ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“How to Breathe Underwater”雑感(3)

 今日はあわよくば読みおわり、レビューも書けるかなと思ったが、風邪による頭痛と疲労困憊で、何と1話しか読めなかった。が、この1話もなかなかよかった。
 ただ、これを読んでいるうちに、「お前はこんなものばかり読んでいるから駄目なんだ」という某先生のお叱りの声が聞こえてくるような気がした。何しろ、主人公は高校生の女の子。そう知っただけで某先生いわく、それなら大した作品ではない、そんな年ごろの娘が人生の大事な問題について考えられるわけがない、と断じるに決まっている。ぼくもそう思う。高校時代、いや大学時代だってぼくは、ほとんど何も考えていなかった。今もかなり怪しい。
 事実、ここで描かれる現象としては大した作品ではない。主人公は今までの話と同様、容姿はせいぜい十人並み。その彼女がある少年を好きになる。少年も好意をいだいてくれ、2人は関係する。ところが、少女の美人の友だちもその少年のことが大好きで…。
 そんなありふれた話なのに次第に緊張感が高まり、やがて事件が持ちあがる。その話芸はまさに見事と言うしかない。同時に、たしかにここでは「人生の大事な問題」が扱われているわけではないが、少女が人生のその瞬間、自分にとって大事な問題に直面し、彼女なりに真剣に取り組んでいることがわかる。それがこの作品の緊張感につながっている。
 そこがいいんだよ、と亡くなった恩師がこれを読まれたらおっしゃるに違いない。ぼくは何を読むにしても、某先生と亡き恩師のあいだを揺れ動いているような気がする。