ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Edna O'Brien の “Saints and Sinners” (2)

 ある本をフランク・オコナー国際短編賞の受賞作と意識して読んだのは、これで2冊目だ。率直な感想を述べると、先月読んだ去年の受賞作、Ron Rash の "Burning Bright" よりはいいが、受賞作とは知らずに読んだ Jhumpa Lahiri の "Unaccustomed Earth" (08) には遠く及ばない。明らかに「えぐり」が足りないからだ。
 ただ、ぼくのような文学ミーハー、素人ファンではなく、たとえば英文科の先生あたりが読めば、これは相当に高く評価されそうな、いわゆる玄人受けのする作品ではないか、という気もする。「技巧的にはすこぶる洗練された短編集だ」からだ。「総じて劇的に盛り上がる場面が少ないせいか、今ひとつ強烈なインパクトに欠ける憾みがある」と、昨日のレビューではケチをつけたものの、そういう劇的効果を小説に求めるのはミーハーの証拠。本書の場合、変化に富んだ叙述スタイルをはじめ、「大家の芸域の広さ」をじっくり楽しむのが正しい鑑賞態度かもしれない。
 さて、本来なら各話についてもっと分析すべきところだが、田舎の友人から、星印によるぼくの評価のうち、★の意味について問い合わせがあったので、なるほど、そういう疑問もあるのかと思い、ここで明らかにしておこう。
 すでに何度も書いているように、この採点法は、故・双葉十三郎氏の『西洋シネマ体系 ぼくの採点表』のパクリである。氏によれば、「大ざっぱな目安」として「☆は20点前後、★は5点前後と考えていただきたい」とのこと。「白星五つの満点がないのは、芸術には試験の答案みたいな満点などありえない、と考えているからである」という氏の意見にしたがって、ぼくも☆☆☆☆☆はつけないことにする。具体的には、
 ☆☆☆☆以上……ダンゼン優秀 ☆☆☆★★★……上出来の部類 ☆☆☆★★および☆☆☆★……読んでおいていい作品 ☆☆☆……まア水準程度 ☆☆★★★……水準以下だが多少の興味あり ☆☆★★以下……篤志家だけどうぞ
 という分類だ。要はお遊びにすぎないが、大手サイトの☆だけよりは、自分の評価をはっきり示すことができると思う。映画と小説を同列に扱うのには問題があることを承知のうえで、たとえば先週観た映画でいえば、「カリートの道」のフタバ氏の評価は☆☆☆★★★だが、この "Saints and Sinners" からは、あれを観たときほどの満足感は得られなかった。だからこれは☆☆☆★★かな。ずいぶんランボーでテキトーな評価ですが、ぼくの中ではあまり違和感はありません。