2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧
今日でもう今年も半分経過。毎年のことだが、月日の流れがほんとに早くなった。この半年で読んだ本はたったの32冊。去年より2冊多いだけだ。でもまあ、4月には父が他界し、なかなか思うように本を読めなかった時期もあるので、去年と同じく、「宮仕えの身…
印象的なカバーに惹かれ、内容紹介も読まずに本を買う「見てくれ買い」、今回は大ヒットでした! しかも、ストーリー重視型の文芸エンタメ路線ではなく、表現重視型で文学の香り高い作品だったことがうれしい。 とにかくこれは、読みはじめたときから「清涼…
アイスランドの作家 Audur Ava Olafsdottir の "The Greenhouse"(2007)を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Greenhouse作者:Olafsdottir, Audur AvaAmazon PublishingAmazon[☆☆☆☆] みずみずしいタッチで描かれたシンボリックな自己発見の物語であ…
アイスランドの作家 Audur Ava Olafsdottir の英訳本、"The Greenhouse" を読んでいる。奥付によると2009年の作品で、英訳されたのは2011年ということだが、ぼくは今年の3月、アマゾンUKの Newsletter で知り、例によってカバー写真にひと目ぼれして入手し…
波が岩に砕けちる光景の魅力的なカバー写真からおわかりのとおり、これは典型的な文芸エンタメ路線。だから今年のブッカー賞のロングリストに選ばれる可能性は低いと思うが、それでもカバーだけで飛びつく「見てくれ買い」としては久々のヒットだったので、…
オーストラリアの新人女流作家 M. L. Stedman のデビュー作、"The Light between Oceans" を読了。映画化が予定されているそうだ。さっそくレビューを書いておこう。(追記:その後、本書は実際、デレク・シアンフランス監督により映画化され、2016年に『光…
オーストラリアの新人女流作家 M. L. Stedman のデビュー作、"The Light between Oceans" を読んでいる。これは4月の初め、ネットサーフィンをしているうちにたまたま見つけ、内容紹介を少し読んで即注文した本だ。東映映画のオープニングを思わせる、波が…
これはいかにもイギリス小説らしい味わいの小説だ。冒頭こそアクションがあるけれど、あとはとにかく各人物のキャラクターをじっくり練り上げ、その関係を少しずつ紹介していくだけで物語が進む。べつに文学的に深いテーマを追求するわけでも、波瀾万丈の展…
Penelope Lively の最新作、"How It All Began" を読了。さっそくレビューを書いておこう。How It All Began作者:Lively, PenelopePenguinAmazon[☆☆☆★★] ペネロピ・ライヴリー健在なり! 小品ながら文字どおり「小の説」という小説の極致をきわめた佳篇であ…
Penelope Lively の最新作、"How It All Began" を読んでいる。ぼくは87年のブッカー賞受賞作、"Moon Tiger" にノックアウトされて以来、彼女の作品を少しずつ catch up していたのだが、数えてみると積ん読中のものが5冊もあり、いつのまにか最近作にも手…
例年この時期になると、あちらの文学ファンのあいだでは、ブッカー賞のロングリストが取り沙汰されるようになる。ぼくも過去2年だけ、その予想をもとに何冊か読んだことがあるが、去年も何年か前もみごとにはずれ、やっぱり「果報は寝て待て」だと思ったも…
今年のオレンジ賞最終候補作、Georgina Harding の "Painter of Silence" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Painter of Silence作者:Harding, GeorginaBloomsbury Publishing PLCAmazon[☆☆☆★] 古き佳き時代、青春、そして戦争の記憶をタペストリーの…
今年のオレンジ賞最終候補作、Georgina Harding の "Painter of Silence" に取りかかった。これはショートリストが発表されたとき、印象的なカバーに惹かれて買い求めた本だが、積ん読中にあえなく落選してしまった。 だからもう縁がないかも、と思っていた…
今年のダブリン文学賞は Jon McGregor の "Even the Dogs" に決定した。ぼくはこの本を東日本大震災直後、計画停電のさなかに懐中電灯で照らしながら読んだ憶えがある。今年のショートリストでほかに読んでいたのは、Jennifer Egan の "A Visit from the Goo…
アン・タイラーの小説を読むのはほんとうに久しぶりだ。日本でもファンが多いと聞くが、ぼくは5冊も積ん読中。それなのに、この "The Beginner's Goodbye" が米アマゾンの4月の優秀作品に選ばれているのを見かけ、思わず飛びついてしまった。実際に読んだ…
周知のとおり英連邦作家賞(Commonwealth Writer's Prize)が今年から、新人賞に相当する英連邦図書賞(Commonwealth Book Prize)と、すぐれた短編に与えられる英連邦短編賞(Commonwealth Short Story Prize)に変更され、いささか旧聞に属するが、図書賞…
トニ・モリスンのこともぼくは不勉強で、彼女の作品を読むのは本書でたったの3冊目。ご存じ "Beloved" の内容はほとんど記憶にない。2年前に読んだ "A Mercy" さえウロ憶えだったので、このブログの記事を確認したところ、「これを読んだからといって処方…
ノーベル賞作家トニ・モリスンの最新作、"Home" を読了。さっそくレビューを書いておこう。Home: A novel作者:Morrison, ToniKnopfAmazon[☆☆☆★] 巨匠がたしかな計算のもと、さらりと書いたノヴェラ。舞台はジョージア州の田舎町で、固い愛情で結ばれた黒人の…
雑感にも書いたとおり、「どんなにがんばっても、ホメロスの向こうを張るなんてすごい芸当ができるわけはないだろう」という偏見を捨て、「原作とは違うが、これはこれでおもしろい」かもしれないと期待して読みはじめた本書だが、読後の今は、まあこんなも…
今年のオレンジ賞受賞作、Madeline Miller の "The Song of Achilles" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Song of Achilles作者:Miller, MadelineBloomsbury Publishing PLCAmazon[☆☆☆★★] ギリシア神話の英雄アキレウスの生涯を、盟友パトロクロ…
今年のオレンジ賞受賞作、Madeline Miller の "The Song of Achilles" に取りかかった。諸般の事情で積ん読中に受賞の知らせ。あちらで評判がいいのは知っていたけれど(アマゾンUKでは今現在、レビュー数64で星4つ半)、え、そんなによかったの、と驚いた…
本書がアーヴィングの旧作とくらべて見劣りがする最大の理由は、テーマがわかるとあとはワンパターンだからである。たしかに「男女とりまぜ(主人公)ウィリアムの性的体験の相手が次々に登場」するのはそれなりにおもしろい。「ドタバタ調のコミカルなエピ…
アーヴィングの本を読むのは数えてみるとこれで7冊目。あまり熱心なファンとは言えないが、その7冊の中で本書はいちばんおもしろくなかった。決してわるい出来ではないのだが、"The World According to Garp" や "The Hotel New Hampshire" などを無我夢中…
ジョン・アーヴィングの最新作 "In One Person" をやっと読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。IN ONE PERSON作者:JOHN IRVINGSimon & SchusterAmazonIn One Person作者:Irving, JohnDoubledayAmazon[☆☆☆★★] 神ならぬ人間に完全な愛は…