2016-03-01から1ヶ月間の記事一覧
Donna Tartt の "The Secret History" (1992) を読了。さっそくレビューを書いておこう。The Secret History: From the Pulitzer Prize-winning author of The Goldfinch作者:Tartt, DonnaPenguin Books Ltd (UK)Amazon[☆☆☆] 看板に偽りあり。重大な秘密が長…
きのうの駄文を読み返すと、ああ、これは某先生の猿マネだな、という気がする。ある小説が instructive かどうかを、人生の真実が描かれているかどうかで判断する立場だ。とそう書いただけで、さっそくお叱りの声が飛んできそうだ。こら、もっと厳密に書け!…
ぼくは小説の題材については非常に寛容で、interesting かつ instructive であれば基本的に何でもいい、と思っている。たまにカチンとくるものがあり、その最たる例は露骨なプロパガンダ小説だが、それは政治色が濃いあまり、小説としてのふくらみに欠けてい…
Hollinghurst の作品を読んだのは、5年前の "The Stranger's Child" 以来で2冊目。同書は2011年のブッカー賞レースの際、あちらのファンのあいだで大本命の呼び声が高かったが、あえなくショートリストで落選。ぼくはロングリストの発表直後、下馬評を信じ…
ほんとうは Barbara Kingsolver の "The Poisonwood Bible" について、とりわけ、その「多彩な話術」について詳しく論じたかった。残念だ。いつもなら本を読んだあと読書メモはゴミ箱行きなのだが、今回はしばらく取っておこう。近いうちにまた、おさらいを…
仕事のあいまにボチボチ読んでいた Alan Hollinghurst の "The Line of Beauty" を読了。ご存じ2004年のブッカー賞受賞作である。さっそくレビューを書いておこう。The Line of Beauty作者:Hollinghurst, AlanPicadorAmazon[☆☆☆] 装飾的で複雑な文体で織りな…
レビューは長々と書いてしまったが、要約すると次のようになる。アメリカ人宣教師はコンゴ奥地の村で布教に励むが、それは宣教師一家にとっても原住民にとっても〈宗教的カルチャー・ショック〉だった。これが本書の大きな流れで、そのショックの実態を描い…
つい昔のレビューでお茶を濁してしまった。「……落ちた日本……」などと書くよりはマシかな。さて "The Poisonwood Bible" についての各論に移ろう。 ちょうど半分あたりに、ずばり本書の(ぼくがとらえた)テーマを象徴する場面がある。' "Tata Jesus is Banga…
きのう再録した "Prodigal Summer" (2000) のレビューを読み返すと、「文学史に残る傑作」という一節があり、思わず苦笑してしまった。ほんとうにそんな大傑作と言えるのかどうか、もし仮に、レビューを書いてから10年のあいだにアメリカ文学史の新刊が出て…
え、今ごろ "Poisonwood Bible" かい? 遅れすぎ! という声が聞こえてきそうだ。じつは本書も長年の宿題だった。ちょうど10年前、現代文学に少しずつ興味を覚え、と同時にレビューらしきものを某通販会社の商品紹介ページに投稿しはじめたころ(その後すべ…
A. S. Byatt の "Possession" のあら探しをしているうちに、数多くの美点について書く時間がなくなってしまった。が、いちおうレビューで意は尽くしていると思う。あれ以上書いても、屋上屋を架すことになろう。 話変わって、Barbara Kingsolver の "The Poi…
本書のタイトルに二重、あるいは四重の意味があることはすぐにわかる。男と女がお互いに相手を possess したいと思い、その欲求に、ひいては相手にみずから possess される、つまり「取り憑かれる」のがまず最初の二重。ついで、現代の学者たちが新資料の発…
ぼくはカッコつけて言えば原典主義者。「作品は作品をして語らしめよ」という考え方である。よほど興味や必要がないかぎり、ある作家の経歴、作品歴、作品の時代背景などについて調べることはない。それどころか、序文や〈あとがき〉もまず読まない。書評の…
ぼくは英詩が苦手で、大学時代にほんの少し勉強した程度。いま書棚を見渡しても、詩集の原書は William Blake の "Complete Writings" しかない。それも拾い読みしたことがあるだけで、黄ばんではいるがきれいなものだ。邦訳版のシェイクスピアの『ソネット…
1990年のブッカー賞受賞作、A. S. Byatt の "Possession" を読了。雑感でふれたように、途中まで☆4つ。★を1つ追加しようかどうか迷っているうちに読み終えてしまった。前回述べたような不満は残るものの、Byatt の力業に敬意を表して結局、オマケすること…
ぼくはほとんどいつも、途中で点数評価はしないことにしている。理由は言うまでもないだろう。けれども本書の場合、かなり早い段階から☆4つかな、という気がしはじめた。 世間の評価は非常に高いものと思う。例によって書評のたぐいはいっさい目にしていな…
Byatt の作品は今まで二冊しか読んだことがない。まず手にしたのは短編集 "Sugar & Other Stories" だが、憶えている作品はゼロ。次に読んだ2009年のブッカー賞最終候補作 "The Children's Book" は、落選もむべなるかな。受賞した Hilary Mantel の "Wolf H…
40年前の夏休み、田舎で Iris Murdoch の "The Bell" を読み終えたあと、ぼくはイギリス文学から長いこと遠ざかってしまった。いま読書記録を調べると、ほぼ四半世紀たった同じく夏休み、"Lord of the Flies" を読むまで娯楽小説を除くと一冊も読んでいない…