ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Major Pettigrew's Last Stand” 雑感 (2)

 世間は3連休だったはずだが、ぼくは2連休。それも「自宅残業」に追われ、本書はボチボチしか読んでいない。
 となると印象はふつう薄れるものだが、本書の場合、いつどのページをひらいても楽しいシークェンスが待っている。テーマ追求型の小説ではないので人生にかんする深い洞察こそ見受けられないものの、人生のいろいろな現実を再確認することはできるし、その現実を提示する手順、「ちょっとしたエピソードの配合」がじつに巧妙だ。このため、ストーリー重視型と言えるほどでもないのにクイクイ読め、日常茶飯の展開にとても親しみがもてる。前回述べたとおり、とにかくハートウォーミングだ。
 ここで描かれている「人生の現実」のひとつはまず、主人公が妻に先立たれた老人であること。これ、ぼくには将来、絶対にないとは言えない状況なので、ちょっとした心理描写でも心に響くものがある。たまたま先週の土曜日、一杯やりながら久しぶりに「グラン・トリノ」を観たが、あの頑固者の孤高の老人とほぼ同じく、本書の Pettigrew 少佐も自分のモラルやプライドを大切に守っている。まあ、こちらのほうが女っ気があるぶん甘口ですけどね。
 ほかにも、世代間の価値観の相違や、人種差別と多文化社会、自然保護と土地開発、伝統と近代化など、今のイギリスが直面している現実の一端をうかがい知ることができる。こうした背景のもと、Pettigrew 少佐はパキスタン系の未亡人、Mrs. Ali と少しずつ親しくなる。結末は予想しないことにしましょう。