ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Saints and Sinners” 雑感

 今年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Edna O'Brien の "Saints and Sinners" に取りかかった。同賞の受賞作を読むのは、恥ずかしながら、これでたったの3冊目。しかも、08年の "Unaccustomed Earth" にいたっては、あとから、へえ、そうなんだ、と気がついただけで、ぼくとしては、Jhumpa Lahiri の作品だから読んだ、という思いのほうが強い。
 なぜ今までこの賞を無視してきたかというと、ご本尊フランク・オコナーの短編を読んだ記憶がほとんどないからだ。書棚にはちゃんと、Vintage 版の "Frank O'Conner Collected Stories" が鎮座しているのだが、なにしろ、活字がぎっしり詰まった700ページ近い大冊である。死ぬまでには読みたいものだ、と思いつつパスしている。
 そんなところへ、今年の受賞作家が Edna O'Brien と知り、にわかに興味がわいてきた。またまた恥ずかしながら、"The Country Girls" をはじめ、何冊か持っている旧作はすべて未読。この大家を知るにはちょうどいい機会だろう。
 ほかにもうひとつ、本書に興味を惹かれた理由がある。候補作の中に、Alexander MacLeod の "Light Lifting" と、Colm Toibin の "The Empty Family" が入っていたからだ。ぼくはたまたま両書とも読み、どちらにも感心したものである。とりわけ、前者は今思うに☆☆☆☆か、★を1つオマケしてもいいくらいの出来だろう。そんな対抗馬を押さえて栄冠に輝いたからには、この "Saints and Sinners" はよほどすばらしい作品にちがいない…。
 と、そう期待して読みはじめたのだが、ううむ、今のところ、ぼくには上の両書のほうがピンときますね。間然するところのない描写、展開はさすがに名人芸だと思うのだけれど、ぼくにとって短編集とは、"Light Lifting" のレビューでも引用したように、「閃光の人生」を描いたものであってほしい。
 その点、第1話の 'Shovel Kings' など、これ自体、決して悪い出来ではないのだが、"Light Lifting" の第1話 'Miracle Mile' とくらべると、かなり見劣りがする。たしかに人生の一瞬をとらえた場面は出てくるものの、どうも鮮やかさが足りない。
 …内容もろくに書かず、印象批評ばかり連ねてしまった。もう少し分析的に読まないといけませんね。今後を期待しましょう。