ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Firefly Lane" 雑感(1)

 これは今年の1月ごろからだろうか、ニューヨーク・タイムズのベストセラー・リストで常連となっている本。今もチェックすると、Trade Paperback 部門の第3位にランクインしているが、ハードカバーは去年の2月刊ということで、たぶん当初から好評を博していたものと思われる。
 作者の Kristin Hannah は米アマゾンでの取り扱いから判断してかなりの人気作家のようだが、ぼくは恥ずかしながら知らなかった。本書もシノプシスは読んだはずだが手元に届いたときには忘れていたので、タイトルから、のどかなローカルピースを期待して取りかかった。
 仕事が気になりスローペースのため、やっと半分までたどり着いたところだが、これはまあ、一種の文芸エンタメ路線だと思う。それも女性向きかな。何だかバカにした言い方だが、面白いことは面白い。けっこう分厚いけれど、電車の中で読むには最高の読み物のひとつだろう。
 テーマは期待に反して女性の友情で、ぼくにはまったく未知の分野。男の友情を描いた作品なら小説や映画で飽きるほど接したものだが、女の友情とはねえ…。こんな本を読むのは初めてだけに、新鮮な魅力があることはたしかだ。
 最初の舞台は70年代のシアトルと近郊の町で、今読んでいるパートでは90年代のニューヨークも出てくる。性格も容貌も家庭環境も対照的だが、孤独で友人に恵まれない点では共通している2人の中学生の娘が互いに惹かれあい、永遠の友情を誓うというのが序盤で、Firefly Lane とは、誓いを立てた2人の家がある通りを指している。
 娘の1人 Tully は何事にも積極果敢、目の覚めるような美少女で、もう1人の娘 Kate は地味で控えめだが、気立てがよくて誠実そのもの。Tullyは Kate ともどもTVニュース番組の司会者になることを決意、2人は大学に進学してジャーナリズムを専攻する。Tully は初志貫徹、大学で関係した教授と別れて仕事を選び、シアトルの小さな放送局からニューヨークの全米ネット局へと、着実に夢に向かって前進している。一方、Kate は Tully と同じ放送局で働きだしたものの、Tully に振られたプロデューサーと結婚、流産ののち、めでたく出産して子育てに専念している。
 つまり、永遠の友情を誓い、同じ夢を描いていた2人の女がやがて仕事と家庭という別の道に進み、そこに男がからむという物語で、これまでにも2人の友情は何度か試練にさらされてきたが、後半もかなり波乱がありそうだ。