ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The 19th Wife" 雑感(2)

 ミステリ篇のほうは昨日と同様、まずまず面白い。重婚を是とするモルモン教の一派から破門された青年が、夫殺しの疑いをかけられた母親の無実を証明しようと真相解明に乗り出すわけだが、立場上、間接的な聞きこみしかできない。それゆえ調査はゆっくり進むものの、ミステリとしては定石どおりの展開。いきなり核心に迫るはずがない。
 今日読んだ範囲でいちばん面白かったのは、青年が弁護士秘書や途中で知り合った少年の協力を得て陽動作戦を敢行、犯行現場に潜入するくだり。なかなかサスペンスがあってよろしい。妻同士の争いなど、殺人につながりそうな事件の背景も少しずつ紹介され、さてどうなりますか。
 主筋に彩りを添える副筋として、青年は犬を連れ歩いていて心温まるシーンがある。また、青年はゲイという設定で、今ちょうど「恋人」と仲よくなり始めたところ。宗教がからむ上にゲイの話が出てくるとなると、日本の出版社は二の足を踏むんじゃないかな。
 歴史小説篇は、昨日よりかなり面白い。重婚をめぐる草創期モルモン教団の物語が佳境に入ってきたからだ。神の掟とは名ばかりで、実際は欲望のままに複数の女を妻にする信者たち。最初の妻は夫の行為に苦しみ、やがて妻同士、嫉妬に駆られる。基本的にはメロドラマのノリだ。
 教祖が目をつけた女を策を弄してまんまと妻に迎えるあたりなど、映画やテレビで毎度おなじみの筋書きで、こんなふうに要約すると他愛もない三文小説みたいだが、そうして嫁いだ「19番目の妻」が書いた記録だけでなく、彼女の父親の自伝、兄の裁判証言、歴史文書、はたまたイラストなど、語りの工夫がいろいろほどこされていてなかなか面白い。こちらもどうなるんでしょう。