ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

フォークナー

William Faulkner の “The Unvanquished”(3)

また大事件が起きた。コロナ渦にはじまり、ウクライナ侵攻、そして今回の暗殺と、この数年、それまでほとんど予想されなかったような重大事件が連続している。三つの事件にそれぞれ関連はないが、coincidences にはちがいない。 過去にも、そういえばあのと…

William Faulkner の “The Unvanquished”(2)

注文している今年の〈ブッカー賞ロングリスト候補作〉"The Colony" がまだ届かない。そこで引きつづき、同書の落手直前にタイミングよく片づけば、と Saramago の "Blindness" をボチボチ読んでいる。相変わらず面白い。 ひとがなぜか突然失明する伝染性の奇…

William Faulkner の “The Unvanquished”(1)

きのう、William Faulkner の "The Unvanquished"(1938)を読了。ミシシッピ州の架空の町ヨクナパトーファ郡ジェファーソンを舞台とするヨクナパトーファ・サーガのひとつで、7つの連作短編をまとめた作品である。さっそくレビューを書いておこう。(「な…

William Faulkner の “Requiem for a Nun” (2)

落ち穂拾いをしないといけない本がずいぶんたまってしまった。記憶や感動が薄れないうちに早く補足したほうがいいに決まってるのだけど、毎度へたくそなレビューもどきでも、じつはでっち上げるのに相当時間がかかり、昔とちがって、アップにこぎ着けた時点…

William Faulkner の “Flags in the Dust”(2)

オーストリアの女流作家 Veza Canetti(1897 - 1963)の "The Tortoises"(1939)をボチボチ読んでいる。彼女の夫はノーベル賞作家の Elias Canetti(1905 - 1994)で、『新潮世界文学辞典』にも記載されているが、Veza のほうは未掲載。一般には、埋もれた…

William Faulkner の “Requiem for a Nun” (1)

William Faulkner の "Requiem for a Nun"(1951)を読了。周知のとおり "Sanctuary"(1931)の続編で、前作から8年後の物語という設定になっている。さっそくレビューを書いておこう。(「なにから読むか、フォークナー」に転載)。 Requiem for a Nun (Vi…

William Faulkner の “Flags in the Dust”(1)

きのう、William Faulkner の "Flags in the Dust"(1929)を読了。以下のレビューは、「なにから読むか、フォークナー」にも転載しました。 Flags in the Dust (Vintage International) 作者:Faulkner, William Vintage Amazon [☆☆☆★★★] ミシシッピ州の架空…

William Faulkner の “The Reivers”(2)

いまでこそ、「なにから読むか、フォークナー」などと気どったタイトルの記事を本ブログに載せているが、じつは Faulkner を英語で読むようになったのは2000年の夏から。そう遠い昔ではない。 高校時代には翻訳で『八月の光』その他を読んでいたものの、大学…

William Faulkner の “The Reivers”(1)

William Faulkner の最後の長編 "The Reivers"(1962)を読了。Faulkner は本書の刊行後に他界したが、翌1963年、本書で "A Fable"(1954 ☆☆☆★★★)以来二度目のピューリツァー賞受賞。1969年には、"The Reivers" はスティーヴ・マックィーン主演で映画化され…

William Faulkner の “A Fable”(4)

そろそろまじめに落ち穂拾いをしておこう。第一次大戦の末期、西部戦線で仏軍連隊の伍長が突撃命令に従わなかったことをきっかけに奇妙な停戦がはじまり、老将軍が伍長を尋問。将軍は、伍長が全軍に及ぼす重大な影響力を認め、その立場を失墜させるべく戦場…

William Faulkner の “A Fable”(3)

きのう、恥ずかしながらロジェ・ヴァディム監督の『危険な関係』を初めて観た。まさにキケンな映画ですな。不倫ゲームがやがてゲームでなくなるなか、遊びにしろ本気にしろ、ジャンヌ・モローはどちらもみごとに演じ切っている。こんなに芸域の広い女優は、…

William Faulkner の “A Fable”(2)

その後、腰の違和感はだいぶ薄らいできたものの、曾野綾子の言うとおり「すべての変化は予兆」。将来ほんとうに恐ろしいことになるかもしれない。そうならないよう、毎日ストレッチに励んでいる。 腰が気になり読書から遠ざかっているあいだ、これもやはり予…

William Faulkner の “A Fable”(1)

ゆうべ、William Faulkner の "A Fable"(1954)を読了。1955年のピューリツァー賞および全米図書賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。 A Fable (Vintage International) (English Edition) 作者:Faulkner, William 発売日: 2011/05/18 メディ…

"A Fable" 雑感

諸般の事情でしばらく読書から遠ざかっていた。まず、腰を痛めた。原因はたぶん掃除のしすぎだろうが、ネットで調べると恐ろしいことが書いてある。とりあえずストレッチに励んだ結果、さいわい、いまではだいぶよくなったものの、まだ違和感がのこっている。…

なにから読むか、フォークナー

昨年末に読みはじめた Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)は、切りのいいところへ進むまでにあえなく大休止。たまたま先月、長年の宿題のひとつ、スノープス三部作をやっと片づけたばかりなので、年始めの記事は「なにから読むか、フォークナー」。 …

William Faulkner の “The Town”(2)と “The Mansion”(2)

きのうの夕方、家の門に松飾りを取りつけたところで年末の雑用が終了。それまでずっと家の内外の掃除や買い物などで忙しかった。ほかにもジムに通ったり、近所に住んでいる初孫をダッコしたり、もっぱら身体を動かすことばかり。しばらく活字から遠ざかって…

William Faulkner の “The Hamlet”(2)

Evelyn Waugh の "Sword of Honour"(1965)をボチボチ読んでいる。周知のとおり、これは "Men at Arms"(1952)、"Officers and Gentlemen"(1955)、"Unconditional Surrender"(1961)という三部作が、上のタイトルのもとに合冊されたものだ。 ぼくとして…

William Faulkner の “The Mansion”(1)とスノープス三部作

きのう、フォークナーの "The Mansion"(1959)をやっと読了。ご存じスノープス三部作の最終巻である。 この三部作はフォークナーの晩年を代表する高峰群であり、今回の縦走により、またひとつ長年の宿題を片づけることができた。なんだか、ちょっぴり三浦雄…

"The Mansion" 雑感(2)

本書は登場人物の名前を冠した三章から成り、きょうはジムに出かける前、やっと最終章 'Flem' に突入。フォークナーにしてはやはり読みやすい。 余裕のできたところでフォークナー英語のむずかしさについて、こんどは文法レベルでコメントしておこう。大昔、…

"The Mansion" 雑感(1)

ゆうべ愛媛の田舎から帰ってきた。向こうにいたのは実質一日、日曜日だけ。あわただしい帰省だった。 だから、どうせ読めないだろうと思いつつ、フォークナーの "The Mansion"(1959)をバッグに詰め込んだが、飛行機やバスの中で意外にも先へ進むことができ…

William Faulkner の “The Town”(1)

このところボチボチ読んでいた Faulkner の "The Town"(1957)をやっと読了。周知のとおり、the Snopes trilogy スノープス三部作の第二巻である。さっそくレビューを書いておこう。 The Town (Vintage International) 作者: William Faulkner 出版社/メー…

William Faulkner の “The Hamlet”(1)

ああ、やっぱりヤマカンどおり、今年の全米図書賞は Sigrid Nunez の "The Friend" に決まりましたね! しかし当面、読書予定はけっこう詰まっている。とりあえず、来年2月に出るというペイパーバック版を待つことにしよう。 さて、このところ体調不良につ…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(2)

今日から D. H. Lawrence の "Aaron's Rod" を読みだしたらすっかりハマってしまい、もはや頭はロレンス・モード。しかし忘れないうちに、フォークナーの感想の続きを書いておこう。 テーマに関しては昨日書いたとおりだが、"Intruder in the Dust" の面白さ…

William Faulkner の “Intruder in the Dust”(1)

William Faulkner の "Intruder in the Dust" をやっと読了。これほどの難物は久しぶりだった。 追記:本書は1949年に映画化されましたが、日本では未公開のようです。Intruder in the Dust (Vintage International)作者:Faulkner, WilliamVintageAmazon[☆☆☆…

“Intruder in the Dust” におけるフォークナー英語の難しさ

フォークナーの "Intruder in the Dust" をようやく半分過ぎまで読みおえたところだが、いやはや「老脳」にはまったくしんどい。その英語の難しさについて気づいたことをいくつか書いておこう。 まずフォークナーに限らず、一般的に言えることだが、最初はど…

William Faulkner の “The Wild Palms”

3年ぶりにフォークナーを読みはじめたところだが、学力不足の上にボケ気味のため、なかなか進まない。まったく歳は取りたくないもんだ、と実感している。そこで今日は、3年前に読んだフォークナーの『野性の棕櫚』のレビュー(アマゾンに投稿して削除した…