ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Love Begins in Winter” 雑感

 一昨年のフランク・オコナー国際短編賞受賞作、Simon Van Booy の "Love Begins in Winter" に取りかかった。最近、この賞の catch up に励んでいて、これで受賞作を読むのは(2年前、受賞作とは知らずに読んだ "Unaccustomed Earth" もふくめて)通算4冊目。やっとみなさんに追いつきそうです。あ、候補作もいれると、まだまだか。
 本書は2年前の作品だから、たぶんもう邦訳が出ていそうな気がする。が、そうとわかると読書意欲がうせてしまうので、あえて検索はしないことにした。こういうのをアマノジャクと言うんでしょうね。
 じつはもう今日中に読みおえ、レビューも書けるはずだったのだが、明日は土曜出勤の今年にしては珍しくお休み。それなら一杯やりたい、とかみさんが言うので読書は中断し、とりあえず駄文を綴ることにした。
 これ、まずタイトルがいいですね。表題作、第1話の主人公は世界的に有名なチェロ奏者で、その演奏シーンから物語は始まる。I think music is what language once aspired to be. Music allows us to face God on our own terms because it reaches beyond life. (p.5) Music helps us understand where we have come from but, more importantly, what has happened to us. (p.21) といった記述が目にとまり、クラシック音楽ファンなら、すっと作品の世界に入っていけるはずだ。
 当然、バッハの「無伴奏チェロ組曲」、そしてパブロ・カザルスの話も出てくる。これを読んでいるうち、久しぶりにオーパス蔵盤を引っぱりだして聴いたが、ぼくにはやっぱりむずかしいですな。Music is only a mystery to people who want it explained. Music and love are the same. (p.24) なるほど、そのとおりです。「無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ」なら理屈ぬきに楽しいんだけど…。
 上記のチェロ奏者は、演奏しながら、亡くなった幼なじみの少女のことを思い出す。一方、同じく幼いころに弟を亡くした女性も登場。そんな2人が運命的な出会いを果たす。It was inevitable that we meet. Like rivers, we had been flowing on a course for one another. (p.49) …いいですなあ。ぼくもそんな恋がしたかった、とわが人生を悔やみつつ、今から飲んだくれることにしましょう。