Yellow Birds" を読了。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2017年、アレクサンドル・ムーア監督によって映画化されました)。The Yellow Birds: A Novel作者:Powers, KevinLittle, Brown and Com…

H. E. Bates の “A Month by the Lake & Other Stories” (1)

世間とちがって今日は出勤日だったが、H. E. Bates の短編集、"A Month by the Lake & Other Stories" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。A Month by the Lake and Other Stories (New Directions Paperbook)作者:Bates, H. E.New Direct…

Rachel Joyce の “The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry” (1)

今年のブッカー賞候補作、Rachel Joyce の "The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry" を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2023年、ヘティ・マクドナルド監督作品として映画化され、日本でも公開されました。邦題は『ハロルド・フライの…