ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

"The Children's Book" 雑感(1)

 去年のブッカー賞最終候補作で唯一読みのこしていた A. S. Byatt の "The Children's Book" に取りかかったが、またもや風邪を引いてしまい絶不調。おかげで、なかなか先へ進まない。
 もっとも、クイクイ読めないのは体調のせいばかりでなく、今まで読んだ第1部に関するかぎり、主筋があるのかないのか判別しがたいほど話があちこちに飛んでいて、どうも流れに乗りにくいからだ。これがバイアットの作風かどうかはわからない。彼女の作品はかなり昔、短編集を一冊読んだことがあるだけで、あとはすべて未読。これで自称洋書オタクだなんて、まことにお恥ずかしいかぎりだ。
 今日はやっと第2部に入ったところだが、第1部の章題は 'Beginnings' で、内容も文字どおり序の口。時代は19世紀末。冒頭、ロンドンのさる博物館の地下室に住んでいた少年 Philip が発見されるくだりはなかなか面白い。発見したのも少年たちで、これからどんな冒険物語が始まるのかとワクワクしていたら、進展は何もなし。Philip は、博物館を訪れていた著名な女流童話作家の Olive Wellwood に 引き取られ、そのカントリーハウスで Midsummer's Day (聖ヨハネ祭) のパーティーを楽しんだあと、自分の興味を活かして陶芸家のもとに弟子入りする。
 …なんだか不得要領の粗筋だが、何しろ Olive の夫や子供たちをはじめ、パーティーに出席した人々の紹介が次々につづき、フムフムなるほど、と追っかけるのにかなり忍耐を強いられる。途中、Olive の作品らしい童話が挿入され、あとで何か意味を持つのかもしれないけれど、正直言ってピンと来なかった。陶芸家の娘の一人が夢遊病者で、夜中に Philip のベッドにもぐりこんでくるなど、ときおりエロっぽい話が混じるのが唯一の救いかな。あ、これはスケベおやじの感想だ。
 主筋そっちのけで(?)枝葉末節から小説を始めるのは19世紀の大作家によくあるパターンで、もしかしたらバイアットは、時代背景を考えてそのパターンを踏襲したのかもしれない。それにしても、バルザックのような人間観察の面白さがあれば退屈しないのだが、バイアットは今までひたすらマジメに周辺の(?)細部作りに励んでいる。ともあれ、第2部に入ってそろそろ物語が動きだしそうな兆しもあるので、今後を期待しよう。