今日はまず、仕事の合間に今までのメモを読みかえし、第1部から第3部までの内容をふりかえってみた。そこで初めて気づいたのだが、本書はひょっとしたら、二つの家族を中心にすえた断片的なファミリー・サーガかもしれない。
「錯綜、また錯綜!…これほど奇怪千万な小説に出くわしたのは、少なくともここ数年ではちょっと記憶にない」などと雑感(6)には書いたが、この奇異な印象は、普通の小説の場合、少なくとも主なエピソードが統一的なテーマのもとに収斂されるはずなのに、その予想が本書では外れっぱなしで、いっこうに先が見えないことから生まれている。
が、見方を変えて、ある時期における典型的な事件を語り継ぎながら、そのときどきの家族関係や各人の心理状態などを描くのが本書の主眼なのだとしたら、各断片が「ついに断片のまま終わってしま」っても何ら不思議ではない。だからこそ、たとえば第1部にあった引っ越しの旅のように、通常なら明らかにカットされる内容でもえんえんと、ただし面白おかしく紹介されるのではないだろうか。
…などと考えながら、いよいよ第4部に突入。第2.5部から10年後、第1部からだと20年後の話に飛んでいる。母親が花屋で働いていたほうの家族の長女が兄の元カノと再会、婦人警官かと思ったらストリッパーなどという愉快なエピソードに始まり、たしかに独立した断片の続きという印象が強い。次いで、仲のいい隣りの家族のほうに話題が移り、父親の退職記念パーティー、やがて母親が脳出血で倒れ…などなど、二つの家族のメンバーが交代で主役をつとめる。やはりこれは、「各断片がついに断片のまま終わってしまうファミリー・サーガ」なのか…。