昨日、国際IMPACダブリン文学賞の発表があり、Michael Thomas の "Man Gone Down " が栄冠に輝いた。不勉強のぼくは例によって未読だが、公式HPの記事を読むと、07年のニューヨーク・タイムズ紙選定年間優秀作品でもあるとのこと。
- 作者: Michael Thomas
- 出版社/メーカー: Atlantic Books
- 発売日: 2009/04/01
- メディア: ペーパーバック
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ちなみに、同じく優秀作に選ばれた Per Petterson の "Out Stealing Horses" は、同年のダブリン文学賞を受賞している。
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話変わって Marilynne Robinson の "Home" だが、ううむ、これはなかなか玄人好みの小説だと思う。ぼくはその昔、前作の "Gilead" について「読者を選ぶ作品だろう」などとエラそうなことを書いたが、自分のことは棚に上げないとこんなセリフは言えない。
死期の迫った老牧師は、20年ぶりに帰ってきた放蕩息子のことが気になって仕方がない。息子は昔の不行跡を悔いている様子で、そんな二人の微妙な心のふれあいがじっくり描かれる。お互いの思いやりが感動的…と言いたいところだが、ストレートに愛情を示す父親に対し、息子もよくそれに応えるものの、その心には影がある。それが何なのかまだ明示されていないだけに、今ひとつ物足りない。そこを我慢して読むのが「玄人」なんだろうなと思いつつ、文学ミーハーのぼくには、ちょっとしんどい展開だ。
一方、妹のほうも心に傷を負っている。兄とのやりとりを通じて、その原因が少しずつ紹介されるという流れで、兄も妹も、お互いに相手の心の傷をある程度知っている様子だが、核心については二人ともまだ口を閉ざしたまま。もちろんスローテンポで、これが面白くてたまらないという読者も当然いるはずだが、ぼくは我慢半分、期待半分。電車の中で読むような本ではないと思いつつ、なにしろ宮仕えなので致し方ない。