ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Art of Fielding” 雑感 (2)

 体調はまずまず回復してきたが、先週末は土曜出勤→ストレス→痛飲→日曜の朝寝坊という、最近よくあるパターン。いけませんな。ただ、飲みながら久しぶりに観た「忍ぶ川」がとてもよかった。ぼくはべつにコマキストではないが、彼女はこの作品1本で心に残っている。その点、サユリさんのほうは何が代表作なんだろう…。「おはん」かな?
 閑話休題。昨日の午後から結局、Chad Harbach の "The Art of Fielding" に乗りかえ、ボチボチ読みはじめた。すぐに思ったのだが、これ、やっぱりイイです。まだ開幕早々なのに、秀作の予感がありありとします。
 まず、題材のよさがストレートに伝わってくる。野球にかぎらずスポーツには、名勝負やすぐれた技能などが、観る者、読む者に感動をもたらすという、どんなにヘソ曲がりの人でもケチをつけようのない明白なメリットがある。それが本書の場合、守備の天才、Henry 遊撃手の成長ぶりを通じて早くも感じとれるのだ。
 次に、物語の構成にカーブが混じっている。第6章で突然、話が19世紀にさかのぼり、なんとメルヴィルが登場したのには驚いた。ぼくはこのブログで、「"Moby-Dick" と『闇の力』」という駄文をえんえんと綴ったことがあるだけに興味津々。いったい、メルヴィルが現代の野球とどんなふうにかかわるんだろう。
 その謎はじつはあっさり解けるのだが、ううむ、それをバラしていいものかどうか。とにかく、直球勝負のスポーツ小説かと思いきや、どうしてどうして序盤から波乱ぶくみの展開である。これからどうなることやらワクワクします。