ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Northern Clemency" 雑感(9)

 今日は久しぶりに文学好きの某女史と話をする機会に恵まれたが、聞けばぼく以上に超多忙で、ジュンパ・ラヒリの『見知らぬ場所』はまだ第一部しか読んでいないとのこと。それでもだいぶ気に入ってもらえた様子で、ホッとひと安心。この人は突っこみが鋭くてコワイからねえ…。
 "The Northern Clemency" のほうは、ようやく第3部まで読みおえた。1週間近く中断していたので印象がぼやけてしまったかもしれないが、さいわい詳細なメモを取っているので、それを見ながらふりかえってみると、全体的には第1・2部の後日談。10年後のシェフィールドが舞台で、主役の主婦は花屋の仕事をやめ、のんびり暮らしていたものの、ある日突然、警察の事情聴取を受け、やがて法廷の証言台に立たされる。今では店を閉じている花屋の元主人がマネーロンダリングの罪で起訴されたのだ。
 この法廷場面はそれなりに盛り上がるが、ひところはやったリーガル・サスペンスと較べると旗色が悪い。むしろ、事情聴取と裁判をきっかけに夫婦間の亀裂が深まり、同時にまた、二人が愛情を確かめようとするくだりがしんみりとして読ませる。ただ、これだけ紙幅を割いたにしては深みに欠ける内容だし、まさかこれでおしまいというわけでもないだろうと思うと、今ひとつ感動できない。
 前半、花屋の主人が出資者の屋敷を訪れて恋に落ち、その相手らしき娘が裁判を傍聴するエピソードもあるが、あまりに断片的で意味不明。これも続きがあるんだろうな。
 後半、左翼思想にかぶれた次男が炭坑ストで警察と衝突する話は進展なし。この先もないとすれば、あれで完結した幕間劇ということだったのか。この第3部は、プレイボーイの長男が若い娘と森の中の小屋を訪れる場面で終わり、いい雰囲気をかもしだすものの、これまた意味不明。どの話も何だか中途半端な終わり方で、結局、このパートも「錯綜、また錯綜!」だった。次の第4部はいよいよ最終章だけど、はて、どんな結末が待っているんでしょうね。