ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

Leo Tolstoy の “The Death of Ivan Ilyich & Other Stories” (2)

 久しぶりにトルストイを読んでまず感じたのは、ぼく自身、いかに毎日だらしない、いい加減な生活を送っているかということだ。トルストイの壮絶な「内なる闘い、道徳的煩悶」と較べると、自分は何とつまらないことで悩んでいるのかとイヤになってしまう。でもまあ、日ごろの知的怠惰、道徳的怠惰を再確認しただけでも読んだ甲斐があったというものだ。とにかく、ぐうたらな生活を何とかしなければ。
 それはさておき、こんなに強烈な知的昂奮を味わったのも久しぶりである。"The Kreutzer Sonata" の次のくだりなど、何度読んでもびっくりする。
 ....I said, "if everybody recognized it [abstention from childbearing in the name of morality] as their law, the human race would come to an end." ...."You say, how will the human race go on? .... Why should it go on, this human race?" he said. "Why? If it didn't we wouldn't exist." "And why should we exist?" "Why? In order to live." "And why we live? If there's no goal at all, if life is given for the sake of life, there's no need to live. ...." (p.114)
 語り手と Pozdnyshev の対話だが、ここには猛烈な理想主義が端的に示されている。あまりに猛烈すぎて、「命あっての物種」としか考えない立場の人が読んだら腰を抜かしそうだ。
 ほかにも、長年の希望がかなってやっと英語で読むことができた "Father Sergius" も知的昂奮の連続で、"The Death of Ivan Ilyich" しかり、"The Devil" しかり。これほどの名作集に接してみると、今までどおり現代の作品を追いかけるのが何だかばかばかしくなってしまう。はて、これから何を読んだものか。