ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Painter of Silence” 雑感

 今年のオレンジ賞最終候補作、Georgina Harding の "Painter of Silence" に取りかかった。これはショートリストが発表されたとき、印象的なカバーに惹かれて買い求めた本だが、積ん読中にあえなく落選してしまった。
 だからもう縁がないかも、と思っていたのだが、最近あちらのサイトをいろいろ検索しているうちに、本書が今年のブッカー賞「ロングリスト候補作」に擬せられているのを発見。へえ、それなら読んでみようという気になった。
 今日はやっと半分まで読み進んだところ。週末になって疲れているせいか、いまいちノリがわるい。これでオレンジ賞候補作を読むのは、受賞した "The Song of Achilles" もふくめて5冊目だが、今まで読んだ範囲で言えば、4番目の出来ではないかと思う。
 物語はまず、第二次大戦から十年後、ルーマニアのヤシ(Iasi)という街から始まる。そこの病院に身元不明の青年がかつぎこまれるが、彼は耳が聞こえず口もきけない。中年の看護婦 Adriana が同情し、消息のわからない息子がわりに何かと面倒を見るようになる。一方、青年の正体にすぐ気がついたのが若い看護婦 Safta である。若者は Augustun といい、2人は同じ村の出身で幼なじみだったのだ。
 やがて客観描写と Safta の一人語りで (Safita は Augustun に話しかけるのだが無反応)、第二次大戦前、2人の子供時代から思春期までの出来ごとや、Adriana の戦争体験などが回想される。当然ノスタルジックな作風になるのはいいとして、テンポがのろく冗漫な部分もけっこうあってつい眠くなる。回想を通じて各人の心の傷が次第に浮かびあがるところなど、まあ定番の流れでしょう。
 Augustun は生まれたときから聾唖者だが画才があり、紙や布などを使ってフィギュア人形も器用に作ることができる。絵や人形は彼にとって発信手段でもあるようだ。それが後半、どんな物語に結びつくのでしょうか。