ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Harvest” 雑感

 Jim Crace の "Harvest" をボチボチ読んでいる。Crace は1997年に "Quarantine" がブッカー賞最終候補作に選ばれるなど、かなり有名な作家らしいが、ぼくは例によって不勉強で初耳。今回、この "Harvest" があちらのファンのあいだで今年の同賞〈ロングリスト候補作〉として取り沙汰されているのを知り、もの珍しさも手伝って取り組むことにした。
 さて、先日紹介した Man Booker Prize Eligible 2013 のリストによると、本書は第6位にランクイン。The Mookse and the Gripes Forum でも高く買っている人がいるようだが、ぼくはまだ、あまりピンときていない。知り合いのオーストラリア人に感想を求められたので、'Not so good, but not so bad.' と、とっさに答えてしまった。
 時代は……はっきり書かれていないがエドワード朝あたりだろうか。イギリスの小さな村が舞台で、manor house があり、荘園領主とおぼしき Master Kent なる人物も登場。人柄は friendly だが、ある程度の権力をふるい、領民たちをいちおう支配している。
 その厩舎と鳩小屋で失火騒ぎがあり、たまたま領内に足を踏みいれた3人のよそ者が犯人にされる。ほんとうはほかに不心得者がいるのだが、そのことを知っている主人公 Walter Thirsk は沈黙を守る。数年前、Kent の従者として村にやって来たが、まだよそ者扱いされているからだ。一方、村人たちも薄々真相を知りつつ3人を犯人扱い。
 じつはもう、けっこう先まで読み進んでいるのだが、それでも「あまりピンときていない」理由を白状すると、どうやら本書は寓話らしいのに、何を訴えようとしているのかよくわからないからだ。上のように〈沈黙と欺瞞〉からスケープゴートが生まれているのは明らかだが、それがテーマというにはあっさりしすぎているし、のちほど起きる集団ヒステリーや魔女狩りにしても中途半端。ほんとに寓話なのかな。最後にどんでん返しでもあるのかな。