ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Great House”雑感(3)

 この土日も超多忙で「自宅残業」に明け暮れたが、がんばって1話だけ読み進んだ。まるでカタツムリ君である。
 これはやはり連作短編集のようだ。第1話でちらっと顔を出したチリの青年詩人の娘が、ここではどういうわけかユダヤ人のアンティーク商の娘となって登場。例の古い机を引き取りにニューヨークへ出かける。どんな事情があるのかよく分からないが、ともあれ各短編を結ぶ一本の糸になっている。
 といっても上の話は小さなエピソードに過ぎず、本編の主人公はニューヨークからロンドンにやってきた若い女。オックスフォード大学で文学を研究しているうち、上の娘の兄と知りあって恋に落ちた当時の回想が中心で、兄妹の父親の人生なども物語られ、これまた長い年月にわたる心の歴史となっている。
 ここでも基調は「孤独、断絶、閉塞、喪失、疲労」などで、それらを通して今度は恋愛関係にある男女の葛藤が描かれる。この話で第1部が終了する構成だが、今までの4編を簡単にまとめると、本書は長い年月におよぶ親子や夫婦、男女などの心の葛藤、愛情の歴史をじっくり描いたものと言えるかもしれない。いずれにしろ、えぐりが鋭く、単純なぼくは茫然となることが多い。
 ところが、第2部の出だしを走り読みすると、何と第1部の第2話と同じタイトルで、同じ人物が続編を物語りはじめている。全体としてどう収斂していくのか興味津々だ。