Junot Diaz といえば、2008年のピューリッツァー賞と2007年の全米批評家協会賞のダブル受賞に輝いた "The Brief Wondrous Life of Oscar Wao" が代表作だが、記憶力のわるいぼくは、自分が書いた昔のレビューを読みかえして、そうそう、そんな話だったな、とようやく思い出した。ついでにそのレビューを再録しておこう。(点数は今日つけました)。
The Brief Wondrous Life of Oscar Wao
- 作者: Junot Díaz
- 出版社/メーカー: Riverhead Trade
- 発売日: 2008/08/26
- メディア: ペーパーバック
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とりわけ、「巨乳娘」のくだりはケッサクだったような憶えがある。★を1つオマケしてもいいくらいだが、なにしろ中身をほとんど忘れていたので自信がない。忘れた理由は「主題の軽さ」かもしれませんな。ともあれ、今回の "This is How You Lose Her" も失恋の数々を「軽くあっさり、おもしろおかしく綴った佳作」ということで、出来は決してわるくないのだが、あと半年もすれば、題名を見て、ああ、失恋の話だったな、と思い出すくらいのような気がする。
しかしながら、3日前に全米図書賞の読書体験記をまとめて初めて気がついたのだが、この賞は、作品の出来不出来もさることながら、ひょっとしたらそれ以上に、いかにもアメリカ的なシーンがどれだけ描かれているか、というのが大きな選考基準になっているかもしれない。そう考えると、去年、"The Tiger's Wife" が落選して、ハリケーン・カトリーナを中心にすえた "Salvage the Bones" が受賞したのも、まあ納得できる。一昨年の "Lord of Misrule" に出てくる田舎の小さな競馬場にしても、3年前の "Let the Great World Spin" における、ニューヨークの今はなきツイン・タワーを綱渡りでわたった男の話にしても、「いかにもアメリカ的」と言えるのではないだろうか。
それゆえ、この「失恋遍歴集」にも「移民生活や人種差別の現実など」「いかにもアメリカ的なシーン」がけっこうある以上、こんなの泡沫候補だ、とうかつには言えないかもしれない。