ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2011-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Yiyun Li の “Gold Boy, Emerald Girl” (2)

Yiyun Li は「中国のチェーホフ」と呼ばれているらしい。たぶん基本知識なんだろうけど、ぼくは不勉強で、本書の裏表紙にある書評の抜粋を読むまで知らなかった。 チェーホフですか。書棚には Penguin 版、Vintage 版、Bantam 版などの短編集が何冊か鎮座し…

Yiyun Li の “Gold Boy, Emerald Girl” (1)

今年のフランク・オコナー国際短編賞の最終候補作、Yiyun Li の "Gold Boy, Emerald Girl" を読みおえた。さっそくいつものように、まずレビューを書いておこう。Gold Boy, Emerald Girl: Stories作者:Li, Yiyun発売日: 2011/09/27メディア: ペーパーバック[…

“Gold Boy, Emerald Girl” 雑感

今週はバテバテ。明日も出勤なのでユーウツだ。今読んでいるのは今年のフランク・オコナー国際短編賞の最終候補作、Yiyun Li の "Gold Boy, Emerald Girl"。Yiyun Li といえば、この賞の第1回受賞作、"A Thousand Years of Good Prayers" (05) で有名な作家…

Kyung-Sook Shin の “Please Look After Mom” (3)

当たるも八卦当たらぬも八卦、本書が「世界的なベストセラーとなりそうな予感がする」理由をもうひとつ述べておくと、これを読めば、どこの国の人でも「心の原風景」を思い出すのではないだろうか。この母親のひたすら献身的な姿に接すると、自分にはとても…

Kyung-Sook Shin の “Please Look After Mom” (2)

これは読んでみて、ほんとによかった! Kyung-Sook Shin のことは不勉強でまったく知らなかったが、紹介記事によると韓国では有名な女流作家らしく、とりわけ本書は韓国国内だけで150万部近く売れたベストセラーとのこと。23ヵ国で翻訳が予定されているとい…

Kyung-Sook Shin の “Please Look After Mom” (1)

Kyung-Sook Shin の "Please Look After Mom" を読了。米アマゾンの今年の上半期ベスト10小説に選ばれた、韓国のミリオン・セラーの英訳版である。さっそくレビューを書いておこう。Please Look After Mom作者: Kyung-Sook Shin出版社/メーカー: Knopf発売日…

Simon Van Booy の “Love Begins in Winter” (2)

雑感にも書いたように、これでフランク・オコナー国際短編賞の受賞作を読むのは、08年の "Unaccustomed Earth"以降、4冊目ということになる。同書があまりにもよかったので、最近の受賞作にも大いに期待していたが、率直に言って、この "Love Begins in Win…

Simon Van Booy の “Love Begins in Winter” (1)

一昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Simon Van Booy の "Love Begins in Winter" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Love Begins in Winter作者:Van Booy, Simon発売日: 2009/06/11メディア: ペーパーバック[☆☆☆★★] 愛の喜びと悲しみ…

“Love Begins in Winter” 雑感

一昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Simon Van Booy の "Love Begins in Winter" に取りかかった。最近、この賞の catch up に励んでいて、これで受賞作を読むのは(2年前、受賞作とは知らずに読んだ "Unaccustomed Earth" もふくめて)通算4冊…

Julie Otsuka の “The Buddha in the Attic” (2)

今年のブッカー賞について、ひとつだけ補足。ぼくは "The Sense of an Ending" を読みおわった次の日 (8月19日) の日記に、「こういうストレートな秀作がブッカー賞を取ることはそう多くないのではなかろうか」と書いている。これは去年の受賞作、"The Fink…

2011年ブッカー賞発表 (2011 Man Booker Prize Winner)

本日早朝、眠い目をこすりつつ Man Booker Prize の Twitter をながめていたら、やっと受賞作が発表された。栄冠に輝いたのは、下馬評どおり Julian Barnes の "The Sense of an Ending" である。ぼくもイチオシの作品だったので、心から受賞を喜びたい。先…

Julie Otsuka の “The Buddha in the Attic” (1)

今年の全米図書賞の最終候補作、Julie Otsuka の "The Buddha in the Attic" を読了。さっそくレビューを書いておこう。 追記:その後、本書は2011年のロサンゼルス・タイムズ紙文学賞の最終候補作にも選ばれました。The Buddha in the Attic作者: Julie Ots…

Edna O'Brien の “Saints and Sinners” (2)

ある本をフランク・オコナー国際短編賞の受賞作と意識して読んだのは、これで2冊目だ。率直な感想を述べると、先月読んだ去年の受賞作、Ron Rash の "Burning Bright" よりはいいが、受賞作とは知らずに読んだ Jhumpa Lahiri の "Unaccustomed Earth" (08) …

Edna O'Brien の “Saints and Sinners” (1)

今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Edna O'Brien の "Saints and Sinners" を読みおえた。さっそくレビューを書いておこう。Saints and Sinners作者:O'Brien, Edna発売日: 2011/02/01メディア: ペーパーバック[☆☆☆★★] 技巧的にすこぶる洗練された短…

“Saints and Sinners” 雑感

今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Edna O'Brien の "Saints and Sinners" に取りかかった。同賞の受賞作を読むのは、恥ずかしながら、これでたったの3冊目。しかも、08年の "Unaccustomed Earth" にいたっては、あとから、へえ、そうなんだ、と気…

2011年全米図書賞ショートリスト発表 (The 2011 National Book Award Finalists)

オレゴン州の現地時間で12日、今年の全米図書賞の最終候補作が発表された。小説部門のリストを見ると、うれしいことに、ぼくが今年の上半期マイ・ベスト5に選んだ Tea Obreht の "The Tiger's Wife" もノミネートされている。 残念なのは、ひそかに期待して…

Michael Crummey の “Galore” (2)

いやはや、根負けしました。雑感にも書いたとおり、途中の評価としては☆☆☆★★だったのに、最終的には★を1つ追加。その理由は、結局、本書のパワーに圧倒されてしまったのと、「数奇な運命をたどった一家の年代記に、ニューファンドランドの百年史がみごとに…

Michael Crummey の “Galore” (1)

世間は3連休だったが、ぼくは土曜出勤で、昨日も午前中は「自宅残業」。午後から本書に取り組み、今日になってやっと読みおえた。昨年の英連邦作家賞、カナダ・カリブ海地域部門賞の受賞作で、米アマゾン選定今年の上半期ベスト10小説の1冊でもある。さっ…

“Galore” 雑感 (2)

相変わらずピッチは上がらないが、それでもたぶん、粗筋を書くとネタばらしになりそうなところまで読みすすんだ。そこで今日は、本書を素材にしながら、小説の採点ということについて考えてみよう。 これは今のところ、☆☆☆★★くらいかな、と思う。この採点法…

“Galore” 雑感 (1)

去年の英連邦作家賞、カナダ・カリブ海地域部門賞の受賞作、Michael Crummey の "Galore" をボチボチ読んでいる。周知のとおり、これは Tea Obreht の "The Tiger's Wife" や Ann Patchettの "State of Wonder" などと並んで、米アマゾン選定今年の上半期ベ…

2011年ギラー賞ショートリスト発表 (The Scotiabank Giller Prize Shortlist 2011)

Ron Rash の "Burning Bright" について駄文の続きを書くはずだったが、このところ職場がまた繁忙期に入り、ついこのブログをサボっているうちに、読了直後の印象が薄れてしまった。要は、その程度の作品だったということだ。 ボチボチ読んでいる本はあるの…