ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“Married Love and Other Stories” 雑感 (1)

 読書もブログもサボっているうちに、数えてみたら11冊も本が届いていた。どれも英米の各メディアが選んだ今年の優秀作品だが、すでにある積ん読の山がますます高くなるばかり。それなのに、よろず調子はさっぱり上がらない。このところ、とみに年齢を感じている。
 こんなときは短編集がいいかも、と思い、11冊のうち、とりあえず Tessa Hadley の "Married Love and Other Stories" からボチボチ読むことにした。米アマゾンの今月のベストテンに選ばれた本である。
 例によって不勉強で、Tessa Hadley のことはまったく知らなかったが、裏表紙の紹介記事によると、処女作の "Accidents in the Home" でガーディアン紙の新人賞を受賞。長編4作目の "The London Train" がニューヨーク・タイムズ紙の Notable Book に選定されるなど、あちらではけっこう名のある作家らしい。
 ……と、ぼくにしては珍しく書誌的な話題にふれているのは、ほんとうにボチボチしか読んでいないからだが、今のところ、これはなかなかいい。技巧らしい技巧をまったく感じさせず、淡々とストーリーが進むうちにやがて、一瞬、人生の断片がみごとに浮かびあがる。いわゆるオチらしいオチではない。それまでのごくふつうの流れがあってこそ、初めてキラリと光る瞬間である。
 たとえば第1話の表題作だが、二十歳前の若い娘 Lottie が大学で音楽を学ぶうち、なんと45歳も年上の教授と恋に落ちる。なんだかキワモノ的な設定だが、2人はやがて結婚。Lottie は育児に追われて音楽をあきらめるが、教授のほうは前妻の家で作曲に励む。といって三角関係ではなく、Lottie は帰宅した夫に熱い視線をむける。夫はどんな曲を作っているのだろうか。
 ……相変わらずヘタクソな粗筋紹介だなあ。でも原作にはけっこう味があります。