ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Alan Garner の “Treacle Walker”(3)

おとといレビューをアップした "Oh William!" で、今年のブッカー賞最終候補作を読んだのは4冊め。そこで暫定ランキングもつぎのように変更した。1.2. Small Things Like These(☆☆☆★★★)3. The Trees(☆☆☆★)4. 5. Treacle Walker(☆☆☆★)6. Oh William!(…

Elizabeth Strout の “Oh William!”(1)

二兎を追う者は一兎をも得ず。2冊同時に読んでいると、わかりきった話だが、どちらもふだん以上にスローペース。それでもなんとか、きのう今年のブッカー賞最終候補作、Elizabeth Strout の "Oh William!" のほうをまず読みおえた。女流作家 Lucy Barton シ…

Alan Garner の “Treacle Walker”(2)

Isabel Allende の "The House of the Spirits" をボチボチ読んでいたら、Elizabeth Strout の "Oh William!" が到着予定日よりずっと早く届いてしまった。試読したところ、どうもイマイチ。Allende のほうは相変わらずおもしろい。印象が希薄になるのがいや…

Robert Walser の “Jakob von Gunten”(2)

スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)のことは、レビューのイントロにも書いたとおり、もう10年ほど前だったか、いまは亡き優秀な英文学徒T君に教えてもらった。「Walser はいいですよ」という彼のことばは、いまだにはっきり耳にのこっている。 どこ…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(2)

このところ、ペルーの著名な作家 Isabel Allende の "The House of the Spirits"(1982, 英訳1985)をボチボチ読んでいる。未読の今年のブッカー賞候補作を入手するまでの場つなぎに(途中で乗り換える可能性あり)、と思って取りかかった。 開幕から物語性…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(3)

まったりペースながら海外の小説を読んでいると、おそらく日本の現代文学ではさほど扱われていないのではと思えるような問題について考えさせられ、しかもそれぞれの問題に関連性のあることが、たまにある。coincidence の妙というべきか。 不可解なことにブ…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(2)

これは名作巡礼の一環で取りかかった。Tayeb Salih(1929 – 2009)がスーダンの作家で、本書(1966, 英訳1969)が In 2001 it was selected by a panel of Arab writers and critics as the most important Arab novel of the twentieth century. と知ったの…

Joshua Cohen の “The Netanyahus”(2)

なんでやねん! "The Colony" がブッカー賞ショートリスト落選とは! 下馬評ではロングリストの発表前から1番人気だっただけに、ぼく同様、この結果にびっくりした現地ファンも多かったようだ。いったい、なにが起きたのだろうか。 とそう疑いたくなるのは…

Percival Everett の “The Trees”(1)

今年のブッカー賞候補作、Percival Everett の "The Trees"(2021)を読了。Everett (1956–)は1983年に "Suder" でデビュー(未読)。短編集もふくめ20冊以上の作品を発表しているヴェテラン作家で、南カリフォルニア大学の教授でもあるそうだ。さっそくレ…

Audrey Magee の “The Colony”(4)

今年のブッカー賞ショートリストの発表が迫ってきた(ロンドン時間今月6日)。現地ファンの下馬評では、相変わらず "The Colony"(☆☆☆☆)が1番人気。ロングリスト発表前からの勢いがずっとつづいている。 ほかの候補作のうち、ぼくがこれまで読んだのは、"…

Audrey Magee の “The Colony”(3)

何回か前にも書いたが、この半年、ほとんどなにを読んでもウクライナ侵攻問題が頭にちらついてくる。とりわけ最近の作品がそうで、たとえば、おとといレビューをアップした "Treacle Walker"(2021) の世界は「謎と矛盾、パラドックスに満ちたカオスそのも…

Alan Garner の “Treacle Walker”(1)

きのう Alan Garner の "Treacle Walker"(2021)を読了。Garner は周知のとおりイギリスのファンタジー・児童文学作家で、代表作は "The Weirdstone of Brisingamen"『ブリジンガメンの魔法の宝石』(1960)や、"The Owl Service"『ふくろう模様の皿』(196…

Robert Walser の “Jakob von Gunten”(1)

きのう、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)をやっと読了。Walser のことは、いまから10年ほど前、優秀な英文学徒T君に教えてもらった。以下のレビューは、彼の墓前に捧げるものである。 Jakob von Gunten …

Audrey Magee の “The Colony”(2)

きょうから20日ぶりにジム通い。思ったより走れ、筋トレもいつものメニューをこなせた。 それはいいのだけど、この1週間は長旅の疲れのせいか、ふだん以上にぐうたら生活。身体だけでなく、頭のほうもそろそろ動かさないと。 そのぼんやりした頭で読んでい…

José Saramago の “Blindness”(3)

おとといの夕方、旅行から帰ってきた。伊勢志摩~広島~宇和島をめぐる6泊7日の〈シマつながり〉の旅で、終点だけ観光地ではないがぼくの郷里。広島で乗ったタクシーの運ちゃんが野球ファンで、元メジャーリーガーの岩村が宇和島東出身だということも知っ…

Claire Keegan の “Small Things Like These”(1)

きのう "Season of Migration to the North" のレビューをアップしたあと、スイスの作家 Robert Walser(1878 – 1956)の "Jakob von Gunten"(1909, 英訳1969)を寝床のなかで読んでいたら、三軒先のドラ息子の家に本が届いたという知らせ。アマゾンUKに速…

Tayeb Salih の “Season of Migration to the North”(1)

ゆうべ、スーダンの作家 Tayeb Salih(1929 – 2009)の "Season of Migration to the North"(1966, 英訳1969)を読了。本書は2001年、アラブ諸国の文学関係者により、「20世紀にアラビア語で書かれた最も重要な小説」に選定されている。4回目のコロナワク…

José Saramago の “Blindness”(2)

きょうの午前中、4回目のコロナワクチン接種を受けた。2・3回目のときの副反応からして、今回も8度以上の熱が出そう。なんだかもう頭がボンヤリする。ひどくならないうちに手っとりばやく記事を書いておこう。 表題作は以前から、タイトルどおり、「ある…

Joshua Cohen の “The Netanyahus”(1)

今年のピューリツァー賞受賞作、Joshua Cohen の "The Netanyahus"(2021)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Netanyahus: An Account of a Minor and Ultimately Even Negligible Episode in the History of a Very Famous Family 作者:Cohen, …

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(2)

きょうは近所の夏祭り。盆踊りはなかったけど、夕方、出店の前は長蛇の列だったらしい。けれど三軒先に住むドラ息子がコロナに感染したので、初孫のショウちゃんは濃厚接触者。お祭りに連れていくわけにもいかず、ぼくは家で一杯やりながら Amazon Prime で…

Chinua Achebe の “Things Fall Apart”(2)

ロンドン時間26日、ブッカー賞のロングリストが発表された。いつもながら現地ファンのヒートアップぶりには感心させられる。「あと6時間で発表だ。ワクワクしてる」「そうだ、そうだ」なんていうファンたちの声からして、日本でもアメリカでも、発表前から…

Knut Hamsun の “Hunger”(2)

ブッカー賞のロングリスト発表が目前に迫ってきた(ロンドン時間26日)。いまチェックすると、現地ファンの下馬評で1番人気は相変わらず "The Colony"。ぼくもいたく感動しただけに(☆☆☆☆)、入選を祈るばかりだ。 気になるのは、今年の(対象は昨年度)全…

Audrey Magee の “The Colony”(1)

きのう、Audrey Magee の "The Colony"(2022)を読了。既報のとおり今年の George Orwell Prize の最終候補作だが、いまチェックすると、もっかイギリス現地ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト入選が最有力視されている。Audrey Magee はア…

Juan Rulfo の “Pedro Páramo”(2)

待ち望んでいた Audrey Magee の "The Colony"(2022)がやっと届き、さっそく着手。なかなか面白い。 これは2019年に創設された(前身あり) George Orwell Prize の今年の最終候補作だが、イギリスの文学ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリスト…

José Saramago の “Blindness”(1)

ポルトガルのノーベル賞作家 José Saramago(1922 – 2010)の "Blindness"(1995, 英訳1997)を読了。実際に使用したテクストは Harvill Press 版。さっそくレビューを書いておこう。 Blindness 作者:Saramago, José Vintage Classics Amazon [☆☆☆☆★] 破滅テ…

William Faulkner の “The Unvanquished”(3)

また大事件が起きた。コロナ渦にはじまり、ウクライナ侵攻、そして今回の暗殺と、この数年、それまでほとんど予想されなかったような重大事件が連続している。三つの事件にそれぞれ関連はないが、coincidences にはちがいない。 過去にも、そういえばあのと…

William Faulkner の “The Unvanquished”(2)

注文している今年の〈ブッカー賞ロングリスト候補作〉"The Colony" がまだ届かない。そこで引きつづき、同書の落手直前にタイミングよく片づけば、と Saramago の "Blindness" をボチボチ読んでいる。相変わらず面白い。 ひとがなぜか突然失明する伝染性の奇…

Patrick Modiano の既読作品一覧とゴヒイキ作品ベスト3

前回採りあげた "The Occupation Trilogy" で、架蔵している Modiano 作品はすべて読了。ほかに何冊か気になるものはあるが、いますぐ読みたいほどではない。そこで既読作品一覧をアップするとともに、My Favorite 3 を選んでみることにした。 その前にまず…

Patrick Modiano の “The Occupation Trilogy”

今年もブッカー賞の季節がやってきた。ロングリストの発表が迫り(ロンドン時間今月26日)、現地ファンのあいだでは例年どおり、いろいろな予想が飛びかっている。ぼくもじつは1ヵ月前くらいから下馬評をチラ見しているのだが、いまのところまだ、大本命と…

Dino Buzzati の “The Tartar Steppe”(1)

イタリアの作家 Dino Buzzati(1906 – 1972)の "The Tartar Steppe"(1940, 英訳1952)を読了。ヴァレリオ・ズルリーニ監督の遺作『タタール人の砂漠』(1976)の原作である。さっそくレビューを書いておこう。 The Tartar Steppe (Canons Book 90) (Englis…