ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Kingsley Amis の “Lucky Jim”(2)

先週末、ドラ娘の発案で『ブラック・ショーマン』を見にいった。封切り二日目とあって館内は盛況。娘も家人も原作を読んでいて、それでもおもしろかったという。 ぼくもおおいに楽しんだが、犯人がしぼりやすく、以前やはり映画館で見た『マスカレード・ホテ…

Edith Wharton の“The Age of Innocence”(2)

ひさしぶりにブッカー賞の下馬評をチェックすると、前回からほとんど変化していなかった。 1. Seascraper by Benjamin Wood(or 2 ☆☆☆★★) 2. Endling by Maria Reva(or 1) 3. The Loneliness of Sonia and Sunny by Kiran Desai 4. Audition by Katie Kit…

Benjamin Wood の “Seascraper”(1)

先日、今年のブッカー賞一次候補作、Benjamin Wood の "Seascraper"(2025)を読了。Benjamin Wood(1981 - )はイギリスの作家で、2012年のコスタ賞新人賞部門最終候補作 "The Bellwether Revivals"(未読)でデビュー。表題作は第5作である。諸般の事情で…

Theodor Storm の “Immensee and Other Stories”(1)

ドイツの小説家 Theodor Storm(1817 - 1888)の中短編集、"Immensee and Other Stories" を読了。収録されているのは "Immensee"(1849, 英訳1966)、"Viola Tricolor"(1874, 英訳1956)、"Curator Carsten"(1877, 英訳1956)の三編で、本書は2025年に出…

Yael van der Wouden の “The Safekeep”(2)

ああ、やっぱり! 日本の場外馬券場でブッカー賞レースの馬券を買ったせいか、"Universality" が到着予定日から一週間すぎてもまだ届かない。"Endling" だって発送通知が遅すぎる。 これが本場の場内発売所だと、値段はうんと張るものの、早く確実に届くメリ…

Katie Kitamura の “Audition”(1)

きのう、今年のブッカー賞一次候補作、Katie Kitamura の "Audition"(2025)を読了。Katie Kitamura(1979 - )はアメリカ生まれの日系作家で、本書は彼女の長編第5作。さっそくレビューを書いておこう。 Audition: A Novel 作者:Kitamura, Katie Riverhea…

Manuel Puig の “Kiss of the Spider Woman”(3)

「あら、おじいちゃん、おひさしぶり。ブッカー賞レースの下馬評どうなってる?」「先頭グループは相変わらずだけど、3番人気以下が抜きつ抜かれつだね」 1. Endling by Maria Reva 2. Seascraper by Benjamin Wood 3. The Loneliness of Sonia and Sunny b…

Manuel Puig の “Kiss of the Spider Woman”(2)

「さてまず、最新のブッカー賞レースの下馬評を紹介しておくよ」 1. Endling by Maria Reva 2. The Loneliness of Sonia and Sunny by Kiran Desai(or 4) 3. Seascraper by Benjamin Wood(or 2) 4. Universality by Natasha Brown(or 3) 5. Audition b…

Alice Walker の “The Color Purple”(1)

先日、1983年のピューリツァー賞受賞作、Alice Walker の "The Color Purple"(1982)を読了。Alice Walker(1944 - )は黒人の女性作家として初めて小説で同賞を獲得。 本書が呼んだ社会的反響は大きく、1985年、スティーヴン・スピルバーグ監督によって映…

Elizabeth Strout の "Tell Me Everything" (2)

きょうもまずブッカー賞レースの実況中継から。スタート直後は抜きつ抜かれつ混戦模様だったが、第1コーナーを過ぎたあたりで集団が二分されつつあるようだ。そのうち上位グループはつぎのとおり。(or n)は別の集計結果。 1. The Loneliness of Sonia and…

Kingsley Amis の “Lucky Jim”(1)

Kingsley Amis(1922 - 1995)の処女作 "Lucky Jim"(1954)を読了。いわゆる「怒れる若者たち」の代表作のひとつで、1957年にイギリスで映画化(日本未公開)。1967年、1982年、2003年にそれぞれ連続テレビドラマ化され、2003年版『ラッキー・ジム』は日本…

Charles Dickens の “Bleak House”(3)

きょうはまず、最新のブッカー賞の下馬評(↑↓)を紹介しておこう。前回からかなり変化している。(集計方法のちがいで、別結果あり)。 1. Endling by Maria Reva(↓3) 2. The Land in Winter by Andrew Miller(↑1) 3. Flashlight by Susan Choi(↓7) 4.…

2025年ブッカー賞ロングリスト発表

ロンドン時間で昨日29日、今年のブッカー賞ロングリストが発表された。現地ファンによる下馬評はつぎのとおり(集計方法のちがいで、2~7位は移動あり)。 1. Endling by Maria Reva 2. The Land in Winter by Andrew Miller 3. Flashlight by Susan Choi 4.…

Edith Wharton の “The Age of Innocence”(1)

きのう、Edith Wharton(1862 - 1937)の "The Age of Innocence"(1920)を読了。周知のとおり、本書は1921年、第4回ピューリツァー賞の受賞作で(Wharton は女性として初受賞)、1924年にサイレント映画化。1993年にはマーティン・スコセッシ監督によって…

Charles Dickens の “Bleak House”(2)

ブッカー賞ロングリストの発表が目前に迫り、現地ファン投票の集計結果が公表された。 Nesting by Roisin O’Donnell– 58 votes The Book of Records by Madeleine Thien – 52 votes Audition by Katie Kitamura– 50 votes Our Evenings by Alan Hollinghurst…

Yael van der Wouden の “The Safekeep”(1)

今年の女性小説賞受賞作、Yael van der Wouden の "The Safekeep"(2024)を読了。Yael Van Der Wouden(1987 - )はオランダの作家で、本書は彼女の処女作。 また本書は昨年のブッカー賞最終候補作でもあったが、年末に同賞関連のランキングを公表したさい…

Banu Mushutaq の “Heart Lamp”(2)

今年もこの季節、例によってブッカー賞の動向をチェックしている。いまはレース前につき、各馬ともパドックを周回中だが、ほんとの競馬とちがって出走馬はまだ決まっていない。 ぼくの推計だと、これまで50人くらいの現地ファンが予想リストを公表。東洋の某…

Manuel Puig の “Kiss of the Spider Woman”(1)

アルゼンチンの作家 Manuel Puig(1932 - 1990)の "Kiss of the Spider Woman"(1976, 英訳1979)を読了。周知のとおり本書は世界的ベストセラーで、のちに作者自身の手で戯曲化。1985年にはエクトール・バベンコ監督により映画化され、日本でも1986年に公…

Elizabeth Taylor の “Mrs Palfrey at the Claremont”(4)

ブッカー賞ロングリストの発表日が近づいてきた(今月29日)。先月初め以来、いろいろな現地ファンがいろいろな予想リストを公表。いまではYouTubeでも情報が得られるようになっている。 例年、そうした情報を集計するファンもいて助かるのだけど、それはま…

Elizabeth Strout の “Tell Me Everything”(1)

今年の女性小説賞最終候補作、Elizabeth Strout の "Tell Me Everything"(2024)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Tell Me Everything: Oprah's Book Club: A Novel (English Edition) 作者:Strout, Elizabeth Random House Amazon [☆☆☆★]「病める…

Elizabeth Taylor の “Mrs Palfrey at the Claremont”(3)

今週はめずらしく三回も外出。ジム二回のほか、『ミッション:インポッシブル / ファイナル・レコニング』を見にいった。こんども「そんなん、ありえへんやろ」というアクション・シーンの連続で、トム・クルーズの生還シーンなど吹きだしそうになったけど、…

Elizabeth Taylor の “Mrs Palfrey at the Claremont”(2)

"Bleak House" を読みきった日の夜、寝床のなかで阿川弘之の『山本五十六』も読みおえた。こちらはほぼ五ヵ月がかり。去る二月、五十六が開戦時に乗艦していた戦艦長門のプラモを製作したのがきっかけで読みはじめた。 これで阿川の提督三部作をぜんぶ読んだ…

Charles Dickens の “Bleak House”(1)

一昨日やっと、"Bleak House"(1853)を読了! ご存じ Dickens の超大作である。なんだかヒマラヤ八千メートル峰のひとつの登頂に成功したような気分、といえば大げさだけど、(想像だが)ちょっとそれに近い。 昨年の暮れ、ある友人に出した年賀状で、「今…

Banu Mushutaq の “Heart Lamp”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞受賞作、Banu Mushutaq の "Heart Lamp"(2025)を読了。Banu Mushutaq(1948 - )は南インド四州の一つ、カルナータカ州出身の作家で、活動家、弁護士でもある。本書は全12話の短編集で、原語はカルナータカ州の公用語カンナダ…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(4)

外出時、バスの友をどうしようか迷っていたら、新刊ペイパーバックが二冊届いた。今年の国際ブッカー賞受賞作 "Heart Lamp"(2025)と、同じく今年の女性小説賞最終候補作 "Tell Me Everything"(2024)である。 後者はご存じ Elizabeth Strout の作品で、現…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(3)

ちょうど一週間前、ある現地ファンのこんなコメントを見かけた。Not really a prediction but a discussion starter to mark 1st June and the official opening of Longlist speculation season. 彼が公開したリストはこうだ。 “We Pretty Pieces of Flesh”…

Elizabeth Taylor の “Mrs Palfrey at the Claremont”(1)

1971年のブッカー賞最終候補作、Elizabeth Taylor の "Mrs Palfrey at the Claremont"(1971)を読了。この Elizabeth Taylor(1912 - 1975)はイギリスの女流作家で、同名の女優とは別人。本書は2005年、ダン・アイアランド監督により映画化され、日本でも2…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(2)

先日、小用で外出。何日かぶりに "Mrs Palfrey at the Claremont"(1971)をバスのなかで読むことができた。相変わらず面白い。 Mrs Palfrey は老婦人で、夫はとうに他界。スコットランドに住む娘の Elizabeth と別れ、ロンドンの二流ホテル the Clarement …

Muriel Spark の “The Prime of Miss Jean Brodie”(3)

あああ、空振り三振! 去る20日、今年の国際ブッカー賞が発表されたが、結果は下馬評第四位の "Heart Lamp" (2024)が受賞。ぼくが入手していた上位三冊はあえなく落選してしまった。 なんの予想でもはずれるのは世の常だけど、イヤな予感はあった。先日レ…

Vincent Delecroix の “Small Boat”(1)

きのう、今年の国際ブッカー賞最終候補作、Vincent Delecroix の "Small Boat"(2023, 英訳2024)を読了。Vincent Delecroix(1969 - )はフランスの哲学者、作家で、"Small Boat"(原題 "Naufrage")は2023年のゴンクール賞一次候補作でもあった。さっそく…