ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Firefly Lane" 雑感(2)

 いやはや、ものの見事にハマってしまった。最初は、中学生の娘同士が永遠の友情を誓うなんてホンマかいな、といくぶん斜に構えていたのだが、読めば読むほど面白くなり、あと4分の1となった今では、なるほどこれならベストセラーになるのも当然と納得している。
 もちろん、人生の問題を深く追求した作品ではないので文芸エンタメ路線には違いないのだが、それでも本書には読者の共感を呼ぶシーンが非常に多い。昨日ふれた流産、出産、子育ての話題にしても、このように箇条書きにすると何でもないようだが、実際の描写は女流作家らしい克明なもので、男のぼくでさえ引きこまれるのだから、まして女性の読者ならなおさらだろう。家庭に埋没し、なかなか自分の時間が取れない主婦の悩みとか、逆に仕事に邁進するあまり、家庭や愛情を知らずにいるキャリアウーマンの孤独感など、「そうそう、そうなのよ!」と思わず小膝を叩きたくなるのではないか。
 それから、昨日は「電車の中で読むには最高の読み物のひとつ」と書いてしまったけれど、ちょくちょく泣かせ所があるので要注意。強盗事件の取材中に負傷した Tully が病院に運ばれたとき、Kate が片思いの男性に Tully を愛しているのかと尋ねると、男は黙って Kate の肩を抱きしめる。年とともに涙腺が弱くなっているぼくは、ついホロっとなってしまった。
 夕食までに読んだ範囲にかぎっても、湾岸戦争の報道のためバグダードに飛んだ Kate の夫が爆撃で瀕死の重傷を負う。夫は脳圧を下げるため、頭蓋骨の一部を外す手術を受けて助かるのだが、ぼくも家族がこの外減圧術を受けたことがあるので、必ず助かると分かっていても気が気ではなかった。
 ほかにも、お決まりの恋愛や、友情と仕事の矛盾、親子の対立など、ここには人生における何らかの悩みや苦しみ、試練、危機などが詰まっている。その中心に、永遠の友情を誓いながらも立場を異にする2人の女性がいるわけで、2人が遭遇するさまざまな事件を通じて読者は自分の人生をふりかえり、2人の生き方に共感する。それがどうやら、本書のベストセラーになっている理由のようである。