ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Tell the Wolves I'm Home” 雑感

 Carol Rifka Brunt の "Tell the Wolves I'm Home" を読んでいる。米アマゾンの上半期ベストテン小説のひとつで、ちょっと変わったタイトルに惹かれた。
 入手したのは持ち運びに不便なデカサイズのペイパーバック版だが(電車やバスの中はもちろん、ぼくは歩きながらでも読んでいる)、その点を除けばこれは通勤快読本ですな。もっか繁忙期だけに、こういう肩の凝らない本は非常にありがたい。
 主人公は15歳の孤独で内気な少女 June。姉の Greta ともども、有名な画家の叔父 Finn に2人一緒の肖像画を描いてもらったときの回想から物語がはじまる。叔父は June の名づけ親(代父)でもあり、2人は深く心が通じあっていたが、エイズを病んでいた Finn にとって肖像画は最後の作品となった。のちにその画題が "Tell the Wolves I'm Home" であったことがわかるが、意味はまだ不明。
 叔父の葬儀の日、June は謎の男を見かける。これが叔父の「特別な友人」だった Toby で、この Toby が叔父にエイズを感染させた張本人だと両親は言う。ところが、Toby は June に宛てた手紙の中でそれを否定。実際に会ってみると彼は思いやりのある優しい人間で、叔父を心から愛していたことがわかる。June は、叔父と Toby が親密だったことにショックを覚える一方、次第に Toby の人柄に惹かれていく。はたして Toby の言い分は正しいのか。叔父の死の真相は何だったのか。
 まだエイズの知識が一般には広まっていなかった時代の話であり、何か意外な展開が待っているかもしれない。一方、June の姉 Greta は陽気な社交家で、幼いころは June と非常に仲がよかったが、今では何かと意地悪をして June の心を傷つけている。それが物語に変化をつけているだけの副筋なのか、それともどこかで主筋と結びつくのか。
 というわけで、ちょっと目が離せません。この先どうなるんでしょうね、ワクワク。