ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The 19th Wife" 雑感(1)

 積ん読の山を少しでも切り崩そうと、David Ebershoff の "The 19th Wife" に取りかかった。もっか、アマゾンUKのフィクション部門ベストセラー第70位。かなり前から同リストの常連だが、評価はひところの星4つから3つ半に下がっている。
 Richard & Judy Book Club の推薦図書でもあり、ぼくのような文学ミーハー好みのタイトルに釣られて買った本だが、ううん、これは今まで読んだかぎり、星3つ半が順当かな。ジャンルとしては、ミステリと歴史小説フュージョンといったところ。
 ミステリ篇は少しずつ面白くなっている。主人公は、重婚を神の命令と説くモルモン教の一派から破門された青年。その父親が、青年の母親である19番目の妻に射殺されるという事件が発生。青年は長らく顔を合わせたことのない母に面会を求めるが、母は犯行を否定。そこで青年が真相の解明に乗り出すというストーリーだ。
 一方、このミステリ篇と並行して19世紀中葉、モルモン教草創期の歴史が物語られる。こちらの主役は二代目の預言者と19番目に結婚した女で、彼女は本書のタイトルと同じ『19番目の妻』という書物を刊行。夫である教祖に戦いを挑み、重婚を廃止させようと奮闘努力した記録らしい。
 その内容がどこまで史実に沿ったものかは知らないし、さほど関心もないが、あくまで小説という観点からながめると、女の書いた記録に新聞記事や研究論文も混じるなど、さまざまな角度からモルモン教と重婚の歴史を再現しようとしている工夫は評価できる。が、まだまだ序盤のせいか、今はオーソドックスな年代記といったところだ。
 ミステリ篇、歴史小説篇ともに、これから大いに盛り上がりそうな気配がある。今後の展開を期待したい。