ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"Home" 雑感(3)

 時間があれば明日にでも読み終えられそうだが、相変わらず、「文学ミーハーのぼくには、ちょっとしんどい展開だ」。もちろん駄作ではないし、それどころか登場人物の心理、とりわけ傷心と悲哀がじっくり描かれる一方、それが感傷に流れない点はいかにも Marilynne Robinson の小説らしく好感が持てる。ただ、山場が少なく、盛り上がりに欠けるのがマイナス材料だ。
 雑感(1)でぼくは、兄と妹「二人の帰郷の理由が物語の核心にあり、それが少しずつ明らかにされるにつれ面白さを増しそうな気がする」と予想したが、今や核心のベールがはがされた割に面白くならないのは、ひとつには、その核心が最初から薄々察しがつくもので、意外性やサスペンスがほとんどないからだ。こういう要素も多少はないと、「文学ミーハーのぼくには、ちょっとしんどい」。
 もちろん、老牧師も放蕩息子も妹も、それぞれ心に深い傷を負っていて、その傷が三人のからみを通じて次第に鮮明になる。過去の過ちを気に病み、今もまた女のことで思い悩む息子を中心に、三人がお互いに示す愛情と、そこに交錯する失望、失意がこちらの心に重くのしかかってくる。文学ミーハーならずとも、読んでいてつらいところだ。