ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

アフリカ文学

エジプト関連は中近東文学で扱っています

NoViolet Bulawayo の “Glory”(1)と、今年のブッカー賞予想

今年のブッカー賞最終候補作、NoViolet Bulawayo の "Glory"(2022)を読了。Bulawayo(1981– )はジンバブエの作家で、本書は彼女の第2作。デビュー作 "We Need New Names"(2013 ☆☆☆★★)も刊行年にブッカー賞最終候補作に選ばれている。さっそくレビュー…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(3)

まったりペースながら海外の小説を読んでいると、おそらく日本の現代文学ではさほど扱われていないのではと思えるような問題について考えさせられ、しかもそれぞれの問題に関連性のあることが、たまにある。coincidence の妙というべきか。 不可解なことにブ…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(2)

これは名作巡礼の一環で取りかかった。Tayeb Salih(1929 – 2009)がスーダンの作家で、本書(1966, 英訳1969)が In 2001 it was selected by a panel of Arab writers and critics as the most important Arab novel of the twentieth century. と知ったの…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(1)

ゆうべ、スーダンの作家 Tayeb Salih(1929 – 2009)の "Season of Migration to the North"(1966, 英訳1969)を読了。本書は2001年、アラブ諸国の文学関係者により、「20世紀にアラビア語で書かれた最も重要な小説」に選定されている。4回目のコロナワク…

Chinua Achebe の “Things Fall Apart”(2)

ロンドン時間26日、ブッカー賞のロングリストが発表された。いつもながら現地ファンのヒートアップぶりには感心させられる。「あと6時間で発表だ。ワクワクしてる」「そうだ、そうだ」なんていうファンたちの声からして、日本でもアメリカでも、発表前から…

Chinua Achebe の “Things Fall Apart”(1)

Chinua Achebe の "Things Fall Apart"(1958)を読了。恥ずかしながら、いままで未読だった。陳腐なレビューしか書けそうにないが、さて。 Things Fall Apart 作者:Achebe, Chinua Penguin Classics Amazon [☆☆☆☆★] 文化とは、そして宗教とは、ある民族や国…

Damon Galgut の “The Promise”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Damon Galgut の "The Promise"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Promise 作者:Galgut, Damon Chatto & Windus Amazon [☆☆☆★★★] 国家間の条約はやぶるためにある、と俗にいわれるが、個人同士の場…

Yaa Gyasi の “Transcendent Kingdom”(1)

ゆうべ、Yaa Gyasi の "Transcendent Kingdom"(2020)を読了。周知のとおり今年の女性小説賞最終候補作で、現地ファンの下馬評では2番人気だが、集計方法によっては1番人気にもなっている。また、気の早い同ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリ…

Tsitsi Dangarembga の “This Mournable Body”(1)

予定より大幅に遅れてしまったが、なんとか Tsitsi Dangarembga の "This Mournable Body"(2018)を読みおえた。今年のブッカー賞最終候補作である。さっそくレビューを書いておこう。 This Mournable Body: SHORTLISTED FOR THE BOOKER PRIZE 2020 作者:Da…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2019年のロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補作でもありました)。 The Shadow King: SHORTLISTED FOR THE BO…

Ben Okri の “The Famished Road”(1)

1991年のブッカー賞受賞作、Ben Okri の "The Famished Road"(Anchor Books 版)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Famished Road (The Famished Road Trilogy) 作者:Okri, Ben 発売日: 1992/07/27 メディア: ペーパーバック [☆☆☆☆] 私見だがマ…

Chigozie Obioma の “An Orchestra of Minorities”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Chigozie Obioma の "An Orchestra of Minorities"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 An Orchestra of Minorities: Shortlisted for the Booker Prize 2019 作者: Chigozie Obioma 出版社/メーカー: Little, Br…

Dave Eggers の “What Is the What”(1)

2006年の全米批評家協会賞最終候補作、Dave Eggers の "What Is the What"(2006)を読了。さっそくレビューを書いておこう。What is the What作者:Eggers, DavePenguin Books Ltd (UK)Amazon[☆☆☆☆★] スーダンの内戦勃発により国外へ脱出した難民の自伝にも…

Nadine Gordimer の “The Conservationist”(1)

1974年のブッカー賞受賞作、Nadine Gordimer の "The Conservationist" を読了。Gordimer は南アフリカの作家で、1991年にノーベル文学賞を受賞。本書はたぶん彼女の代表作のひとつだと思うが、まだ邦訳は刊行されていないようだ。さっそくレビューを書いて…

J. M. Coetzee の “The Schooldays of Jesus” (1)

今年のブッカー賞候補作、J. M. Coetzee の "The Schooldays of Jesus" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Schooldays of Jesus作者:Coetzee, J.M.Harvill SeckerAmazon[☆☆☆★★] 前作『イエスの幼子時代』から一歩前進。が、イエスの少年時代をモ…

Yaa Gyasi の “Homegoing” (1)

ガーナ出身でアメリカ在住の新人作家、Yaa Gyasi の "Homegoing" を読了。先月7日に刊行されたばかりの作品で、今年のブッカー賞候補作の資格があるかどうか、あちらのファンのあいだで話題になっている。さっそくレビューを書いておこう。Homegoing: A nov…

Kamel Daoud の “The Meursault Investigation” (1)

Kamel Daoud の "The Meursault Investigation" (2013) を読了。巻末の紹介によると、Daoud はアルジェリア人ジャーナリストで、原書はフランス語で書かれ、ゴンクール賞最終候補作とのこと。英訳版は昨年、ニューヨーク・タイムズ紙の書評家 Michiko Kakuta…

今年の全米批評家協会賞

かなり旧聞に属するが、去る13日、今年の全米批評家協会賞(対象は昨年の作品)が発表され、Chimamanda Ngozi Adichie の "Americanah" [☆☆☆☆] が栄冠に輝いた。 ぼくは去年の7月だったか、あちらの下馬評を参考に、同書がブッカー賞のロングリストにノミネ…

NoViolet Bulawayo の “We Need New Names” (1)

今年のブッカー賞候補作、NoViolet Bulawayo の "We Need New Names" を読了。Bulawayo はジンバブエ出身の新人作家で、本書は彼女の長編デビュー作である。さっそくレビューを書いておこう。We Need New Names作者:Bulawayo, NoVioletChatto & WindusAmazon…

Chimamanda Ngozi Adichie の “Americanah” (1)

諸般の事情で予定よりずいぶん遅れてしまったが、Chimamanda Ngozi Adichie の新作 "Americanah" をなんとか読了。さっそくレビューを書いておこう。Americanah: A novel (ALA Notable Books for Adults)作者:Adichie, Chimamanda NgoziKnopfAmazon[☆☆☆☆] な…

J. M. Coetzee の “The Childhood of Jesus” (1)

ノーベル賞作家 J. M. Coetzee の最新作、"The Childhood of Jesus" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Childhood of Jesus作者:Coetzee, J. M.Harvill SeckerAmazon[☆☆☆★★] 哲学とは「ひとを揺さぶり、ひとの人生を変えるようなもの」であるのが…

Aminatta Forna の “The Memory of Love”(1)

今年の国際IMPACダブリン文学賞は「残念ながら」、Colum McCann の "Let the Great World Spin" に決定した。もちろん秀作には違いないのだが、これは周知のとおり、2009年に全米図書賞を受賞している(http://d.hatena.ne.jp/sakihidemi/20100128)。ダブリ…

Damon Galgut の “In a Strange Room”(1)

今日は朝のうち「自宅残業」に励んだが、昼過ぎから本書の残りに取り組み、ジョギングに出かける前に何とか読みおえた。これで今年のブッカー賞最終候補作をぜんぶ読了したことになる。さっそく例によってレビューを書いておこう。In a Strange Room作者:Gal…

Petina Gappah の "An Elegy for Easterly"(1)

昨年のガーディアン新人賞(The Guardian First Book Award)受賞作、Petina Gappah の "An Elegy for Easterly" を読みおえた。いつものようにまずレビューを書いておこう。An Elegy for Easterly作者:Gappah, Petina発売日: 2009/12/03メディア: ペーパー…

J.M. Coetzee の "Summertime"(1)

今年のブッカー賞最終候補作の一つ、J.M. Coetzee の "Summertime" をやっと読みおえた。おとといの雑感と似たり寄ったりになりそうだが、さっそくレビューを書いておこう。Summertime作者:Coetzee, J.M.発売日: 2009/09/14メディア: ハードカバー[☆☆☆★] 作…

Ishamael Beah の "A Long Way Gone"

アレックス賞の新しい受賞作の中でペイパーバック版を見つけたのでさっそく読んでみた。Ishamael Beah の "A Long Way Gone" である。A Long Way Gone: The True Story of a Child Soldier作者: Ishmael Beah出版社/メーカー: HarperPerennial発売日: 2008/0…

Chimamanda Ngozi Adichie の "Half of a Yellow Sun"

前々回からの流れで、Adichie の "Half of a Yellow Sun" に触れざるを得なくなった。以下は、オレンジ賞の発表前に書いたレビューである。Half of a Yellow Sun作者:Ngozi Adichie, ChimamandaHarper Collins Publ. UKAmazon[☆☆☆☆★] 06年度の全米批評家協会…