ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

女性小説賞

オレンジ賞およびベイリーズ賞時代の作品もふくみます

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(5)

Siân Hughes の "Pearl"(2023)を読んでいる。なかなかおもしろい。 手に取ったきっかけは、先月初め The Mookse and the Gripes のブッカー賞関連のスレッドで、イギリス人の文学ファン Paul Fulcher 氏のこんなコメントを目にしたからだ。Well I have rea…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(4)

前々回、「細部がよく書けている作品に駄作はほとんどありません」と大見得を切ったばかりなのに、あれま、"Trust"(2022)にはガッカリ。さすがに駄作とはいわないけれど、秀作になりそこねた水準作だった(☆☆☆★)。 一方、表題作はといえば☆☆☆★★。二冊同時…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(3)

旅行前、もう二週間近く前からのどが少し痛く、きのうの午後には微熱も。きょう桔梗湯を処方してもらったが、かかりつけの先生によると、一日ぶん三袋とも小さな魔法瓶(小型ペットボトル)にいれて水または白湯で溶かし、よく混ぜたものを少しずつ、うがい…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(2)

行きはよいよい、帰りはこわい。ゆうべ、やっとのことで九州・四国旅行から帰ってきた。 羽田発博多行きの飛行機に乗ったのが10日。台風6号の影響で条件つき飛行ということだったが、ぶじ着陸。博多市内の有名ラーメン店に直行し、長蛇の列にならんで待って…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(6)

前回(5)からずいぶん間があいてしまった。簡単におさらいをしておこう。日系アメリカ人の少年 Benny は父親 Kenji の死後、いろいろな「ものの声」が聴こえるようになり、ある夜、図書館の製本室で the Book にこう告げられる。... you encountered all t…

Barbara Kingsolver の “Demon Copperhead”(1)

諸般の事情で長時間の読書、ブログとも夏休みだった。年金生活といえば毎日が夏休みのようなものだけど、それでもあれこれ雑用に追われ、けっこう忙しい。きのうもジムで走っていたら、三番めの孫、アカリちゃんをちょっと見ていて、という連絡が入り、予定…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(5)

先週末の夜、横浜野毛のジャズスポット〈DOLPHY〉でもよおされた、野力奏一(P)と本多俊之(S)のコンサートを聴きにいった。 ジャズの生演奏を聴くのは二回目。いつだったか、東京の〈BLUE NOTE〉でナベサダを聴いて以来だ。二回ともドラ娘の企画で、よろ…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(4)

きのう、いよいよ腰をいれて "Demon Copperhead"(2022)を読もうとした矢先、まさかの雪隠づめ。ちょっと用を足すつもりが、なんと三時間以上もかかってようやく脱出できた。 この「雪隠づめ」ということば、三軒先に住んでいるドラ息子夫婦にはピンとこな…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(3)

Diana Krall の "Wallflower"(2015)にハマっている。 今月から歌手のアルファベット順にジャズボーカルを聴きはじめたのだけど(たしか三巡目)、Billie Holiday, Carmen McRae などやっぱりいいなあと思っているうちに Diana Krall。昔から好きな歌手だが…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(2)

まったくノリがわるいまま、おそらく今季最大の話題作 "Demon Copperhead"(2022)を読みはじめた。刊行年からして、今年の全米批評家協会賞の対象だったはずだが、最終候補作にもなっていない。だから、というわけではないけれど、「ノリがわるい」のもむべ…

Ruth Ozeki の “The Book of Form & Emptiness”(1)

2022年の女性小説賞受賞作、Ruth Ozeki の "The Book of Form & Emptiness"(2021)を読了。彼女がメジャーな賞レースで脚光を浴びたのは、2013年のブッカー賞最終候補作、"A Tale for the Time Being"(2013 ☆☆☆★★★)以来だろうか。さっそくレビューを書い…

Sarah Waters の “Fingersmith”(2)

年明けから諸般の事情で冬眠中だったが、そろそろ頭を働かさないとボケがひどくなってしまう。数日前から Saraha Waters の "Affinity"(1999)をボチボチ読んでいる。なかなか面白い。 これは周知のとおり既訳もあり、版元はあの推理文庫。だからたぶんミス…

Sarah Waters の “Fingersmith”(1)

きのう、2002年のブッカー賞およびオレンジ賞(現女性小説賞)最終候補作、Sarah Waters のご存じ "Fingersmith" をやっと読了。途中、諸般の事情で何日も中断したため、いつにもまして、まともなレビューが書けそうもない。さてどうなりますか。 Fingersmit…

Yaa Gyasi の “Transcendent Kingdom”(2)

Yaa Gyasi の作品は初読かと思ったら、5年前の夏、処女作の "Homegoing"(2016)を読んでいた。 いま振り返ると、当時はちょうどブッカー賞ロングリスト発表の直前ということで、現地ファンのあいだで入選を有力視されていた同書に興味をおぼえたようだ。レ…

Patricia Lockwood の “No One Is Talking About This”(2)

これは今年の女性小説賞最終候補作だけど、じつは女性小説賞というのにはあまり興味がない。もう十年以上も昔の記事で紹介したことだが、当時のガーディアン紙に載った女流作家 A. S. Byatt のコメントを読んで、わが意を得たりと思ったものだ。The British …

Yaa Gyasi の “Transcendent Kingdom”(1)

ゆうべ、Yaa Gyasi の "Transcendent Kingdom"(2020)を読了。周知のとおり今年の女性小説賞最終候補作で、現地ファンの下馬評では2番人気だが、集計方法によっては1番人気にもなっている。また、気の早い同ファンのあいだでは、今年のブッカー賞ロングリ…

Patricia Lockwood の “No One Is Talking About This”(1)

今年の女性小説賞最終候補作、Patricia Lockwood の "No One Is Talking About This"(2021)を読了。もっか、現地イギリスのファンのあいだでは1番人気である。さっそくレビューを書いておこう。 (追記:本書は後日、今年のブッカー賞ロングリスに入選)…

Maggie O'Farrell の “Hamnet”(2)

今回も禁をやぶってハードカバー。Patricia Lockwood の "No One Is Talking About This"(2021)をボチボチ読んでいる。ご存じ今年の女性小説賞最終候補作で、本ブログのリンク先 the Mookse and the Gripes によると、もっか1番人気。英米アマゾンでの評…

Brit Bennet の “The Vanishing Half”(2)

今年の国際ブッカー賞最終候補作、Benjamín Labatut の "When We Cease to Understand the Word"(2020)を読んでいる。原題は "Un Verdor Terrible"(2019)。スペイン語からの英訳である。なかなか面白い。現地ファンの下馬評では1番人気のようだ。 カバ…

Maggie O'Farrell の “Hamnet”(1)

Maggie O'Farrell の "Hamnet"(2020)を読了。周知のとおり2020年の全米批評家協会賞ならびに女性小説賞の受賞作で、ニューヨーク・タイムズ紙が選んだ年間ベスト5小説のひとつでもある。さっそくレビューを書いておこう。 Hamnet: Winner of the Women's …

Brit Bennet の “The Vanishing Half”(1)

胃のほうは薬のおかげでだいぶ痛みが治まってきたのだけど、こんどはまた風邪をひいてしまい、まるで変声期のようなガラガラ声。微熱の一歩手前のような熱もある。コロナでないことを祈るばかりだ。 ともあれ、上の事情でボチボチ読んでいた Brit Bennet の …

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(3)

今回も大したことは書けそうにない。ぼくは本書を読むまで知らなかったが、16世紀前半、イングランドではペストが流行していたようだ。But now there are rumours of plague and sweating sickness. It is not wise to allow crowds in the street, or pack …

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(2)

その後、本書は今年の小説文学賞ショートリストに入選。下馬評では3番人気のようだ。ちなみに、1番人気は Maggie O'Farrell の "Hamnet"(2020 未読)。彼女の名前を見かけるのは、2006年の "The Vanishing Act of Esme Lennox"(☆☆☆)以来だ。 その下馬評…

Hilary Mantel の “The Mirror & The Light”(1)

ゆうべ、Hilary Mantel の最新作 "The Mirror & the Light"(2020)を読了。ご存じ Wolf Hall Trilogy の最終巻で、第1巻 "Wolf Hall"(2009 ☆☆☆☆★)、第2巻 "Bring up the Bodies"(2012 ☆☆☆★★)に引きつづき、Mantel 3度目のブッカー賞受賞なるか、と現…

"The Mirror & The Light" 雑感

先月アマゾンUKで注文したブルーレイ盤 "Ivan's Childhood" が、到着予定日を2週間も過ぎたというのにまだ届かない。On the way, but running late とのことだが、これも新型コロナウイルスの感染拡大の影響だろうか。 一方、ほぼ同時に頼んだ Hilary Mante…

Akwaeke Emezi の “Freshwater”(2)

世間は三連休だが、ぼくは例によって午前中は〈自宅残業〉。あしたもその日程です。そうしないと仕事が間に合わない。つくづく因果な商売だけど、それでもゆうべは、有楽町の超高級ホテルでもよおされた、勤務先に関係のあるパーティーに出席。無職なら口に…

Akwaeke Emezi の “Freshwater”(1)

このところ、テンプながら復職した勤務先が超繁忙期。おかげで、ただでさえ遅読症なのに文字どおりカタツムリくんのペースだったが、それでもゆうべ、やっとのことで Akwaeke Emezi の "Freshwater"(2018)を読みおえた。今年の Women's Prize for Fiction …

Kamila Shamsie の “Home Fire”(2)

きのうも大雨関連のニュースを見ていたら、愛媛県宇和島市からの中継があった。吉田町では断水が続き、ミカン栽培も大打撃を受けているらしい。 また宇和島市や西予市に住む親戚、友人たちの話によると、吉田町は陸の孤島と化している。国道は寸断され、JR…

Kamila Shamsie の “Home Fire”(1)

今年の女性小説賞(前ベイリーズ賞、旧オレンジ賞)受賞作、Kamila Shamsie の "Home Fire"(2017)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Home Fire: WINNER OF THE WOMEN'S PRIZE FOR FICTION 2018 (High/Low)作者:Shamsie, KamilaBloomsbury UKAmazon[…

Jesmyn Ward の “Sing, Unburied, Sing”(2)と、ニューヨーク・タイムズ紙選2017年ベスト5小説

まず表題作の続きから。前々回ふれたように、ぼくは Jesmyn Ward の旧作 "Salvage the Bones" が2011年の全米図書賞受賞作であることも、自分がそのレビューを書いたこともすっかり忘れていた。そこで、一体どんな作品だったのだろうと、当のレビューを読み…