ビンゴー・キッドの洋書日記

英米を中心に現代から古典まで、海外の作品を英語で読み、論評をくわえるブログです

“NW” 雑感 (2)

 きのうはもっぱら語学的な観点から本書が難物だという意味のことを書いたが、かんじんのテーマも最初はなかなかつかみにくい。どんな小説でも、おおむね序盤はベールがかかっているものだが、本書の場合、物語の方向さえさっぱりわからなかった。
 NWとは、ロンドン市内の northwest という意味で、この地域に住む住人が交代で主人公をつとめる。第1部の主役は Leah というジャマイカ系、30代の女性。彼女の家に見ず知らずの女が突然やってきて助けを求める。Leah は女の訴えに応じて金を貸すが、その後、相手の女はいっこうに返そうとしない。このエピソードが示すように、日常生活における、どうでもいいとしか思えないような出来事が断片的につづくので、いったい何が言いたいのか首をかしげてしまう。
 けれども、文章には力がある。「口語、俗語、破格のオンパレード」で、たしかにむずかしいことはむずかしいのだが、とにかく言葉の洪水とでもいうような饒舌に圧倒される。と同時に、Leah の生活や周囲の人物、ロンドン北西部の界隈が形成する雑然とした世界に引きこまれてしまう。ドタバタ調のコメディーや、しんみりする話も出てくる。だから読みつづけたのだが、まあこの第1部は、終盤こそ及第点だけど、それまで正直言っておもしろくなかった。
 ところが、第2部に入ると……というところで、「ご飯よ!」とかみさんが声をかけてきた。きょうは晩酌デーなので、中途半端だがおしまい。