ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

2016-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Jacqueline Woodson の “Another Brooklyn” (2)

このところ、われながらまるでブッカー賞ウォッチャーみたいだった。が、これはぼくの本意ではない。世界の文学界でいわば最大のお祭りに付き合っただけのこと。積ん読中の名作傑作の山を少しずつ切り崩す。それがほんとうの目標だ。 とはいうものの、おもし…

2016年ブッカー賞エピローグ

おとといの夜、The Mookse and the Grimes のディスカッションを斜め読みしていたら、どうも怪しい。Paul Beatty の話題がしきりに出てくるのだ。ぼくの勘違いだったのか。すでに消去されているので確認はできないが、発表以前に情報が漏れていた可能性はあ…

2016年ブッカー賞発表(2016 The Man Booker Prize Winner)

午前6時40分。未確認情報だが、 Paul Beatty の "The Sellout" が今年のブッカー賞を受賞! というニュースが、昨夜から現地ファンのあいだで流れている。公式サイトではまだ未発表。今年の全米批評家協会賞とあわせ、本当にダブル受賞となったのだろうか。…

Jacqueline Woodson の “Another Brooklyn” (1)

ゆうべ、今年の全米図書賞の最終候補作、Jacqueline Woodson の "Another Brooklyn" を読了。すぐにレビューを書きたかったのだが、いつも駄文のわりに時間がかかるのであきらめた。ひと晩寝かせた効果はあるでしょうか。Another Brooklyn: A Novel (English…

"Another Brooklyn" 雑感

ゆうべ、遅まきながら『言の葉の庭』をブルーレイ盤で観た。現在、レンタル店では借りられっぱなし、という話を同僚から聞き、へえ、やっぱり評判どおりの出来なんだ、とさっそくゲット。よかった、すごく。『君の名は。』も観たくなったが時間がない。 寝床…

ぼくの2016年ブッカー賞予想と回想

おととい、Graeme Macrae Burnet の "His Bloody Project" を読了。ブッカー賞受賞作の発表前に最終候補作をぜんぶ読みおえたのは、なんと2011年以来5年ぶり。まことにお恥ずかしい限りだが、ぼくにしてはけっこう頑張ったほうだ。 昨年秋、本ブログを再開…

Graeme Macrae Burnet の “His Bloody Project”(2)

イギリス各社の最新のオッズを調べると、本書はブッカー賞レースでおおむね3番人気。意外に高い下馬評なんだなあ、というのがぼくの感想だ。 たしかに「よく出来たクライム・ストーリー」だし、「人生の苦い真実も汲みとれる点」も評価できる。が、「苦い真…

Graeme Macrae Burnet の “His Bloody Project”(1)

今年のブッカー賞最終候補作、Graeme Macrae Burnet の "His Bloody Project" を読了。さっそくレビューを書いておこう。His Bloody Project作者:Burnet, Graeme MacraePublishers Group UKAmazon[☆☆☆★] 前半はよく出来たクライム・ストーリー。19世紀なかば…

"His Bloody Project" 雑感

ゆうべ寝床の中で『センセイの鞄』をやっと読みおえた。2週間近くかかってしまったが、最後だけ一気読み。ぼくはこのセンセイと同じ年代なのではないか。おかげで目はウルウル。川上弘美、いいですなあ。これからも少しずつ日本文学を catch up しなければ…

Madeleine Thien の “Do Not Say We Have Nothing” (4)

これはシンドイ、ヤバイ本ですが、なかなかいい。ということで点数は☆☆☆★★★。採点法のパクリ元、故双葉十三郎氏の『西洋シネマ体系』の簡略版『外国映画ぼくの500本』(文春新書)をチェックすると、『カサブランカ』や『ベン・ハー』などと同点である。え、…

Madeleine Thien の “Do Not Say We Have Nothing” (3)

ふたたび言うと、これはヤバイ本です。もし本書がめでたく栄冠に輝いたとしても、邦訳は出ないかもしれない。政治的なリスクがあるからだ。 ここには彼の国の暗黒の歴史がしるされている。文化大革命については、たぶん、似たり寄ったりの事件が頻発していた…

Madeleine Thien の “Do Not Say We Have Nothing” (2)

いまイギリス各社のオッズを調べると、本書は今年のブッカー賞レースで、Deborah Levy の "Hot Milk" と本命・対抗を争うほどの人気を集めているようだ。 でもこれ、シンドイ本ですよ。ぼくはそれほど乗れなかった。ただでさえ宮仕えで忙しいのに、このとこ…

Madeleine Thien の “Do Not Say We Have Nothing” (1)

ゆうべようやく、今年のブッカー賞最終候補作、Madeleine Thien の "Do Not Say We Have Nothing" を読了。すっかり遅くなってしまった。諸般の事情というやつで、ひとつには風邪のせいだが、さて、どんなレビューになりますやら。 追記:その後、本書は2016…

"Do Not Say We Have Nothing" 雑感 (2)

ぼくの見落としでなければ、タイトルの表現が本文中に初めて出てくるのはここだ。"Jiang Kai," she said spitefully. "now I understand. I'll forget Prokofiev. I'll play the 'March of the Volunteers' and 'The Internationale' for all eternity. The …

"Do Not Say We Have Nothing" 雑感 (1)

今週は疲れのせいか、血圧のせいか頭が重かった。不安になり、きょう帰宅途中に病院に寄ると、高血圧では症状は出ないという。すると原因はなんだろう。蓄積疲労、ストレスかな。それとも…… さて、いま読んでいるのは電車の中で Madeleine Thien の "Do Not …

Colin Barrett の “Young Skins” (2)

本書を買い求めたのは半年前。そのときまで、フランク・オコナー賞が2015年で廃止されていたとは知らなかった。ブログの休止期間中、海外文学から離れていたからだ。 11年間にわたる同賞の歴史の中で、ぼくはこれで受賞作を6冊読んだことになる。わりとまめ…

Colin Barrett の “Young Skins” (1)

2014年のフランク・オコナー国際短編賞(Frank O'Connor International Short Story Award)、および同年のガーディアン紙新人賞(Guardian First Book Award)のダブル受賞に輝いた Colin Barrett の "Young Skins" をようやく読了。さっそくレビューを書い…

Ottessa Moshfegh の “Eileen” (2)

先ほどイギリス各社のオッズを調べたところ、本書はいちように最下位。ぼくはまだ最終候補作を2冊読み残しているが、おそらく順当な予想だろうと思う。 同じく断言は控えるが、ロングリストの中には、これよりほかにもっとショートリストに残るべき作品があ…