ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“The Color of Lightning”雑感(6)

 やっと読みおえた! 本来ならさっそくレビューを書くまわりだが、これからジョギングに出かける時間だし、そのあと酒を飲むことにしている。そこで今日は、今までの雑感をちょっと整理するくらいにとどめておこう。
 まず、「文学的な深みはさほどでもないがストーリー性は抜群、クイクイ読めるタイプの小説のような気がする」と書いた最初の感想について。クイクイ度は最後まで抜群で、時間に余裕のある人なら一気に読みたくなることだろう。
 「本質的には愛と信頼をモチーフにした作品」とは昨日の要約だが、「愛と信頼と勇気」のほうがいいかな。黒人男の Britt がインディアンに奪われた妻子を救出し、そのあと危険をかえりみずインディアンの縄張りの中、馬車で物資の輸送にいそしんだという主筋はどうやら実話にもとづいているらしい。映画「駅馬車」を思い出すようなインディアンの襲撃シーン、一対一の決闘シーンなどがいくつかあり、もう話がおわったのかなと思っていたら、最後の最後になってふたたびアクションが始まり、ぼくはぶったまげてしまった! 途中までの内容をまとめたとき、「なんだか今後の展開と結末まで見えてしまったような気もする」とつい調子に乗って書いてしまったが、まさかこうなるとはね。浅はかでした。
 次に、「さほどでもない」と断じた「文学的な深み」について。これは副筋とも言うべ Samuel の話のほうで、その後かなり「深化」している。彼はクェーカー教徒なので、本来は平和主義に徹しなければならないはずだが、二度と白人を襲ってはならぬと命じたインディアンから、殺したばかりの人間の頭の皮を投げつけられ、ついに堪忍袋の緒が切れてしまう。ところが、クェーカー教徒の本部があるフィラデルフィアでは、平和と友愛を説けば相手は理解を示すはず、とノーテンキなことを幹部がのたまう始末。思わず、どこかの国の元首相みたいだな、と笑ってしまった。この問題についてはもっと書きたいが、今日は何しろ上の事情で時間がない。さ、今からジョギングだ!