ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ロサンゼルス・タイムズ文学賞

David Diop の “At Night All Blood Is Black”(1)

David Diop の "At Night All Blood Is Black" を読了。周知のとおり今年の国際ブッカー賞最終候補作で、仏語の原作 "Frère d'âme"(2018)は刊行年に Prix Goncourt des Lycéens(高校生のゴンクール賞)を受賞。英訳版(2020)も先日、ロサンゼルス・タイ…

Maaza Mengiste の “The Shadow King”(1)

ゆうべ、今年のブッカー賞最終候補作、Maaza Mengiste の "The Shadow King"(2019)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2019年のロサンゼルス・タイムズ文学賞の最終候補作でもありました)。 The Shadow King: SHORTLISTED FOR THE BO…

Rebecca Makkai の “The Great Believers”と今年のピューリツァー賞予想

ゆうべ、Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)を読了。周知のとおり、これは昨年のニューヨーク・タイムズ紙選ベスト5小説のひとつである。ぼく自身、これで同紙のベスト5小説は久しぶりにぜんぶ読んだことになる。さっそくレビューを書いてお…

Andrew Sean Greer の “Less”(2)とゲイ小説名作選

本書のピューリッツァー賞受賞は意外と思った人が多いかもしれない。P Prize. com の直前予想では泡沫候補扱いだったからだ。 本命視されていたのは、昨年の全米図書賞受賞作、Jesmyn Ward の "Sing, Unburied, Sing"(☆☆☆★★)。ついで、今年(対象は昨年)…

Rohinton Mistry の “A Fine Balance”(1)

きのう、1996年のブッカー賞最終候補作、Rohinton Mistry の "A Fine Balance"(1996)をやっと読了。先週、愛媛の田舎に帰省する前から読みはじめたが、その後何かと慌ただしく、ずいぶん手間取ってしまった。はて、どんなレビューになりますやら。 追記:…

Mohsin Hamid の “Exit West”(3)

本書はたしかに恋愛小説である。が、それより何より、街なかに突然出現したドアを通じて、アジアやアフリカなどから先進国へ瞬時に移動できる、という近未来のSF的な設定で移民問題を大々的に扱っている点がミソだろう。 ぼくは最初、移民と先住民の激しい対…

Mohsin Hamid の “Exit West”(2)

Mohsin Hamid の作品を読むのは本書で3冊目。初めて読んだのは、ご存じ2007年のブッカー賞最終候補作 "The Reluctant Fundamentalist"(☆☆☆★★)。当時のレビューを読みかえすと、わりとおもしろい、という程度だったようだ。 次に、ちょうど4年前の今ごろ…

Mohsin Hamid の “Exit West”(1)

ゆうべ、Moshin Hamid の最新作、"Exit West"(2017)を読了。眠かったのでレビューはきょうに回すことにした。はて、どんな駄文になりますやら。Exit West: SHORTLISTED for the Man Booker Prize 2017作者:Hamid, MohsinHamish HamiltonAmazon[☆☆☆★] いま…

Garth Greenwell の “What Belongs to You” (1)

ゆうべ Garth Greenwell の "What Belongs to You" (2016) を読了。Greenwell はアメリカの新人作家で、本書は彼の処女作だが、イギリスでも4月にハードカバーが刊行。現地のファンのあいだでは、今年のブッカー賞の有資格候補作に擬せられている。 追記:…

Valeria Luiselli の “The Story of My Teeth” (1)

先日発表された2015年のロサンゼルス・タイムズ紙文学賞(Los Angeles Times Book Prize for Fiction)の受賞作、Valeria Luiselli の "The Story of My Teeth" を読了。これは今年(対象はLAタイムズ紙賞と同じく2015年)の全米批評家協会賞の最終候補作で…

W. G. Sebald の “The Rings of Saturn” (1)

長らくブログを休止していたが、先日 W. G. Sebald の "The Rings of Saturn" を読みおえ、きょうやっとレビューを書く時間ができた。さて、どんな駄文になりますか。The Rings of Saturn作者:Sebald, W.G.Random House UK LtdAmazon[☆☆☆☆] 看板に偽りあり。…

Ruth Ozeki の “A Tale for the Time Being” (1)

最近は自分でも感心するくらい仕事に没頭。読書もブログもさっぱりだったが、この連休中(といっても、ぼくの場合は2連休)は久しぶりにまとまった時間が取れ、序盤だけ読んだまま中断していた今年のブッカー賞最終候補作、Ruth Ozeki の "A Tale for the T…

2012年全米批評家協会賞発表 (2012 National Book Critics Circle Awards)

ニューヨーク時間で2月28日、全米批評家協会賞が発表され、フィクション部門では、Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" が栄冠に輝いた。ぼく自身は Adam Johnson の "The Orphan Master's Son" [☆☆☆☆] が本命と思っていたが、"Billly Lynn'…

A. B. Yehoshua の “A Woman in Jerusalem” (1)

このところ超多忙の毎日で、すっかり読書もブログもサボってしまった。おかげで当初の予定が大幅に遅れたが、少しずつ読んでいた2006年のロサンジェルス・タイムズ紙最優秀小説賞の受賞作、A. B. Yehoshua の "A Woman in Jerusalem"(2004, 英訳2006)をよ…

Ben Fountain の “Billy Lynn's Long Halftime Walk” (1)

これを書いている時点ではまだ、今年の全米図書賞は発表されていないようだが、私見によれば「大本命」かも、と思われる Ben Fountain の "Billy Lynn's Long Halftime Walk" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2016年、ア…

Edith Pearlman の “Binocular Vision” (1)

今日は Denis Johnson の "Train Dreams" について落ち穂拾いをするはずだったが、先月以来中断していた Edith Pearlman の "Binocular Vision" をようやく読みおえたので、そのレビューから先に書くことにした。今年の全米図書賞候補作のひとつである。 追…

Julie Otsuka の “The Buddha in the Attic” (1)

今年の全米図書賞の最終候補作、Julie Otsuka の "The Buddha in the Attic" を読了。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2011年のロサンゼルス・タイムズ紙文学賞の最終候補作にも選ばれました。The Buddha in the Attic作者: Julie Ots…

Jennifer Egan の “A Visit from the Goon Squad”(1)

今年のピューリッツァー賞、ならびに全米批評家(書評家)協会賞の受賞作、Jennifer Egan の "A Visit from the Goon Squad" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。(点数評価は後日)。A Visit from the Goon Squad作者: Jennifer Egan出版…

Rafael Yglesias の “A Happy Marriage”(1)

去年のロサンジェルス・タイムズ紙小説大賞(LA Times Book Prize for Fiction)受賞作、Rafael Yglesias の "A Happy Marriage" を読了。これでようやく年が明けたような気がする。さっそくレビューを書いておこう。A Happy Marriage作者: Rafael Yglesias…

Colm Toibin の "The Master"(1)

Colm Toibin の "The Master" を読みおえた。周知のとおり、04年のブッカー賞最終候補作のひとつだが、文学ミーハーのぼくでもストーリーを追うだけでなく、じっくり考えさせられることが多かった。一昨日の雑感の続きになりそうだが、さっそくレビューを書…

Marilynne Robinson の "Home"(1)

今年のオレンジ賞受賞作、Marilynne Robinson の "Home" をやっと読み終えた。今まで3回の雑感ではついケチをつけてしまったが、最後でぐっと盛り上がり、読みの甘さを反省している。ともあれ、印象が薄れないうちにレビューを書いておこう。Home: Winner o…

Gabriel Garcia Marquez の "Love in the Time of Cholera"

前回、Lisa See の "Peony in Love" の感想を書いているうちに思い出したのが、ガルシア・マルケスの『コレラの時代の愛』である。Love in the Time of Cholera作者: Gabriel Garcia Marquez出版社/メーカー: Penguin発売日: 2007/08/02メディア: ペーパーバ…

Andrew O'Hagan の "Be Near Me"

Maggie O'Farrell の "The Vanishing Act of Esme Lennox" に続き、ペイパーバックで読める昨年の年間ベスト作品を探した結果、今度は "Publishers Weekly" 誌が選んだリストの中から、Andrew O'Hagan の "Be Near Me" を読んでみた。 http://www.publishers…