ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2012-03-01から1ヶ月間の記事一覧

Leo Tolstoy の “The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” (2)

久しぶりにトルストイを読んでまず感じたのは、ぼく自身、いかに毎日だらしない、いい加減な生活を送っているかということだ。トルストイの壮絶な「内なる闘い、道徳的煩悶」と較べると、自分は何とつまらないことで悩んでいるのかとイヤになってしまう。で…

Tolstoy の “The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” (1)

Richard Pevear と Larissa Volokhonsky 夫妻の英訳によるトルストイの短編集、"The Death of Ivan Ilyich & Other Stories" をようやく読みおえた。いつものように、さっそくレビューを書いておこう。なお、こういう古典を現代の作品と同じように評価するこ…

“The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” 雑感 (3)

今日は第6話 "Master and Man" と第7話 "Father Sergius" を読了。前者は、日ごろの怠惰な生活で腐りかけている老脳には刺激が強すぎる名作3編が続いたあとの、ちょっとしたコーヒー・ブレークだった。自己犠牲が喜びをもたらし、物欲から心を解放し、人…

“The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” 雑感 (2)

1日1話のペースで読みつづけ、今しがた、第5話の "The Devil" を読みおえた。へえ、と思ったのは結末に別ヴァージョンがあることで、以前読んだ Penguin Classics 版を調べてみると、主人公の自殺で終わるものしか載っていない。(その後よく見ると、主人…

“The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” 雑感 (1)

いろいろ考えることがあり、トルストイの英訳短編集 "The Death of Ivan Ilyich & Other Stories" に取りかかった。訳者はかの有名な Richard Pevear と Larrissa Volokhonsky 夫妻である。夫妻の訳業の偉大さについては今さら言うまでもないだろう。ぼくは…

Jojo Moyes の “Me Before You” (2)

今アマゾンUKを見ると、本書はフィクション部門のベストセラー第6位。レビュー数424で星5つと、大変な評判になっている。ぼくの評価は☆☆☆★★で、ちと辛く思えるかもしれないが、昨日のレビューから想像できるように、じつは相当おもしろかった。「ついペー…

Jojo Moyes の “Me Before You” (1)

イギリスの最新ベストセラー、Jojo Moyes の "Me Before You" をやっと読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。(後記:本書は2016年、テア・シャロック監督によって映画化され、日本でも『世界一キライなあなたに』として公開されました)。Me Before…

“Me Before You” 雑感

イギリスの最新ベストセラー、Jojo Moyes の "Me Before You" をボチボチ読んでいる。アマゾンUKでもっか、レビュー数403で星5つ。ものすごい評判だが、それもさることながら、タイトルとカバー絵から判断して文芸エンタメ路線だろうと思い入手した。たまに…

Barry Unsworth の “The Quality of Mercy” (2)

「やっぱり本編のほうから先に読むのが筋でしょう」と雑感に書いたが、残念ながら、そのとおりの結果になってしまった。少しずつ紹介される粗筋を読んだだけでも、本編の "Sacred Hunger" は、さぞすごい作品だったのではないかと思われる。ひるがえって、同…

Barry Unsworth の “The Quality of Mercy” (1)

Barry Unsworth の最新長編、"The Quality of Mercy"(2012)を読みおえた。さっそくいつものようにレビューを書いておこう。The Quality of Mercy作者:Unsworth, BarryHutchinsonAmazon[☆☆☆] 1992年のブッカー賞受賞作、"Sacred Hunger" の後日談。断片的に…

“The Quality of Mercy” 雑感

今週は Barry Unsworth の最新長編、"The Quality of Mercy" をボチボチ読んでいる。先月初め、米アマゾンの新刊ニュースで知った本だが、アマゾンUKのほうでは、デカサイズながらすでにペイパーバック版も出ている。 今まで着手をためらっていたのは、届い…

Philippe Claudel の “Brodeck” (3)

うっかり書き洩らしていたが、本書には邦訳がある。ブロデックの報告書作者: フィリップ・クローデル,高橋啓出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2009/01/08メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 31回この商品を含むブログ (17件) を見る フィリップ・クロー…

Philippe Claudel の “Brodeck” (2)

本書は大ざっぱに言うと、いわゆるホロコースト物に属する作品である。ぼくは今年の初め、Ruta Sepetys の "Between Shades of Gray" を読んだとき、こんなことを書いた。「ホロコースト物なら、これはもう今さら言うまでもなく、それこそゴマンとある。それ…

Philippe Claudel の “Brodeck” (1)

まず去年の3月11日のブログを引用しよう。「いや怖かった、今日の地震。生きた心地がしなかった。こんな中でもアクセスしてくださったみなさん、アクセスされたということは大丈夫だったんですね。こんな日に記事を書くなんて不謹慎とは思ったが、今は夜中…

David Bezmozgis の “The Free World” (3)

手持ちの Longman Dictionary of English Language and Culture で 'free' の定義を調べると、第一に 'able to act as one wants; not in prison or under anyone's control' と載っていた。思わず、へえ、である。"The Free World" で描かれている自由とは…

全米批評家協会賞発表 (2011 National Book Critics Circle Award for Fiction)

ニューヨーク時間で8日夜、今年の全米批評家協会賞が発表され(対象は去年の作品)、小説部門では Edith Pearlman の短編集 "Binocular Vision" が栄冠に輝いた。ぼく自身は Jeffrey Eugenides の "The Marriage Plot" が大本命だと思っていたので意外な結…

David Bezmozgis の “The Free World” (2)

David Bezmosgis のことも、本書読了後、巻頭の紹介記事をながめるまで思い出さなかった。そうそう、"Natasha and Other Stories" の作者でした。ただ、短編集のほうは、恥ずかしながらずっと積ん読中なので、ピンと来なかったのも無理はない。たしか邦訳が…

David Bezmozgis の “The Free World” (1)

今日は話題の映画、『ドラゴン・タトゥーの女』をかみさんと一緒に観に行ったあと、帰りの電車の中で、昨年のギラー賞最終候補作、David Bezmozgis の "The Free World" を読みおえた。一杯やりながらではあるが、さっそくレビューを書いておこう。The Free …

Kevin Wilson の “The Family Fang” (2)

昨日レビューを書く前に、この Kevin Wilson はどんな作家なのだろうと巻頭の紹介記事をながめたら、ありゃ、去年も彼の作品を読んでいるではないか。デビュー作で、アレックス賞を受賞した "Tunneling to the Center of the Earth" である。すっかり忘れて…

Kevin Wilson の “The Family Fang” (1)

Kevin Wilson の "The Family Fang" を読了。去年のタイム誌選定ベスト10小説のひとつで、アマゾンUKの小説部門でも優秀作品に選ばれている。さっそくレビューを書いておこう。(追記:本書は2015年、ジェイソン・ベイトマン監督により映画化されました。主…

“The Family Fang” 雑感

Kevin Wilson の "The Family Fang" に取りかかった。これは去年の7月だったか、米アマゾンの上半期ベスト10小説に選ばれているのを見かけ、イギリス版のペイパーバックを入手したまま積ん読。その後、米アマゾンでは年間ベストに残らなかったものの、アマ…

Eowyn Ivey の “The Snow Child” (2)

去年の話題作がまだ何冊か積ん読中なのに(おととし以前のものは数知れず)、久しぶりに米アマゾンの月間ベスト作品を検索してみたら本書が目にとまった。タイトルとカバー絵からして、いかにも文芸エンタメ路線らしい。ちょうど Vanessa Diffenbaugh の "Th…