ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ノーベル文学賞

José Saramago の “Blindness”(3)

おとといの夕方、旅行から帰ってきた。伊勢志摩~広島~宇和島をめぐる6泊7日の〈シマつながり〉の旅で、終点だけ観光地ではないがぼくの郷里。広島で乗ったタクシーの運ちゃんが野球ファンで、元メジャーリーガーの岩村が宇和島東出身だということも知っ…

José Saramago の “Blindness”(2)

きょうの午前中、4回目のコロナワクチン接種を受けた。2・3回目のときの副反応からして、今回も8度以上の熱が出そう。なんだかもう頭がボンヤリする。ひどくならないうちに手っとりばやく記事を書いておこう。 表題作は以前から、タイトルどおり、「ある…

Knut Hamsun の “Hunger”(2)

ブッカー賞のロングリスト発表が目前に迫ってきた(ロンドン時間26日)。いまチェックすると、現地ファンの下馬評で1番人気は相変わらず "The Colony"。ぼくもいたく感動しただけに(☆☆☆☆)、入選を祈るばかりだ。 気になるのは、今年の(対象は昨年度)全…

José Saramago の “Blindness”(1)

ポルトガルのノーベル賞作家 José Saramago(1922 – 2010)の "Blindness"(1995, 英訳1997)を読了。実際に使用したテクストは Harvill Press 版。さっそくレビューを書いておこう。 Blindness 作者:Saramago, José Vintage Classics Amazon [☆☆☆☆★] 破滅テ…

William Faulkner の “The Unvanquished”(3)

また大事件が起きた。コロナ渦にはじまり、ウクライナ侵攻、そして今回の暗殺と、この数年、それまでほとんど予想されなかったような重大事件が連続している。三つの事件にそれぞれ関連はないが、coincidences にはちがいない。 過去にも、そういえばあのと…

William Faulkner の “The Unvanquished”(2)

注文している今年の〈ブッカー賞ロングリスト候補作〉"The Colony" がまだ届かない。そこで引きつづき、同書の落手直前にタイミングよく片づけば、と Saramago の "Blindness" をボチボチ読んでいる。相変わらず面白い。 ひとがなぜか突然失明する伝染性の奇…

Patrick Modiano の既読作品一覧とゴヒイキ作品ベスト3

前回採りあげた "The Occupation Trilogy" で、架蔵している Modiano 作品はすべて読了。ほかに何冊か気になるものはあるが、いますぐ読みたいほどではない。そこで既読作品一覧をアップするとともに、My Favorite 3 を選んでみることにした。 その前にまず…

Patrick Modiano の “The Occupation Trilogy”

今年もブッカー賞の季節がやってきた。ロングリストの発表が迫り(ロンドン時間今月26日)、現地ファンのあいだでは例年どおり、いろいろな予想が飛びかっている。ぼくもじつは1ヵ月前くらいから下馬評をチラ見しているのだが、いまのところまだ、大本命と…

Knut Hamsun の “Hunger”(1)

きのう本書 "Hunger"(1890, 英訳1996)の中間報告をアップしたら、そのあと、なんだか憑きものが落ちたようにどんどん進み、一気に読了。Knut Hamsun(1859 – 1952)は1920年にノーベル文学賞を受賞したノルウェーの作家である。はて、どんなレビューになり…

Patrick Modiano の “Invisible Ink” (2)

ノルウェーのノーベル賞作家 Knut Hamsun(1859 – 1952)の "Hunger"(1890, 英訳1996)をボチボチ読んでいる。薄い本なのだけど、いっこうに進まない。 英語そのものはごく標準的で読みやすい。取りかかったとたん、これなら楽勝と思ったくらい。だけど、そ…

Patrick Modiano の “So You Don't Get Lost in the Neighborhood”(2)

"Young Once"(1981)がとてもよかったので(☆☆☆★★★)、つづけてまた Modiano が読みたくなった。いわゆる〈モディアノ中毒〉の症状である。ぼくは重症ではないけど、軽く患っている。 そこで手に取ったのが表題作(2014)。これもよかった(☆☆☆★★)。Modian…

Patrick Modiano の “Young Once”(2)

表題作は、そういえば今年はまだ Modiano を読んでなかったな、と気づいて取りかかった。それからほぼ2ヵ月。ふだんは1週間もすれば粗筋を忘れてしまうこともあるのに、これは本にはさんでいる読書メモを見てすぐに思い出した。秀作でしょう。 冒頭の舞台…

William Faulkner の “The Unvanquished”(1)

きのう、William Faulkner の "The Unvanquished"(1938)を読了。ミシシッピ州の架空の町ヨクナパトーファ郡ジェファーソンを舞台とするヨクナパトーファ・サーガのひとつで、7つの連作短編をまとめた作品である。さっそくレビューを書いておこう。(「な…

Patrick Modiano の “Ring Roads”(1)

きのう、フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の第三作、"Ring Roads"(原作1972, 英訳1974)を読了。本書は "The Occupation Trilogy"(2015)の第三巻でもある。さっそくレビューを書いておこう。 The Occupation Trilogy: La Place De L'etoile / T…

William Faulkner の “Requiem for a Nun” (2)

落ち穂拾いをしないといけない本がずいぶんたまってしまった。記憶や感動が薄れないうちに早く補足したほうがいいに決まってるのだけど、毎度へたくそなレビューもどきでも、じつはでっち上げるのに相当時間がかかり、昔とちがって、アップにこぎ着けた時点…

Patrick Modiano の “The Night Watch”(1)

きのう、フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の第二作、"The Night Watch"(原作1969, 英訳1971)を読了。本書は "The Occupation Trilogy"(2015)の第二巻でもある。さっそくレビューを書いておこう。 The Occupation Trilogy: La Place De L'etoil…

Patrick Modiano の “La Place de l'Étoile”(1)

数日前、フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の第一作、"La Place de l'Étoile"(原作1968, 英訳2015)を読みおえたのだが、諸般の事情で、きょうまでレビューもどきをでっち上げる時間が取れなかった。 本書は2015年に刊行された "The Occupation Tr…

Patrick Modiano の “Invisible Ink” (1)

フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の近作、"Invisible Ink"(2019, 英訳2020)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Invisible Ink: A Novel (The Margellos World Republic of Letters) 作者:Modiano, Patrick Yale University Press Amazon …

William Faulkner の “Flags in the Dust”(2)

オーストリアの女流作家 Veza Canetti(1897 - 1963)の "The Tortoises"(1939)をボチボチ読んでいる。彼女の夫はノーベル賞作家の Elias Canetti(1905 - 1994)で、『新潮世界文学辞典』にも記載されているが、Veza のほうは未掲載。一般には、埋もれた…

Patrick Modiano の “So You Don't Get Lost in the Neighborhood”(1)

ゆうべ、フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の "So You Don't Get Lost in the Neighborhood"(原作2014, 英訳2015)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 So You Don't Get Lost In The Neighborhood (English Edition) 作者:Modiano, Patrick…

Patrick Modiano の “Young Once”(1)

ゆうべ、フランスのノーベル賞作家 Patrick Modiano の "Young Once"(原作1981, 英訳2016)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Young Once (New York Review Books Classics) (English Edition) 作者:Modiano, Patrick NYRB Classics Amazon [☆☆☆★★★]…

William Faulkner の “Requiem for a Nun” (1)

William Faulkner の "Requiem for a Nun"(1951)を読了。周知のとおり "Sanctuary"(1931)の続編で、前作から8年後の物語という設定になっている。さっそくレビューを書いておこう。(「なにから読むか、フォークナー」に転載)。 Requiem for a Nun (Vi…

Orhan Pamuk の “The Red-Haired Woman”(2)

(1)の結びで挙げたとおり、ぼくがいままで読んだ Orhan Pamuk の作品は7冊だが、そのうち1冊だけ再読するとしたら、やはり "My Name Is Red"(1998 ☆☆☆☆★)だろう。 ひとつには、同書がとても面白いミステリでもあるからだ。ふたつめに、犯人がだれか忘…

William Faulkner の “Flags in the Dust”(1)

きのう、William Faulkner の "Flags in the Dust"(1929)を読了。以下のレビューは、「なにから読むか、フォークナー」にも転載しました。 Flags in the Dust (Vintage International) 作者:Faulkner, William Vintage Amazon [☆☆☆★★★] ミシシッピ州の架空…

Orhan Pamuk の “Snow”(3)と既読作品一覧

今回のウクライナ侵攻では二次的な問題かもしれないが、トルコってフシギな国だな、と思ったひとも多いのではないか。実効性のほどはさておき、トルコがロシアとウクライナの仲介役となり、戦争当事国の外相会談がトルコでひらかれた。うん? なぜトルコなの…

Orhan Pamuk の “Snow”(2)

連日ウクライナ情勢の報道に接しているうち、過去記事で red or dead という問題にふれたことがあるのを思い出した。 red or dead とは、冷戦時代、西側の人びとが旧ソ連の核の脅威に屈して共産主義を選ぶか、それとも、自由と民主主義を守るために核戦争も…

Orhan Pamuk の “The Red-Haired Woman”(1)

きのう、Orhan Pamuk の近作 "The Red-Haired Woman"(2016)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 The Red-Haired Woman (Vintage International) 作者:Pamuk, Orhan Vintage Amazon [☆☆☆★★★] 現代トルコを舞台にしたパムク版『オイディプス王』。ここ…

Orhan Pamuk の “Snow”(1)

3回目のコロナ・ワクチン接種を受けたあと、高熱を発するなど副反応がひどく、体調が完全に回復するまでかなり時間がかかった。そのかんボチボチ読んでいたのが Orhan Pamuk の "Snow"(2002)。はて、どんなレビューになりますやら。 Snow (English Editio…

"Snow" 雑感と、文学におけるヒーローの死

力のない正義は無力であり、正義のない力は圧政的である。(パスカル『パンセ』) ウクライナでは連日、この箴言どおりの状況がつづいている。それは紀元前416年、ペロポネソス戦争のさなかに起きたメロス包囲戦を思わせるものだ。トゥキディデスの『戦史』…

Orhan Pamuk の “The Black Book”(3)

相変わらずボチボチだが "Mrs Dalloway"(1925)を読んでいる。タイトルどおり、主人公はいちおう Mrs Dalloway と思われる。いちおう、というのは、Mrs Dalloway は前回ふれた元カレ Peter Walsh との再会以後、全体のほぼ4分の1ほども登場しないからだ。…