ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

ミステリ

冒険小説やスパイ小説、怪奇小説もふくみます

Wilkie Collins の “The Woman in White”(3)

小説の分類なんてくだらん。小説には面白いものと、面白くないものがあるだけだ。 というのは昔から、少なくともぼくのまわりでは、よく耳にしてきた説だ。とりわけ、ミステリ・ファンにそういう意見の持ち主が多かった。 ぼく自身はといえば、それもたしか…

Wilkie Collins の “The Woman in White”(2)

ブッカー賞の季節が近づいてきた。去年は発表日を勘違いしたので、今年はちゃんとカレンダーに印をつけておこう。 Longlist announcement on Tuesday, July 30 Shortlist on Monday, September 16 Ceremony on Tuesday, November 12 いつものように現地ファ…

Wilkie Collins の “The Woman in White”(1)

先日、やっと表題作(1860)を読了。諸般の事情で、当初の予定より大幅に遅れてしまった。このレビューもどきに取りかかるのも遅れた。さてどっこいしょ、重い腰を上げるとしよう。(下にアップしたタイトルの women は明らかに誤植) The women in white (E…

“The Woman in White” 雑感(2)

woman in white とかけてなんと解く? white dog と解く。 その心は? Her tail is white too. いやはや、古いおやじギャグですな。通じたでしょうか。尾も白い。面白い。 その面白さは前回紹介したとおり、「不可思議な状況がつぎつぎに発生し、そこから生…

“The Woman in White” 雑感(1)

本書は既報どおり、タイム誌が発行年順に選んだオールタイム・ベストミステリ100のトップを飾っている。https://time.com/collection/best-mystery-thriller-books/ しかしこのリスト、よく見ると、日本の推理小説ファンなら小首をかしげたくなったかもしれ…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(2)

先週末、甥の結婚式に出席のため松山に行ってきた。帰りの日に市内見物。といっても、訪れたのは子規堂、坂の上の雲ミュージアム、萬翠荘の三ヵ所だけで、いずれも再訪ないし再々訪だったが、駆け足で明治・大正・昭和初期のことを勉強するにはいいコースで…

Muriel Spark の “The Driver's Seat”(1)

Muriel Spark(1918 - 2006)の "The Driver's Seat"(1970)を読了。使用したテクスト、Penguin Books(初版)の表紙にエリザベス・テイラーの顔写真があり、調べてみると、本書は1974年、イタリアのジュゼッペ・パトリーニ・グリッフィ監督によって映画化…

Sarah Waters の “Affinity”(2)と既読作品一覧

ついにコロナか、それともふつうの風邪か、とにかく発熱。おまけに喉がやけに痛く、調べるとオミクロン株の症状にそっくり。実際何度あるのかはコワくて測っていない。きょうは何日かぶりに起きていられる状態なので(たぶん発症4日目)、この記事を書いて…

Sarah Waters の “Affinity”(1)

きのう、Sarah Waters の "Affinity"(1999)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Affinity (Virago V) 作者:Waters, Sarah Virago Press (UK) Amazon [☆☆☆★★] タイトルはいわゆるソウルメイトの意。書中でそう説明されたとき、はたして心の友は存在し…

ミステリ俳句

きのう、寝床のなかで『蜜蜂と遠雷』を読んでいたら、「夜は、まだ若い」という一文が出てきた。未読だがミステリも書いている恩田陸のこと、出典は明らかに、"Phantom Lady" の有名な書き出し、The night was young, and so was he. であろう。 そこでひら…

Umberto Eco の “Baudolino”(2)

Rebecca Makkai の "The Great Believers"(2018)をダラダラ読んでいる。ご存じのとおり、ニューヨーク・タイムズ紙が去年選んだベスト5小説のひとつだが、いまのところ、☆☆☆。ゲイとエイズ、そして家族愛を扱ったもので、暗いし、なかなか話が先へ進まな…

Leila Slimani の “The Perfect Nanny”(2)と2018年ニューヨーク・タイムズ紙選ベスト5小説

とても面白い本を読んでいるとき、過去記事の続きを書くのは面倒くさいものだ。もっか取り組んでいるのは、Orhan Pamuk の "The Museum of Innocence"(原作2008、英訳2009)。すこぶるつきのメロドラマだが、近代文化と古い伝統との衝突など、いろいろ考え…

Umberto Eco の “Baudolino”(1)

Umberto Eco の第四作 "Baudolino"(原作2000、英訳2001)を読了。さっそくレビューを書いておこう。 Baudolino (English Edition) 作者: Umberto Eco 出版社/メーカー: Vintage Digital 発売日: 2014/08/28 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る …

Leila Slimani の “The Perfect Nanny”(1)

ゆうべ、Leila Slimani の "The Perfect Nanny" を読了。2016年のゴンクール賞受賞作、"Chanson douce" の英訳版である。巻頭の紹介によると、彼女はモロッコ出身の若手作家で、モロッコ人の女流作家が同賞を受賞したのは初めてのことらしい。この英訳版は昨…

Rachel Kushner の “The Mars Room”(1)

今年のブッカー賞候補作、Rachel Kushner の "The Mars Room"(2018)を読了。さっそくレビューを書いておこう。(7月25日の候補作ランキング関連の記事に転載しました)The Mars Room作者:Kushner, RachelRandom House UK LtdAmazon[☆☆☆★] 看板に偽りあり…

Orhan Pamuk の “My Name Is Red”(1)

きのう、2003年の国際IMPACダブリン文学賞受賞作、Orhan Pamuk の "My Name Is Red"(1998)を読了。原語はトルコ語。一日寝かせたところでレビューの書き出しが頭にちらついてきた。さてどうなりますか。My Name is Red作者:Pamuk, OrhanFaber & FaberAmazo…

LJ Ross の “Holy Island”(2)

エクセルに打ち込んでいる読書記録によると、この "Holy Island" は、2000年の夏に Brian Forbes の "The Endless Game"(1986)というスパイ小説を読んで以来、なんと17年ぶりに、読む前からミステリだと認識して読んだミステリである。 この17年間に読んだ…

L.J. Ross の “Holy Island”(1)

イギリスのベストセラー作家 L.J. Ross の Ryan 警部シリーズ第1作、"Holy Island"(2015)を読了。さっそくレビューを書いておこう。Holy Island: A DCI Ryan Mystery (The DCI Ryan Mysteries Book 1) (English Edition)作者:Ross, LJAmazon[☆☆☆] クリス…

Graeme Macrae Burnet の “His Bloody Project”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Graeme Macrae Burnet の "His Bloody Project" を読了。さっそくレビューを書いておこう。His Bloody Project作者:Burnet, Graeme MacraePublishers Group UKAmazon[☆☆☆★] 前半はよく出来たクライム・ストーリー。19世紀なかば…

Ottessa Moshfegh の “Eileen” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、Ottessa Moshfegh の "Eileen" をゆうべ読了。ひと晩寝かせたところで、さて、どんなレビューが書けますやら。Eileen: Shortlisted for the Man Booker Prize 2016作者:Moshfegh, OttessaRandom House UK LtdAmazon[☆☆☆★] なる…

Ian McGuire の “The North Water” (1)

今年のブッカー賞候補作、Ian McGuire の "The North Water" を読了。さっそくレビューを書いておこう。The North Water: Now a major BBC TV series starring Colin Farrell, Jack O'Connell and Stephen Graham作者:McGuire, IanSimon + Schuster UKAmazon…

Viet Thanh Nguyen の“The Sympathizer” (1)

ゴールデンウィーク中、仕事のあいまに読んでいた今年のピューリツァー賞受賞作、Viet Thanh Nguyen の "The Sympathizer" をやっと読了。さっそくレビューを書いておこう。The Sympathizer: A Novel (Pulitzer Prize for Fiction)作者:Nguyen, Viet ThanhGr…

Donna Tartt の “The Secret History”(1)

Donna Tartt の "The Secret History" (1992) を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Secret History: From the Pulitzer Prize-winning author of The Goldfinch作者:Tartt, DonnaPenguin Books Ltd (UK)Amazon[☆☆☆] 看板に偽りあり。重大な秘密が長…

Ian McEwan の “Sweet Tooth” (1)

Ian McEwan の最新作、"Sweet Tooth" を読了。ガーディアン紙や米アマゾンなどが選んだ昨年のベスト作品のひとつである。さっそくレビューを書いておこう。Sweet Tooth作者:McEwan, IanJonathan CapeAmazon[☆☆☆☆] うまい、じつにうまい。まさかこんなトリッ…

Santiago Roncagliolo の “Red April” (1)

昨年のインディペンデント紙外国小説最優秀作品賞(Independent Foreign Fiction Prize)の受賞作、Santiago Roncagliolo の "Red April" を読みおえた。これは一昨年、ガーディアン紙が選んだ年間ベスト小説のひとつでもある。さっそくレビューを書いておこ…

Elizabeth Haynes の “Into the Darkest Corner” (1)

アマゾンUKが選んだ(ノンフィクションもふくむ)昨年の最優秀作品のひとつ、Elizabeth Haynes の "Into the Darkest Corner" を読了。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Into the Darkest Corner作者:Haynes, ElizabethPenguinAmazon[☆☆☆★★] …

A. D. Miller の “Snowdrops” (1)

今年のブッカー賞最終候補作、A. D. Miller の "Snowdrops" を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。Snowdrops作者: Andrew Miller出版社/メーカー: Atlantic発売日: 2011/09/01メディア: ペーパーバック クリック: 5回この商品を含む…

Sarah Waters の "The Little Stranger"(1)

今年のブッカー賞最終候補作のひとつ、Sarah Waters の "The Little Stranger" を何とか読みおえた。さっそく、いつものようにレビューを書いておこう。The Little Stranger作者:Waters, SarahRiverhead BooksAmazonThe Little Stranger作者:Waters, SarahVi…

Kate Morton の "The Forgotten Garden"(1)

仕事の合間にやっと読み終えた。今まで3回の雑感のまとめに過ぎないが、さっそくレビューを書いておこう。The Forgotten Garden作者: Kate Morton出版社/メーカー: Pan Books発売日: 2008/06/06メディア: ペーパーバック購入: 2人 クリック: 8回この商品を…

Kate Atkinson の “When Will There Be Good News?”(1)

何とか読み終えた。今まで2回にわたって書いた雑感の続きだが、簡単にレビューをまとめておこう。When Will There Be Good News?: (Jackson Brodie)作者: Kate Atkinson出版社/メーカー: Black Swan発売日: 2009/01/02メディア: ペーパーバック クリック: 4…