ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Gary Shteyngart の “Super Sad True Love Story”(2)

これは雑感(1)に書いたとおり、Michiko Kakutani が去年のベスト10に選んだ作品ということで取りかかった。選定理由は未読。ちなみに、Janet Maslin はまったくべつの10冊を選んでいるようなので、2人が相談してそれぞれお気に入りの本を分担したのかも…

Gary Shteyngart の “Super Sad True Love Story”(1)

このところ職場が繁忙期で「自宅残業」が続いていたが、今日は気分転換。朝から本書の残りに取り組み、昼過ぎに脱兎のごとく読みおえた。いつものようにレビューを書いておこう。Super Sad True Love Story: A Novel作者: Gary Shteyngart出版社/メーカー: R…

追悼 Beryl Bainbridge

今日も少しだけ "Super Sad True Love Story" を読み進んだが、べつに新たな感想を付け加えるほどではないし、だんだんネタばらしになりつつあるので小休止。代わりに Beryl Bainbridge のことを書こう。 まことにお恥ずかしい次第だが、最近になってようや…

“Super Sad True Love Story”雑感(4)

カタツムリ君のペースとはいえ、ようやく後半に差しかかってきた。ネタばらしにならない程度に主筋をまとめると、Eunice は Lenny とのギャップを認めつつ、また家族の反対に遭いながらも彼を次第に愛するようになる。一方、彼女はホームレスの元軍人 David …

“Super Sad True Love Story”雑感(3)

2部構成の一つは主人公 Lenny の日記だが、あと一つは彼が恋した若い娘 Eunice のメールのやりとりで、相手は友人や母親、妹、そして Lenny。にぎやかで饒舌な会話から成り立ち、こちらもまず文体的に面白い。Eunice はいちおう Lenny の愛を受けとめ、彼を…

“Super Sad True Love Story”雑感(2)

何やら全体主義国家、ディストーピア風の近未来のアメリカで中年男が若い娘に恋をする。今日読んだ箇所にこんな一節があった。'For me to fall in love with Eunice Park just as the world fell apart would be a tragedy beyond the Greeks.' (p.108) それ…

“Super Sad True Love Story”雑感(1)

Gary Shteyngart の "Super Sad True Love Story" に取りかかった。以前、"Absurdistan" (06) があちらのベストセラーになっているのを知り、結局注文をためらってしまった作家だが、今回は Michiko Kakutani が去年の年間最優秀作品の一つに選んでいる。そ…

Julie Orringer の “How to Breathe Underwater”(2)

昨日はじつは仕事を休み、寝床の中でボーッとしながら本書を読みおえた。そんな調子だから全体的なテーマをなかなか捉えられなかったが、最後の短編 "Stations of the Cross" に差しかかってようやく気がついた。なんだ、「女子供の世界にもじつは残酷でエゴ…

Julie Orringer の “How to Breathe Underwater”(1)

現在アメリカで "The Invisible Bridge" が人気を博している Julie Orringer の処女短編集、"How to Breathe Underwater" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。How to Breathe Underwater (Vintage Contemporaries)作者: Julie Orringer出…

“How to Breathe Underwater”雑感(3)

今日はあわよくば読みおわり、レビューも書けるかなと思ったが、風邪による頭痛と疲労困憊で、何と1話しか読めなかった。が、この1話もなかなかよかった。 ただ、これを読んでいるうちに、「お前はこんなものばかり読んでいるから駄目なんだ」という某先生…

“How to Breathe Underwater”雑感(2)

目ざす本を検索したら、その関連書も読みたくなり、そちらのページを開いたら今度はまたべつの本に目移りする。これがネット時代における未知の作品の発見法のひとつだろう。何年か前はいつもそんな調子で本を買いこんでは積ん読したもので、いまだにその山…

“How to Breathe Underwater”雑感(1)

一つだけ "Secret Daughter" の補足をしておこう。「秘密の娘」の実の両親は一時期、ムンバイの有名なスラム街 Dharavi に住んでいる。アメリカ人として育った娘も現地を訪れ、そこに住む人々と接触する。「有名な」と書いたが、じつは本書を読むまでぼくは…

Shilpi Somaya Gowda の “Secret Daughter”(2)

この3連休は初日こそダラダラしていたものの、昨日読みおえた本書のおかげで充実した時間を過ごすことができた。300ページ以上の長編を2日で読んだのは久しぶりで、それほど本書は無類に面白い読み物だということだ。 英米での売れ行きはそこそこなのに、…

Shilpi Somaya Gowda の “Secret Daughter”(1)

カナダで大ベストセラーとなっている Shilpi Somaya Gowda の "Secret Daughter" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Secret Daughter: A Novel作者: Shilpi Somaya Gowder出版社/メーカー: HarperCollins発売日: 2010/03/15メディア: ペーパー…

“Secret Daughter”雑感

カナダでもっか、大ベストセラーとなっている Shilpi Somaya Gowda の "Secret Daughter" に取りかかった。これは先月、Alexander MacLeod の "Light Lifting" をどうしても読みたくてカナダから取り寄せたとき、あちらのベストセラー・リストに載っているの…

Peter Rock の “My Abandonment”

去年のオレンジ賞受賞作の一つ、Peter Rock の "My Abandonment" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。My Abandonment作者: Peter Rock出版社/メーカー: Mariner Books発売日: 2010/04/02メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を…

“My Abandonment”雑感

今年のアレックス賞受賞作のうち、すでにペイパーバック化されているのは既読の3冊くらいのものなので、今度は先月読んだ "Tunneling to the Center of the Earth" に続き、去年の受賞作の一つ、Peter Rock の "My Abandonment" に取りかかった。これでもう…

DC Pierson の “The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”(2)

本書を手に取った理由は結局、今年のアレックス賞受賞作のうち、現在すでにペイパーバック化されているもの、ということだったようだ。この作品の前に読んだのがホラー小説で、今回はSF冒険小説。去年読んだ "Room" が一種のミステリだったので、さすがは…

DC Pierson の “The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”(1)

今年のアレックス賞受賞作の一つ、DC Pierson の "The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To" をやっと読みえた。さっそくレビューを書いておこう。The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To (Vintage Contemporaries)作者: DC Pierson出版社/メーカ…

“The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”雑感(3)

中盤を過ぎたあたりからやっと本番が始まった! そこで前半をふりかえると、それまでずっと本番を導くためのイントロ、伏線であったことがわかる。昨日本書に貼った「ごくふつうの青春学園小説」というレッテルは、大急ぎで剥がさないといけません。やれやれ…

“The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”雑感(2)

昨日は「これからいよいよ本番のようだ」と思ったが、ううむ、どうもそうでもないらしい。 自分は生まれたときからずっと眠れない、と友人に打ち明けられたあと、主人公の少年は観察や実験をいろいろ試みた結果、彼の話を次第に信じるようになる。そのプロセ…

“The Boy Who Couldn't Sleep and Never Had To”雑感(1)

今日はまず、一つだけ "The Reapers Are the Angels" の補足をしておこう。「ゾンビが跳梁する終末の世界にあって…15歳の少女が超人的な戦闘能力を身につけ、襲いかかるゾンビや異様なモンスターを完膚なきまでに撃退」という主筋はまさに映画的。ざっとネッ…

Alden Bell の “The Reapers Are the Angels”(2)

いやあ、ホントに驚きました! ぼくはてっきり最後の最後まで、この「ホラー小説、破滅テーマのSF、冒険小説」がいつか、「タフでハードな少女戦士の精神的な成長を描いた青春小説」に様変わりするものとばかり思っていたのだが、「まさかこんな結末が待っ…

Alden Bell の “The Reapers Are the Angels”(1)

今年のアレックス賞受賞作の一つ、Alden Bell の "The Reapers Are the Angels" を読了。例によってさっそくレビューを書いておこう。The Reapers Are the Angels作者: Alden Bell出版社/メーカー: Holt Paperbacks発売日: 2010/08/03メディア: ペーパーバッ…

“The Reapers Are the Angels”雑感(2)

今日はいくらも進まなかった。これからストレス発散のため一杯やることにしているので、それまでに昨日書き切れなかった分だけ書いておこう。 「単なるホラー小説を超えた要素があるにちがいない」と期待して読みはじめた本書だが、その要素とはおそらく、主…

“The Reapers Are the Angels”雑感(1)

今年のアレックス賞受賞作の一つ、Alden Bell の "The Reapers Are the Angels" に取りかかった。去年のブッカー賞最終候補作でもあった Emma Donoghue の "Room" はすでに読んでいるので http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100919、これで今年のアレック…