ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

William Maxwell のことなど

 "An Irish Country Doctor" がベストセラーになったおかげだろう、その続編と思われる "An Irish Country Christmas" が28日に発売されるという。表紙を見る限り、これまた楽しそうな本だが、貧乏金なしのぼくは当然、ペイパーバックを待つつもり。

An Irish Country Christmas (Irish Country Books)

An Irish Country Christmas (Irish Country Books)

 売れた本の続編が出るのは世のならいだが、有名な賞を取ると売れ行きが伸びるのもまたしかり。出張中に届いた "White Tiger" を英米のアマゾンで検索すると、さっそくベストセラーになっている。面白いのは、アマゾンUKの評価がブッカー賞の受賞前より星1つ増えていること。それが正しいかどうかは、来週あたり確かめようと思っている。
 今日の午後から William Maxwell の "The Chateau" に取りかかった。夢でも見ているようなフランス到着の冒頭場面がすばらしく、これもイケそう…と思ったが、風邪薬を飲んだせいで眠くて仕方がない。その上、昨夜観た『愛の嵐』が頭から離れず、いろんなシーンを思い出しながら今までぼんやり過ごしていた。 この映画が大好きな友人がいて昔から気になっていたが、恥ずかしながら初見。すごくよかった。さっそく友人にメールを送ったら、「映画館で何度も観た」とのこと。たしかに、病みつきになりそうな映画だ。シャーロット・ランプリングは『さらば愛しき女よ』にも出ていたが、トカゲを思わせるような妖艶ぶりは健在。ドミニク・サンダに次いで好きな女優かもしれない。
 映像的にも優れた作品だと思うが、文学との共通点を探ってみると、ナチス物なのに勧善懲悪とはまったく無縁の世界であることに感心した。どこかの国には、戦争が絡んだとたん思考停止におちいり、一面的な見方しかできない作家もいるが、そういう作家の作品と、倒錯的な愛を描いた『愛の嵐』はまったく違う。
 読みはじめたばかりの "The Chateau" にも、第二次大戦直後のフランスが舞台ということで、戦争の生々しい傷跡が出てくる。内容はまだうっすらとしか分からないが、単純な反戦小説でないことだけは間違いなさそうで安心している。