ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Great House”雑感(4)

 仕事のヤマは何とか越えたが、今度は風邪をひいてしまい絶不調。やっぱり年ですなあ。
 おかげで今日は次の1話、"True Kindness" の続編を読むのがやっとだった。それでもこれまた心にしみる短編で、とりわけぼくのように、成人したドラ息子やドラ娘をかかえる老人なら大いに身につまされることだろう。
 第1部にも同名の短編があり、エルサレムに住む元検事が同じく主人公。妻が死に、それまで長らくほとんど音信不通だった息子がロンドンから帰ってくる。なぜか判事職を辞し、父親のもとで暮らしはじめるが、二人はほとんど口もきかない。その間の出来事もふくめ、父親が息子にたいして内的モノローグをえんえんと続ける。
 息子の誕生シーンや、息子が中東戦争に従軍した当時にさかのぼったりして、ここでも長い年月にわたる心の葛藤、親子の愛情の歴史が綴られているが、ぼくはこれを読みながら、親子の心の通じ合いについてあれこれ考えざるをえなかった。おたがいにほかの誰よりもつながりが深いはずなのに、決して愛情の美名のみで結ばれているわけではない関係。それどころか時には、いや、しばしば誤解が生じ、断絶さえ起こりうる関係。詳しくは書けないが、'My child, my love and my regret....' (p.196) という文言に胸をえぐられる。
 次の話の冒頭をちらっとながめると、今度は第1部第1話の続編のようだ。なかなか面白い構成の連作短編集である。