ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

John Irving の “In One Person” (2)

 アーヴィングの本を読むのは数えてみるとこれで7冊目。あまり熱心なファンとは言えないが、その7冊の中で本書はいちばんおもしろくなかった。決してわるい出来ではないのだが、"The World According to Garp" や "The Hotel New Hampshire" などを無我夢中で読んだときのことを思い出すと、クイクイ度ははるかに落ちる。
 アーヴィングを研究している英文科の先生や学生はたくさんいるはずで、専門家の目から見るとまた違ったおもしろさを発見できるのかもしれないけれど、ただの文学ミーハーにすぎないぼくは、「エキセントリックな人物が登場し、奇想天外な物語が進行するうちに…(深い)文学的テーマが示される」のがアーヴィングの「いつものパターン」だと理解している。読んでいる最中は、「むっちゃくちゃオモロー!」と何度も叫びたくなり、読みおわったあとは茫然と余韻にひたる。そこが最大の魅力ではないでしょうか。
 その点、この "In One Person" はとくに後半が弱い。中盤で大きな山場があり、「前半では伏せられていた人物関係が一気に明らかにされる」箇所なので詳しくは書けないが、そこはたしかに「アーヴィング節、絶好調」。だからその後どんどん盛り上がるものと期待していたら、やがてエイズの話題で「深刻な様相を呈する」ようになる。エイズの症状がどんなものかよくわかったのはいいけれど、でもこれ、小説のおもしろさとは言えないのでは、と思いながら読んでしまった。やっぱりミーハー趣味ですかね。