ふだんはペイパーバック・リーダーのぼくだが、ハードカバーの本書は長編というより中編に近く(07年の候補作、Ian McEwan の "On Cecil Beach" とほぼ同じくらい)、これなら繁忙期のカタツムリ君でも速く読めるだろう。
あちらの評判はなかなかいいようだ。アマゾンUKの小説部門でベストセラーになっている候補作は本書だけ(現代小説に絞ると、Alan Hollinghurst の "The Stranger's Child" もリストに載っている)。いつも予想が外れる William Hill のオッズでは第2位、Ladbrokes でも "The Stranger's Child" と並んで第3位。
Julian Barnes が高名な作家であることは知っていたが、恥ずかしながら、今までまともに読んだためしがなかった。海外文学を英語で本格的に読みはじめた当時は、若いころに読み洩らしていた古典の catch up に追われ、それが一段落すると、今度は今のように最新の作品ばかり追いかけるようになった。おかげで、書棚に積んである Barnes の旧作は、どれも冒頭の何ページか読みかじったことがあるだけ。そこへ本書の登場。いい機会だ。
そんなこんなで手に取った本書だが、これまた当たるも八卦当たらぬも八卦、ずばり予想すると、たぶんショートリストにはのこるだろう。が、その先は厳しいかもしれない。「絶品だ」と昨日のレビューでは褒めちぎったものの、こういうストレートな秀作がブッカー賞を取ることはそう多くないのではなかろうか。
好みだけで言えば、これは "The Stranger's Child" よりもずっといい作品だと思う。2、30代の読者には受けないかもしれない。受けるとしたら、あなた、年のわりには老成していますな、とヘンに感心することだろう。けれども、ぼくのようなジッチャン、バッチャン世代が読めば、思わず、ううむ、とうなってしまうくだりがいくつもあるはずだ。
…長くなった。今はいちおう休暇中だが、これから仕事を始めるので、今日はこれにて。